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キミはどんな映画が好きなんだい?  作者: NTR絶対ぶっ殺すマン
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2/2

2.秘密って割とばれるよね

 「はいはーい、部室は明け渡してもらいますね~」

「あっ、ちょっ、DVDは丁寧に……」

「そうだそうだ!絶版のやつだってあるんだぞ!」


「はぁ……。あのさぁ、君たちが一週間経っても部室が片付かないって言ったんだから今こうやって片付けてあげてんだけど。なんか文句あんの?」

「ぐぐぐ……」

「第一そんなに部室が恋しいなら新しい部員でも連れてこいや」


そりゃ、先輩と協力してこの一週間死ぬ気でクラスのみんなに声かけたさ……

だけどその誘いに乗ってくれる人は一人として現れず。


「ま、だが安心しな。俺もそこまで鬼じゃない。どうしても部室が欲しいってんならよ……」


バサァッと、何故か彼は勢い良く服を脱ぎ捨てる。


「このッ!」




「筋肉ッッ!」




「探究部にッッッ!!」




「入るんだったら、映研部のスペースを残してやってもいいぜぇ」


決まった……と言うような表情。


「あ、遠慮します」

「……いい提案だと思ったんだがな」








「ひゃん」

「うぐっ」

「じゃあ出てけ(笑)」


バチィィィン!!!!


無慈悲に扉が閉められる。




「うう、どうしましょう先輩……」


もう一文無しのホームレス部活だ。唯一あるのは、私のすぐ横に山のように積まれた愛しき映画たちだけ。


「根気よく声を掛け続けるしかないさ、全生徒を必死に勧誘すればきっと一人くらい入ってくれる」


よいしょっと先輩は立ち上がる。


「それにこれだけは使わまいとしてたが……私には一週間温め続けた”とっておき”の秘策があるんだ。夕陽はまあ見てな、私が部員をかき集めてやる」












【一時間後……】


なんか、とんでもなく冷たい視線を浴びているような気がする。



「おかーさーんあれなにしてるのー?」

「シッ!見てはいけません!」


(なああれって……)

(うわぁまじか)


通る人々の視線が痛い。


いや、うん。

これはやる前に止めなかった私も大概悪いけどさ。


「クソッ!!なぜ人一人も話しかけてくれないんだ!!」

「ゴ〇ラの着ぐるみ着てれば特撮好きとか釣れると思ってたのに!!」

「最近新作も発表されただろッ!!」


「特撮が好きって言っても、もう映画を見る層は限られてますからね……」


そう、娯楽にもタイパが要求されるこの時代、”映画好き”と言う人間はもはや絶滅危惧種。

このような小手先の努力では部員を手に入れられない程、若者の映画離れは深刻であるのだ。


「こうなったら作戦変更……!ド〇えもんなら流石に観てる人多いだろ!!」


がしかし、過去においては映画は割とメジャーな趣味であった様で、今先輩が着ている着ぐるみはOB達が残してくれた遺物。

どうやらこの着ぐるみを着て自作で映画を撮影してたんだとか。

部室に積み重なるほど自作映画があったので、相当部員もいたんだろう。


だが今は廃部され見るも無残な姿である。


(うおw必死やな)

(おいアレって著作権大丈夫なのかよ)

(私も部長だけど、ああはならない様に部員集め頑張ろ……)


そして行きかう人々から放たれる蔑む目が、さらに私の心を抉っていく。


「せっ、先輩!私一人で勧誘に行ってきます!」

「応!頑張って新入部員捕まえてこい!」






「とは言ったけどさ……」


あの空気に耐え切れず、適当な理由を付けてこの場から離脱してしまったのは良いものの、私一人では何か出来る訳でもない。


「マジでどうしよ」


部員を集めるために考えうる限りの事はもうやり切った。

もう私たちはこのまま死を待つほか無いのだろうか。

何か良いアイデア……映画に興味を持って貰えるような、そんな案を詮索するも答えは出ない。


「いっそ色んな部活の人に頭下げて回るか……?」


……最終手段はそれだろう。

必死にお願い(土下座)をすれば、見かねた誰かが入ってくれてなんとかはなりそうだが……人間としての尊厳を無くすことにはなるな。


「……おや?」


ちょっと気になるモノが私の目に入って、思わず歩を止める。


「くふっ────」


誰かがスマホ片手に教室にいる。

それも男子数名がゲームの為に固まってるのではなく、女の子がポツンと一人。

ビデオ通話……いや、そうであればあんな肘のついたような姿勢にはならない。


……なにやってるんだろ。











『あっ……あんっ』

おお、この映画結構直接的な描写あるなぁ、結構過激。

にしても凄い……この女優さん売れているのにも関わらずヌード公開するなんて。

だからこそその分映画にも迫力が生まれて臨場感がこちらまで伝わってくる。


やはり映画は色んな発見があるから観るのをやめれない。


今観ている映画、【ヘルタースケルター】のあらすじをざっくり説明すると、整形を繰り返して圧倒的な美貌を手にし、大人気ファッションモデルとなった主人公りりこ。しかし、その代償は大きく、毎日大量の薬を服用しなければ身体が、そして心も壊れてしまうような重大な副作用が伴っていて、また毎日休みのない仕事の連続により主人公りりこは身体も精神も擦り減っていた。

とそんな中、メキメキと成長していく後輩モデル、こずえが現れるのだ。

トップモデルの階段を爆速で登っていくこずえに、焦りが止まらず、精神が壊れていくりりこ。

そして畳み掛けるように、りりこの通っていた美容クリニックが違法行為を行っていたことが発覚、そのせいか薬の副作用も出てき始め今までギリギリで保っていた美貌も壊れていく……


と言ったような内容である。


まだ見ている途中だけど、この映画は特に心象表現が素晴らしい。

感情移入して映画を観るような人には本当に刺さる映画だと思う。


「くふっ」


と、こんな感じで毎回誰もいないが心の中で映画紹介をしてしまう私に、思わず笑ってしまう。

私の悪い癖だ。映画を見るなんて別に誰にも言うつもりはないのに。

まあ仮に人がいても、こんな過激な映画を他人に勧めるなんてどうかしてるが。


「……ん、もうこんな時間」


ちらりと教室の時計を見ると、知らぬ間に6時に差し掛かっている。


今日はこのくらいにしておこうか。

夕方だし、確かそろそろサッカー部かどこかがミーティングにこの教室使うはずだったし。


私は映画の視聴を止め、スマホを────


「あ……見止めてしまうんだ、”ヘルタースケルター”、いい映画だと思うけど」







「えっ」


予想だにしていない声が後ろから聞こえて、数秒間思わず硬直してしまう。

振り向くと、そこには上級生(二年生)であろう上靴を履いている生徒の姿。


みら、れた。

あんなはしたない映画を。

他人に絶対に言えないであろうあの映画を見られてしまった。


その事実を理解した途端、突如として脳内に流れる走馬灯ならぬこれからの未来視(ビジョン)


「ねぇ、あそこの席の岸谷さんってさ」

「あー、あの」

「おとなしめの子だと思ったけど……ねえ」


私の始まったばかりである華の高校生活が早くも崩れ去る音がした。


「ごめん……驚かせちゃった?」


ああ、おわりだ。

きっと私はこのまま弱みを握られて一生パシリとして使われる……


「は、はひっ」


もう焦りすぎて呂律が回らない。


「ちょっと、あなたに頼みたいことがあって」


「もし良かったら、映研────」

「ごめんなさい誰にも言わないで下さいなんでもしますから!!!」


土下座は誠意を見せる為とは言うけれど、まさか人生初の土下座が、こんなものになるとは思いもしなかった。




~・~・~・~・~・~・~・~

【映画紹介『ヘルタースケルター』】


まず言っておこう、エロ目的で見たら確実に後悔する(経験談)。


一人の人間が堕ちていく様がこれでもかと言うくらい丁寧に、そして克明に描かれている本作。

作中でも言及があるが、「ヘルタースケルター」の意味は、”めちゃくちゃ”。

正にその意味に合うような内容の映画で、主人公の完成されていた生活や精神が、少しずつ壊れる様にめちゃくちゃになっていく。

この映画の凄い所は、主人公の心が描かれる訳でもないのに自然と主人公の心情や意図が分かってしまう所にある。特に終盤のシーンは、圧巻の一言。

人間の心理やこの”どうしようもない感”を感じたい人は、是非目を通して頂きたい映画だ。


あと、俳優女優陣が「おおっ!」って言うくらい豪華なので今一度確認を。

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