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Chapter1-1

ここではない、どこか。


現代でもない、どこか。


まるでゲームの世界のような、どこか。


俺は本来、そこに居るはずなんじゃないか、と時々思う。



・・・・・。


あー。うん。

疲れてるな。俺。


天井を眺めながら・・・・・と言うよりは、寝起きの状態でまず目に入ったものだが・・・・・を見ながら軽い自己嫌悪に陥っていた。



*****



先ほどの電波を忘却の彼方に追いやり、とりあえず俺は学校に行く準備をする。

この家には俺しか居ない。

高級とまではいかないが、駅前の結構大きめのマンション。

もうちょっと贅沢がしたいが、親のコネ・・・・・と言うより叔父に厄介になってるだけだが、俺の通っている高校も実家から県外にあるので、仕方ないことだと二年前に割り切っているが、やるせない。

一人暮らしができる分マシなのかどうかは別として。

適当なことを考えながら、簡単な朝食・・・・・と言ってもトースターにパンを入れるだけなのだが・・・・・を取り、着替えやら何やらを済ませ、学校に行くことにした。


「行ってきます。」


誰に言ってる訳でも無く、そう言って家を出た。


そして、家を出で数分した頃に何か忘れていることに思い出し、で。


「あ、弁当作り忘れ・・・・・はどうでもいいか。風呂壊れたの伝え忘れてたな。」


家を出て、学校まで半分まで来た所で致命的な事実に気がついた。

まあいいか。コンビニと言う便利な物があるし。

家帰ってからでも・・・・・直るのが遅れるくらいだからいいか。


「おーい、トシ~」


聞き覚えのある声が聞こえてきた。

声のした方に振り返り、挨拶ぐらいはしてやろうと思う。


「おはよう、たかのん。」

「ちょ、トシ!タカって呼べって言ってんだろーが!」


そういえば、自己紹介のような物がまだだった。

俺の名前は木下智朗きのしたとしあき。で、俺がたかのんと呼んだ奴の名前が鷹野陽一たかのよういちと言う。

本人はタカと呼んで欲しいそうだが、俺としては・・・・・


「鷹って感じか?お前。それにあんまりお前怖いイメージ沸かねぇからなあ・・・・」

「うるせえよ!ほっとけ!」


まあ、他愛の無い会話に花を咲かせつつ、通学路の道すがらにあるコンビニの前まで来た。


「あ。ちょい俺コンビニで買うもんあるから先行っててくれ。」

「そうか?でも、まだ時間あるし、俺も中入るわ。」


先に行く気は無いらしい。

それならそれで良いが・・・・。


「いらっしゃいませ~。」


店に入り、さて何を買おうかと物思いにふけりつつ、店内を回っていると、


「760円になります。」

「1000円で。」

「はい、1000円お預かりして240円のお釣りです。ありがとうございました~。」


俺は雑誌のほうを物色していたらふと聞き覚えのある声がして、そっちを見たら、なんか見覚えのある奴が買い物を終えてこっちに来るところだった。


「あ。」

「げ。」


とまあ、何かたかのんが引き攣った顔でそいつに反応している。

・・・・・分からなくはないのだが。


「小暮か。お前も買い物か?」

「まあそんなとこよ。木下。で?この馬鹿も買い物?」


馬鹿って言ってやんなさんな、小暮。

事実馬鹿にしろ。


「一葉~その言い方は無えだろ~?」

「うるさい。喋るな。黙れクズ。」


おいおい・・・・・コンビニの中で罵倒するな、小暮。

俺が変な目で見られかねん。

周りの人通りはって言うか店内はまばらだが。

で、俺の目の前でたかのんを罵倒した女の名前だが、小暮一葉こぐれかずはと言う。


「弁当作り忘れてな。パンでも買おうかと思ってたんよ。」

「あら?また?一人暮らしってのも大変ね。」


まあ、慣れればそうでもないが。

しかし、一人と言うのも結構つらい時ってのはあるけどな。


「購買とか食堂でも大丈夫じゃねーの?」

「あんたには聞いてない。」

「ひでえ!」


俺達の会話に口を挟んできたたかだったが、小暮に冷徹に撃ち落された。

冷たいねぇ~。


「お前等ほんとに幼馴染か・・・・・?」

「腐れ縁よ。こんな奴と知り合いになるんじゃ無かったって昔の私に言いたいわ。」

「さらにひでえ!」


まあ、嫌いではないのだろう。

こんな風に話すぐらいだし。


「ま、どうでもいいか。すいません、これください。」

「436円になります。」

「ちょ、トシ!どうでもいいってなんだよ!」


話を終わらせようとレジに向かった俺に対し、何故か?たかのんが突っかかって来る。


「言葉通りの意味でしょ?まあ、私もどうでもいいし。」

「そこまで言う気はないが、大体あってはいるな。500円玉は・・・・・無いか。100円玉5枚で。」


小暮の冷めた物言いに、便乗してみる。

ふざけてるかもしれないが、まあ、俺だからって事にして置いて欲しい物だ。


「トシ!一葉!この際だからはっきり言え!俺は何だ!?」

「「それは・・・・・」」


この際だから言うのもいいか。


「64円のお釣りになります。」


お釣りを受け取り、たかのんのほうに向く。

で。


「「ぶっちゃけ女々しい。」」


言ってやった。

つかさ、小暮。

なんでお前も言ってんだ?


「・・・・・。」


あ。固まった。

ま、いいか。そのうち復活するし。


「小暮、こいつどうしよう?フリーズしちゃったけど?」


と、俺はたかのんを指差して言った。

生気無くなってるなぁ、おもに顔が。


「私に聞かなくても対処方法はわかってるでしょうが。」

「じゃ、置いてくか。」


たかのんを尻目に、学校に向かうことにした。

それにしても、お前は何でそんなにたかのんに冷たいんだ?

俺は遊び相手としてからかう程度なのに・・・・・。

たかのんは・・・・・。

ま、いいか。

どうせ結果は見えてるし。

十分ほどして、そんなこんなで学校に到着した。


「んじゃな、トシ。昼休みにでも。」


ま、例によってたかのんは数分で復活して、追いついて来て、さっきのことをグチグチ言って小暮に一蹴されるという俺の中でのテンプレ展開を経て、いつもの調子に戻ったが。


「あいからわずね、あの馬鹿。それと木下。」

「何だ?」


そういって小暮は俺に向かって何かを投げてきた。

受け取って見ると、デジカメだった・・・・・物だった。

後、何らかのメモがセロハンテープで留められていた。


「もう一人の馬鹿に今すぐ私の前で切腹ショーを開催しろって伝えといて。それじゃ。」


・・・・・。

あの変態。また犯罪行為をやらかしたか。

まあ、因果応報と言う言葉も俺が手を下さずとも訪れそうではあるが。

下駄箱から移動し、とりあえず自分の教室に入るために扉を開ける。

あいつらのクラスとかいいな、とか思ったりするが、別なクラスなのは仕方がないとあきらめる。

この後に訪れる予定調和のような展開が変わるわけないのだが、願望に囚われたいって言うか実現して欲しいと願う。


「トシ、何か買って。」


と、開けるなりにこやかな顔をして先ほど話に上がった変態がいた。


「どけ、邪魔。後、これ。」


軽くあしらいつつ、自分の席に向かおうとしたが、変態が俺の服をつかんだ。

メモをつかんでプルプル震えている。

何が書いてあった。何が。


「トシ、頼むわ!あたしを助けると思っ『やだ。自業自得だろーがアキ。』せめて最後まで喋らせてから断れよぉぉぉ!」


お前の頼みは大概碌でもない。

長年の付き合いから導き出した答えは、そう簡単に覆らないと思え。


「お前の尻拭いは中学まででもうたくさんだよ。つーかお前お女なのに女の盗撮写真撮って楽しいか?」

「楽しい?馬鹿にしないでくれる?あたしが写真を撮る理由!それ即ち!」


と言って変態は何故か特撮系ポージングの予備動作に入った。

簡単に言うと、あれだ。変身ポーズ。


「そこに胸が有る(パァンッ!)へぶぅ!」


つい反射的に張り手かました俺は悪くない。


「ちょ!女の子相手に手をあげるとかあんた男!?」

「普通の女はてめぇ見たいな事はせんわ!お前に聞き直すぞ!?アキ!それでもお前女か!?」


常識的に考えて、普通男がやるから犯罪なりなんなり成立するのであって、女がやる物じゃ無いだろそれは!?


「女が女の胸が大好きで何が悪い!」

「宗教的に悪いわ!ボケ!」


ワイワイ騒ぐ変態。

ついでなのでこいつの名前も紹介。

変態こと相模晶さがみあきら

胸が大好きな変態である。女でありながら。

ちなみにこの胸好き俺が物心ついた辺りから患ってやがるのだ。幼馴染として恥ずかしい限りである。

小暮に言わせりゃ腐れ縁だが。


「で、変態。お前今日の部活はどうすんだ?」

「行くけど?リンチ覚悟で。」


しれっと答えるアキ。

彼女曰く、へこたれないのが唯一の取り柄だ、とか言っていたが、実際どうなんだか。


「根性あんな、お前。何でだ?・・・・・って聞くのも野暮か。」

「やっぱ一葉の胸は売れるからなぁ。あれマジ需要あるわぁ。」


と、腕をワキワキさせながら、にやついた笑みを浮かべた変態がそこにいた。

まあ、小暮の胸は大きいか、と聞かれたらそう大きくはないが。

しかし、黄金比の胸のバランスであるため、大きいと思われがちの見た目ではあるが。


「友人を商売道具にすんな。もう予鈴鳴るから席座ろうや。」

「うーい。了解ー。また昼休みにでもなー?」


昼休みも絡む気か。お前。

その根性を、お前の苦手分野に向けてくれ。

割と切実に。



*****



さて、授業も半ば終了し、昼休みを迎えたわけだが、今日は一人で食おうと思い、屋上に行ったのだが、そこは、やはり。と言うべきか。


「トシ、お前こっちで食いそうだから待ってたぜ。」

「この馬鹿の言うことも少しは役に立つのね。」

「さ、さっきぶり・・・・・トシ・・・・・。」


友人三名が先回りしていたようです。

で、アキ。お前妙に元気がないな?

理由は解ってて言ってるが。


「お前らも暇だな。俺と一緒に食べようとか。」

「ほかに食べる相手が変態と馬鹿じゃ息が詰まるもの。クラスの仲のいい子は今日欠席してるし。」


と、小暮は弁当箱を広げ始めた。

お、サンドイッチか。


「ちょ!」

「おまっ!それあんまりじゃね?一葉?」


馬鹿二人が抗議しているが、


「ま、理由はいいとして、早めに食おうや。」

「そうね。時間無いし。」

「「スルー!?」」


俺達二人は華麗にスルーする。


「そういや先輩、今日は部活に参加するとか言ってたな。」

「ただパソコン触ってるだけの部活だけどね。」


まあ、何やってるのかと、言われたらもう返す言葉がそれくらいだし。

小暮は話を続ける。


「基本ネサフだけでしょ?自分たちの部活なんて。」

「まあ、それ言ったらなぁ・・・・・。」


うん、そう。

基本ゲームして駄弁って終わり、と言うマジで生産性のない部活である。


「ねえ?まだスルーする?」


アキが何か言いたそうだが、謝るまで無視である。

相手にするとつけあがるし。


「そういやさ、たかのんが部活でネトゲやらね?とか言ってたな。」

「ネトゲねぇ・・・・・金掛かりそうじゃ無い?」


先入観強過ぎじゃね?

最近はやるだけなら無料ってのが増えて来てるし。


「ちょ、ガン無視とかアリか?」


ちょっとはどうすれば話に入れて貰えるか、頭を使えよ。お前らさ。


「無料期間だけ遊んでそれから決めりゃいいじゃんとかも言ってたな。」

「いかにもあの馬鹿の言いそうな事ね。」


まあ、この手のゲームは金を払った辺りで飽きるとか良く起きるだろうしなぁ、クーリングオフとか無いのかな?


「おーい。反応プリーズ。」


しつこいな、お前らも。


「ま、あいつのことだから先輩はもう巻き込んでんだろ。」

「それもう今日の部活決まってる様な物じゃない・・・・・。・・・・・で。」

「「?」」


小暮が、ふと、二人の顔を見て、こう言った。


「そろそろ予鈴鳴るけど、あんたたちご飯どうしたのよ?」

「「あ。」」


何か知らんがこっちの話に集中しすぎて飯を食うのを忘れていたらしい。

だから小暮に馬鹿って言われんだよ。


「早めに食べろよ、アキ。先生には一応言っとくから。」

「言う必要もないわよ。怒られときなさい。で、私先行くから。」


と言って小暮はさっさと屋上を降りて行ってしまった。


「んじゃ、俺も行くから。後で部活でな。」

「後でなー、トシ。」


タカは、あまり気にしていないようだ。

ま、へらへら笑ってごまかす気だろうし。


「ちょ!トシ!ちゃんと伝えといといてよ!割とマジで!」


必死の形相で俺に縋るアキ。


「わーった。わーった。忘れて無かったら伝える。」

「あ、これわざと忘れられるフラグ。」


どこか遠い目をしたたかのんが、つぶやくように言った。


「終わった・・・・・。次あの禿の授業やのに・・・・・。」


何か失意に染まった声を背に、教室に向かうことにした。

無論、故意に先生には伝えなかった。



*****



授業も終わり、これから部活か帰宅といった雰囲気である。

アキはさっきのが堪えているのか、机に突っ伏している。

悪いと思いつつも、先に部室に向かうことにした。

俺の部活動なんだが、コンピューター研究部といった名目だが、実際やってることは小暮との会話で分かる通り、遊んでしかいない。

部活動に参加しているのは、俺含めて五名。三年の部長と、俺ら四人といった構成だ。顧問は居らず、ちょっとしたサークルの様な物である。

部室・・・・・と言うよりは倉庫同然の空き教室を許可取ってパソコン置いてるだけの部屋に入る。


「木下か。今日は一人か?」


部室に入ると、先輩がいた。

今の所一人しかいないようだが。


「相模ももう少ししたら来ますよ。で、先輩は何をやってるんですか?」

「昨日、鷹野から勧められたネトゲのアカウントとアバターの作成をな。ほらこれ。」


と言って先輩は多分ネトゲの雑誌を渡してきた。


「作り終わったらどんなのか見せて下さい。それとこの本読ませてもらいますね。」


雑誌を受け取って読もうとした時に、たかのんが入って来た。


「よーっす!トシ!もう来てたのか!後シグ先輩こんちゃーっす。」

「テンション高いな。たかのん。」


昼の出来事はどこへやら、物凄いハイテンションでたかのんが部室に入って来た。


「鷹野は元々こんなノリだろう?」

「そうですけどね・・・・・。」


あ、そういえば先輩の説明を忘れていた。

名前は時雨沢天しぐさわたかしと言い、俺らの部長だ。

親が家電量販店の店長らしく、部室にパソコンやらモデムやらを一手に用意してくれた人でもある。

おそらく売れ残りだろう・・・・・。

性能はかなりのものだが。

いや、それだと売れ残らないか?

それはともかくとして。


「俺これ読んでからやろうと思うから、先やっといてく・・・・・うわっ!『んなもんやりながらでもーいじゃねーか!』・・・・・たかのんってさ。」

「ん?」


雑誌を取り上げられ、半ばあきれた声で俺はつぶやくように言った。


「説明書とか読まんタイプだろ?俺は読むけど。」

「あんなん読むのもかったるくね?解らんなってからでも遅くねーし、最近のはやりながらでも説明とか出てくるし。」


・・・・・何言っても無理そう。


「あ、もう三人とも来てたんだ。」

「で、どんなのやるつもりなのよ?」


で、俺らが駄弁っていると、残りの二人も入って来た。


「んなもんやりながら、やりながら!ちゃちゃっと作成して遊ぼうや!」

「そだねー。んじゃああたしによく似た美少女でも作るか!」


自分で美少女とか言ってたらせわねぇよ、アキ。


「自分でそう言うのってどうかと思うわ。相模さん。後この馬鹿は一日中このテンションね。まったく・・・・・。」

「そう言えばトシ。」


小暮が自称美少女のツッコミを入れたがスルーされ、自称美少女俺にが話しかけて来た。


「何だアキ。」

「あんたの机の上に先生に提出する皆のプリント置きっ放しだったけど大丈夫?」


・・・・・。

・・・・・!

え!?ちょ、出し忘れてた!?


「やべ!ちょっと行ってくる!」

「私も行くわ。」


と、何故か小暮が席から立った。


「小暮もか?お前職員室になんか用か?」

「進路のことでね。ついでだから一緒に行くわ。」


いやそれ、今でなくてもいいんじゃないか?

ともあれ、


「行ってらっしゃい~。」


と、アキの軽い見送りを受けながら俺達は部屋を出た。


「それにしてもネトゲとは、ね。小暮は興味あるのか?」


教室からプリントを回収し、職員室に行く道すがら、聞いてみる。


「あまりないわね。あの馬鹿発案な時点で分かってたことでしょう?」

「まあな。」


そりゃ、テレビやそんなのでバンバン宣伝やってたら興味ぐらい持ってたかもしれないが。


「それにしてもどんなゲーム勧めようとしたんだあいつは。」


と、俺達がやろうとしたゲームのタイトルを小暮に聞く。


「フロンティアハーツ・オンラインとか言ったタイトルだったわ。」

「ああ・・・・・思い出した思い出した。ネットで最新鋭の技術を導入した次世代ゲームとかで話題になってたあれか。」


ただし、ネット上に限る。

テレビではそんなに宣伝して無かったようだし。


「流されやすいのにも困ったものね。」

「まあな。それがあいつ等らしいって言えばあいつ等らしいがな。」


流されて、忘れ去る。

ま、いつもの事、人が生きる上で毎回起こる不変の出来事。


「あとそれよりも気になることがあるのよ。」

「何だ?」


気になる事ってなんだ?


「最近の連続行方不明事件よ。」

「ああ、なんか被害者に関係性が全く見られないってあれか。」


最近、突然行方不明になるって事件が多発しているらしい。

神隠しという奴だろう。


「できれば私たちの周りで起こってほしくないわね。

「同感だな。友人が行方不明になるとか勘弁してほしいしな。」


そんなこんな話しているうちに職員室前まで来た。


「所で俺はプリント担任に渡すだけなんだけど、お前は?」

「進路相談だからね。10分ぐらいは掛かりそう。」

「10分ぐらいなら待ってるわ、俺。」

「そう?好きにしたら?」


・・・・・。

で、マジで待つことにした俺だが、小暮の進路相談は思ったより長引いたらしく、20分ほど待つ羽目になってしまった。


「本当に待ってたのね・・・・・。木下・・・・・。」

「やる事無かったしな。待ってた。」


ま、すぐ戻るってのもアレだし、待つとなってかなり長引くのがちょっと辛かった。

あくまでも少しだけだが。


「まあいいわ。戻りましょう。」

「だな。」


・・・・・。

文明の機器ってホント便利。


「今戻った・・・・・ってあれ?」

「どうしたの・・・・・あら?」


部室のドアを開けたら、なぜか全員居なかった。

見た感じ、パソコンの電源も切れてるようだ。


「あいつらもう帰っちまったみたいだな。」

「大方期待してたよりも面白くなかったのかしらね?」


ああ、あるよな。

そう言う見かけ倒しのゲームって。


「ああ。『チクショオ!クソゲーじゃねーかこれ!』とか言ってゲーセン行ったな、こりゃ。」

「目に浮かぶわね。」


と、小暮が何か生温かい笑みを浮かべていた。

てめえは母ちゃんか。


「しゃあねえ、鍵閉めて帰るか。」

「そうしましょう。携帯に断りぐらい入れればいいのに。」


そう言って俺は部屋の鍵を閉めた。


「んじゃあ、明日な。小暮。」

「そうね。また明日。」


そんな感じで学校から俺たち『二人』は帰った。

帰って無いと判明したのは、ある事件と同時刻であった・・・・・。

その時はまだ、俺はまだ普通の日常に居ると、思っていた・・・・・。

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