Chapter1-3
「またあの夢か・・・・・。」
未だにぼんやりとする頭の中、俺は誰にとも無くつぶやいた。
最近、こう言った夢を見ることが多い。
この手の世界で生きたいと言う願望でもあるのだろうか。
ま、とりあえず寝ぼけた頭に喝を入れるために洗面台の前に立ち、顔を洗う。
もうすぐ夏だというのに、あいからわず水は冷たい。
さて、朝食でも作るか、とキッチンに向かっていると、ドアのチャイムが鳴った。
とりあえず受話器を取る。
うちの・・・・・と言うよりこのマンションのチャイムはカメラ付きのやつだ。
「はい。」
「木下。居る?」
応対に出ると、見知った子のの奴が居た。
「小暮か。どうした?」
「あの馬鹿帰って来てないって言うから見に来たんだけど、誰もいないみたいなのよね。」
え?まだ帰って来てないのか?
「アキが帰って来てないって?そういや坂本が閉店になるまであいつ見て無いとか言ってたな。」
「あの馬鹿どこにいたのかしらね?私は先に行くわ。」
「俺は飯食ってから行くから先いっててくれ。」
「それはそうと木下。」
用は済んだとばかりに行こうとした小暮が、振り向てこう言った。
「何?」
「もう8時過ぎだけど大丈夫?」
「え・・・・・マジだ、おい・・・・・小暮、自転車貸すわ。俺は走っていく。」
「そう?じゃあ借りさせてもらうわ。」
そんなこんなで、学校にダッシュで向かうことになった。
なぜ寝坊したし、俺。
で、急いできたわけだが、まあ何とかぎりぎり間に合った。
教室に入るが、アキの姿が見当たらなかった。
どうしたもんか、と思っていたら後ろから、
「木下。ホームルームを始めるから入口塞いで無いでさっさとどけー。」
教師に着席を促せらたので自分の席に座り、ホームルームを話半分に聞きつつ、
「アキ・・・・・は来てねぇのか。坂本、なんかお前何か聞いてないか。」
「いや特に俺は・・・・・あいつ休むとか珍しいよな。」
「昨日の放課後辺りからぷっつりだな、あいつ。」
「何も無し、か。」
ホームルーム中、隣の席の奴でもある坂本に聞いてみたが、あまり芳しいことは聞けなかった。
今日は朝からドタバタしてたからなぁ、昼は食堂でいいか。
「そこの二人ー。授業始めるけど話終わったかー?」
「うわ、聞かれてた。」
「先生、今日休んだ子について何か聞いて無いですか?」
「開き直るな。木下。相模については何の連絡も無しだ。」
無断欠席か?あいつらしくも無い。
*****
昼休みになり、食堂に向かう。
それにしても、こっちの食堂を使うのはは久しぶりだな。
食券機の前で、何を買おうかと見ていると、
「木下、居る!?」
「小暮?どうした?」
なんか小暮が急いでこっちに来た。
「ちょっと部室に来てくれる?」
「今か?俺飯まだ『パンでも買って!』・・・・・了解。おばちゃん、焼きそばパン一個。」
「150円だよ。」
「ありがと。」
パンを買って、小暮に急かされるように部室に連れて来られた。
「で、なんで部室に?」
パンを食いながら、小暮に聞く。
「あいつら、帰って無いみたいなの。」
「は、あいつ等は帰ったはず・・・・・ん?なんだあいつ等の鞄と携帯が・・・・・?」
「だから『帰って無い』みたいなの。」
だから帰ってないの知っているが?
「は?意味が解ら『おや?誰かいますねぇ?』ん?」
部室のドアを見ると、なんか小太りな男性が立ってた。
「すみません、あなた此処の教師じゃ『ああ、これはすみませんねぇ。私、こう言う者です。』・・・・・はあ。って警察!?」
「警部、先に行かないでください。」
「いやそれはサトちゃんが遅いからでしょう。」
なんか警察手帳を見せて来た黒沢って人と、テンプレ的にいそうな助手モドキがいた。
「えーと・・・・・あなたたちは・・・・・。」
「県警の黒沢です。」
「里中と言います。すみませんが、少々お話を聞かせてもらってもよろしいでしょうか。」
「なんでしょうか。」
なんか俺たちに聞きたいことがあるらしい。
「その前にお一つ聞かせてもらってもよろしいでしょうかねぇ。えーと、木下智朗さんに、小暮一葉さんで間違ってませんよねぇ。」
なんか特徴的だな、この人の喋り方。
「そうですが。」
「間違っていませんね。」
「それでは、聞かせてもらいますが、あなた達は先日何をしていらっしゃたんですか?」
え?何?事情聴取?
あいつ等なんかの事件に巻き込まれたのか!?
「普段通りに学校に・・・・・」
「別段変わったことはありませんでした。」
「あなた達に関してはそれで結構です。で本題にはいらせてもらいましょうかねぇ。」
「「?」」
本題?
「ああ、私達が聞きたいのは他の方たち、つまりこの場にいらっしゃらない方の事ですねぇ、はい。」
「はあ、でもあの後すぐどっかに行っちまったようなんだけど。」
ま、嘘は言って無い。
放課後、部室で顔を合わせた後は何も知らないし。
「すみません、そのあたりを詳しく。」
助手さん(仮)が、メモを取るような形で聞いてくる。
「あ、それに関しては私が。部活が始まってすぐ、私たちが席を外した後、いくなりましたね。」
「あー、そうそう。ネトゲやろうって言ってたな。」
「そのネットゲームのタイトルをお願いします。」
?
変なこと聞くな。
「フロンティアハーツ・オンラインとか『あ、そこまでで結構です。』?」
「その質問はどう言っ『いやぁぁぁぁぁぁ!』今の、悲鳴!?」
「隣の部屋からだぞ!?」
俺は悲鳴の元に向かおうとするが、
「君たちはここにいなさ・・・・・ってもう行ってる!?」
まあ、無視して隣のどっかの部室のドアを開ける。
「あ・・・・・う・・・・・。」
そこにあったのは、鎧の様な物を着た、『人だった何か』だった。
何かその部屋に会ったパソコンからやかましいゲームオーバーのような音と共に、
ID08563 リーズ・ブロッフェン 死亡確認。
そんな文字が、画面に出ていた。
「・・・・・なんだよ、これ・・・・・。」
俺は、思考が追い付かなかった。
目の前にあるのは、何?
コレは、人?
・・・・・何で動いて、ない、の?
え?え?え?
「何よこれ!」
「わかんない!ホント、何よこれ!」
俺は周囲の悲鳴や怒号で、一気に現実に引き戻された。
「これ・・・・・こいつ、まさか・・・・・。」
「何?こいつ知ってんの?」
「みなさん静かに!」
俺はさっきの混乱から少し落ち着いた辺りで、さっき警察の人が来た。
ついでに一喝されて周りの空気も少しは落ち着いたっぽいが。
「木下さんおとなしく・・・・・サトちゃん。今すぐ本局に連絡を。」
「わかりました。すぐに連絡します。」
「みなさん速やかに部屋を出てください。後、サトちゃん職員室にも連絡を。」
「黒沢さん・・・・・でしたっけ?これは一体・・・・・。」
少し冷静になった俺は、警察の人に聞こうとするが、
「君たちは君たちの教室にすぐに戻って、先生の指示に従いなさい。」
まともに取り合ってくれなさそうだった。
が、俺は彼の最後の言葉にちょっと引っ掛かりを感じた。
「また犠牲者ですか・・・・・。」
と言った警察の人のつぶやきが・・・・・。
そして、この事件から一週間後、俺たちが『連続行方不明事件』と呼んでいたのが『連続怪死事件』に名称が変わったことを切っ掛けに、
俺の日常は、少しづつ、崩れていった・・・・・。