Chapter2-2
先ほどの会合から時間もたたず。
何か微妙な空気である。
「・・・・・まあ、とりあえず久しぶり。」
このまま微妙な空気のままというのもあれなので、無難に返しておこう。
「それよりもトシ、尻尾引っ張った事に対する謝罪がまだなんだが。」
「ところでアキとかはどうした?」
「無視か?」
「そんな事よりお前何でこんなとこに?」
「いや、謝れって。」
「謝ってんだろ?前の話で?」
「メタい発言すんな!?」
あー、うん。
このやり取り。、久しぶり。
「あのさ、こいつらっていつもこうなのか?」
「私は最近になってやっと慣れた所よ・・・・・。」
外野が何か言ってるけど気にしない。
「で、お前何でこんなとこいんだ?後他の皆は?」
「先輩はちょっと違うとこにいる。今はリジーと先生で来てるんだが・・・・・。」
「リジーって誰だ?」
「アキの事だよ。トシ。」
「俺の事はベルでいい。で、続き。」
「あの、私たちを置いて話を進めないでくれる?」
「「あ、すまん。」」
で、状況確認。つーかこっちでの名前を把握だけなんだが。
「俺はこっちでベルーロッゾ・カーマインって名乗ってる。長いからベルって呼べ。」
「私はエミリア・ウィンスゲートね。」
「で、俺はジョージ・マク『んで、俺はウィリアム・ハーカーだ。あいつらはウィルって呼んでる。』・・・・・。」
「とりあえずこっちの紹介は終わったな。」
「・・・・・。」
「で、何だっけ?」
「あなた達の今の状況を知りたいの。私たちは。」
「お前たちに会うまでの出来事ドラマチックに語りゃいいのか?」
「出来れば簡潔に。馬鹿の鬱陶しい物語に付き合う気概は無いの。」
「右に同じく。」
「出来れば簡潔に・・・・・。無理そうだけど。あいつの知り合いってだけで。」
ジョージがこっちを見た。
どういう意味だ、おい。
「ログインして、知らんところに放り出されて、先生に助けられて学校入って、しばらく他愛の生活の後、お前らにあった。以上。」
「全然分かるかボケ。」
「説明に期待したのが間違いね。ベル、通訳。」
「・・・・・。」
いやな、今ので大体分かるだろ?
・・・・・。
俺だけか?
「ま、訳すとだな、俺達のようにログインしたはいいが右も左も分からない所に魔物か何かに襲われた所を先生とやらに助けられて、その先生に厄介になって一月ほど経った所で俺達に会ったらしい。・・・・・つーか今のでもわかるだろ?」
「お前の言い方じゃないと無理がある気がすると思うぞ、俺は・・・・・。」
「左に同じね。で、何であんたはここにいるの?」
「先生に・・・・・。」
と言ってウィルは目を逸らした。
「何かあったのか?」
「・・・・・何でもない、割といつもの事だから。」
「何が?」
「それよりもリジー達と合流しねえとだな。」
「その前に聞きたい事があるんだけど。」
「?」
「お前誰?」
ウィルはたった今、ジョージの存在に気付いたらしい。
「いや、結構前から話には入ってたぞ?」
「俺はお前ら二人だけだと思ってたぞ?」
「お前ら・・・・・。」
「むしろ気づかない方が問題よ・・・・・。」
「ま、名前の紹介の時にかぶせられた事を放置してたのに問題あったとはいえ、な・・・・・。」
「気付いてたのなら言えよ・・・・・。」
「面白かったからつい、な。」
「そんな事よりそろそろ移動したいんだけど。」
「俺の存在ってそんなもんなのか・・・・・?」
俺はジョージの肩にポン、と手を置く。
そんなもんだ、と言葉を添えて。
返事は何故か拳だった・・・・・。
*****
「・・・・・。」
「で、こっちでいいのか?」
今度はジョージからガゼルパンチをいただいて、襟首掴まれて引きずられるように移動中です。
どっちの方が強い衝撃かなんて語るまでも無い。
「こっちでいいはずだ。リジーの反応もこっちにあるし。」
「それってそういう機能もあるのか?」
「アプリストアみたいなとこで落とした。他にも結構あったぞ?」
「ふーん。」
「そういや、お前の名前聞いて無かったな。」
「ジョージ・マクスウェルだ。よろしく頼む。ベルの友人ってだけでなんか嫌な予感はするが。」
「俺とこいつを比べんなよ。俺の方がまあ何ぼかマシだ。」
「こいつと違って自分がアレだって自覚はあるのか。」
「・・・・・。」
「こいつとつるんでりゃそのうち自覚できるぞ?」
「お前は・・・・・俺もアレだって言いたいのか?」
「こいつと必要以上に知り合いか親友になってりゃな。」
こいつら、人が喋れない事をいいことに言いたい放題ってくれおって。
どうしてくれよう。
さあ、どうしてくれよう!
とりあえずもっかい『クラフト・フレイム』。
対象は・・・・・。
「・・・・・。」
エミリアが額に手を当ててるようだが気にしない。
対象は・・・・・ここだ。
「・・・・・何か焦げ臭くないか?」
「俺には何にも・・・・・?」
「ウィル、あなたの尻尾・・・・・。」
「尻尾?・・・・・って、うわぁぁぁぁ!?」
「燃えてる!?消火器!?じゃなかった水魔法ー!?」
「動かないで、・・・・・『アクアシュート』。」
水の塊がウィルに直撃して火を消化する。
もうちょっと燃えてりゃいいのに。
「ぬぉっ!?・・・・・取りあえずありがとう。水浸しだけど。」
「尻尾燃えてたのに無事なんだな。」
「どうも自分の所属エレメントはその属性に対して結構耐性があるらしくてな。先生に・・・・・。」
「・・・・・深くは聞かん。ってか、どんな先生だよそいつ。」
「会えばわかる。」
「・・・・・っ。・・・・・うん、復活。」
よし、そろそろ声が出せるくらいに回復した。
「ベル、俺の尻尾の火をつけたのはお前『だ』な。」
「疑えよ。人をすぐ犯人に仕立て上げるな。」
「「「お前『だ』。」」」
すぐ人を疑うやつらだ。
そんなんでは大物になれんぞ?最近の奴は嘆かわしい。
「学習しないわね、こいつら・・・・・。」
エミリアの発言はスルー。
する-と言ったらスルー。
「主にあなたに言ってるのよ、ベル・・・・・。」
あーあー。
きーこーえーなーいー。
「もうこの話はいいだろ?で、まだか?」
「こいつ・・・・・。で、ここだ。」
「何ここ?」
「えーと、あれだ。俺達的にもダンジョンってやつ。」
「これが?」
「これが。」
案内されたのかどうなのか表現に困るが、どうやらこの中が目的地らしい。
その見た目は、洞窟の入り口とか、塔の扉の前とかではなく、空間にぽっかり開いた様に見える穴だった。
穴からは紫色の森の様な物が見える。
「先生たちはこの中だ。」
「入るの?待つの?」
「待ってもいいけど、お前ら戦闘した事無いだろ?肩慣らしについでに入らねーか?」
「賛成、俺こっちの魔物とか興味あるし。」
「私は、ま、多数決には従うわ。」
「それもう俺に選択権無いよな?」
「ベルは、基本的にこう言うのNO一択だもんな。」
「ま、たまにはいいんじゃね?」
「・・・・・。」
「エミリア、言いたいことがあるなら言ってくれ。そんな目で見ずに。」
何か物凄い白い目で見られてます。
主に俺が。
「動け。」
エミリアはサムズアップした後、
「この、」
親指を下におろし、
「インドアニート。」
首を掻っ切るような動作を取った。
・・・・・。
「否定はしないけどなんか傷付く・・・・・。」
「事実だろ。体育2。」
「あきらめろ、音楽3。」
「ウィル、いっぺん死ね。今それ関係ねーだろーが。」
「おま・・・・・容赦無く首絞めんな・・・・・息が・・・・・息が・・・・・」
「ベル、その辺にしときなさい。マジで死ぬわよ?」
「こいつに言われるのはなぜか癪に障るからか、な?・・・・・確証は無いけど。」
「お前音痴気にしてるしな。」
「諸悪の根源はお前か、ジョージ。」
「お、俺も・・・・・イ・・・・・息・・・・・。」
「ベルって二人同時にネックハングツリー出来るほどの筋力ってあったかしら・・・・・?」
*****
十分ほどして。
やっとこいつらが回復した。
「まったく、無駄な時間使わせやがって・・・・・。」
「誰のせいだと思ってんだよ・・・・・。」
「うるさい。」
「少し位抗議させろや・・・・・。」
「よし、黙れ。」
「もういいでしょう、早く入らないと。」
「だな、では出発。」
「「「(さらっと主導権奪ったな・・・・・。)」」」
ひょい、と俺は穴の中に飛び込んだ。
初探索。気が引き締まってまいりました。
さてどんなことが待ち構えているんでしょうか?
私、年甲斐も無く好奇心で胸が一杯になってきましたよ。
「お前、17だろ・・・・・?」
やかましい。