太陽の昇る場所
ちょっと暴力シーンがありますが、本当の本当に読むだけで無理です!!って言う方以外は、なんの問題もないですw
極寒の夜の砂漠、月明かりに照らし出された大小様々な砂丘、枯れて渇ききった砂。
見渡す限りの砂漠が、彼らに突如として立ちふさがった。
さんざん奴隷として扱われてきた数十人の老若男女が、ただゴミのように置き去りにされたのだ。
理由は明白、道具の進歩で効率が上がった鉱山に大量の人はいらない。
コスト削減というところだ。
それだけなら奴隷解放と喜ぶところだったのだが、前述したとおり彼らは無限にも感じられる砂漠に捨てられた。
しかし彼らは希望を持ち、砂漠を抜けようと団結する。
弱った者の手を取り、互いに励ましあった。
寒さを凌ぐ様に身を寄せ合い、満天の星に気持ちを分かち合った。
しかし、今までの過酷な労働と、免疫のない凍て付く様な寒さで、過労の老人や体力が乏しい子どもに女性、負傷した男性が次々に倒れていく。
そうしている内に、すでに闘争心を根底から削がれ、助け合っていたはずの元奴隷の一部が、弱った者を攻撃し始めた。
過度のストレスによる心の不安定化だ。
幾多の欲求を押さえつけられてきた彼らは、狂気に満ちた表情で、手当たり次第に暴力を振るった。
それを止めに入った者もまた、正義と冠した遠慮の無い拳を、暴走した奴らにぶち込んでゆく。
数十もの人が、敵味方関係なく砂の上で血を吐かせ、吐かされる。
砂漠の寒さも、頭に血の昇った彼らには届かない。
女性の悲鳴と子どもの泣き声、骨の砕ける鈍い音、呂律の回っていない罵声が、砂漠の夜空へと虚しく吸い込まれてゆく。
倒れた者は容赦なく踏みつけられ蹴飛ばされる。
その場にいる誰もが、冷静な思考を失っていた。
殴られたらその腕に肘を叩きつけ、転ばされたらその足に歯を食い込ませ、押さえつけられれば砂を撒き散らし、血まみれでのた打ち回る。
女や子どもは、なるべく標的にならない様に身を屈め震えていた。
年老いた老人もまた、骨と皮だけの肢体を横たわらせ、無くした希望を、もう一度、諦めた。
どこか物思いに耽り(ふけり)ながら老人は、遠い目ではるか彼方の地平線を見た。
すると、まぶしい程の太陽が砂丘の谷間から顔を出した。
日の出だ・・・
老人は、背後で響く暴力の応酬さえも忘れ、太陽の光を見つめていた。
なぜなら、彼らの働いていた鉱山は太陽が昇らないから。
彼らのいた、無気力と被支配的な空間では、太陽の存在すら忘れかけられていたから。
それに気づいたのは、老人だけでなかった。
胸ぐらを掴んでいた男も、砂の上に血を吐き転がっていた青年も、子をかばい身を縮めていた女性も・・・すべての人が見た、希望の光が昇る瞬間を。
そして、その光を背に、遠くから馬に乗った一団が現れた。
その一団は言った。
俺たちも奴隷だった。だから、俺たちが奴隷の時代を終らせる・・・・・・今、そして未来のために、その手伝いをして欲しい。
・・・・・・と。
すると何故だろう、横たわっていた老人に力が戻ってくる。転がされた青年も立ち上がり、身を強張らせていた女性は、無意識に涙を流していた。
枯れて渇ききった砂漠に太陽が昇った年、元奴隷たちによる奴隷解放運動が始まった。
そこに、一片の曇りも無く誠実を象徴とする太陽の旗を掲げて・・・・・・
はじめましての人は始めまして、大暉です。
この話は、友達と一緒にお題を決めて、それに沿った話を書いた結果です。
お題は、『砂漠』『バトル』『中世』の三つ。
私が、このお題にどれ程近づけることが出来たのか、読んで頂いた方は感想を書いてくれるとうれしいです。
まだまだ、書き始めて一年半ぐらいの素人ですので、良かった点、悪かった点を教えてもらえるとありがたいです。