【ゲーム配信!】木雨雪羽純がマツカー実況に挑戦する!
「……」
「うわー、ちょ、あれ、なんか攻撃食らった。えーこれ逆走? 全然わっかんねー……あれー?」
「……」
「おい、お前も逆走してね? ありゃりゃ? うわっ、ウチらドンケツじゃーん。やべー」
「……」
:羽純様終始無言
:二人で逆走すんなwww
:何でこのゲーム選んだの?
:落ちます!ダンジョン配信楽しみにしてます!
【¥100】まみち代
:まみち元通りつまんなくなってて安心した
:向いてないゲームだったのかも
:ダンジョン攻略配信見たい
:ツマンネ
:普通こういうのはゲームしながら雑談とかなんだけど・・・なんだけど・・・
:【悲報】ワイ指示厨、指示するまでもない
「あー……これは……」
「……」
「えー……二人ともビリ! ということでね。ウチら車はもうね、運転しません! やー、免許持ってなくて良かったー……的な? じゃーまた何かやります。……えっとぉ、羽純、どうだったん?」
「楽しかったぞ」
「あ楽しかったんだ……目ェめっちゃキラキラしてんじゃん。マジか。羽純も映してやれば良かったかなー。……あー、えー、じゃ、じゃあ、そろそろ配信切ります! 乙!」
:おつ
:羽純様が楽しかったなら俺らも嬉しい
:おつまみー
:ゲーム配信向いてないと思う
【¥823】目を閉じて羽純様の存在を感じていたらあっという間でした。感謝!
:おつまみみん
☆
「どうだろう、こんな感じで良かっただろうか」
「うん、ダメ」
「だめかー」
全く動じていない羽純は、「ゲームって難しいけど面白いんだなっ」と目を輝かせながらリプレイを押し、放置されてる私のキャラを置き去りにしてカートを走らせるのだった。何とか省エネで視聴者数を稼げないかと知恵を絞り、ウルトラマキ男と愉快な仲間たちが登場するレースゲーム『マキ男カート』のゲーム実況にチャレンジしてみたが、もう大失敗もいいところだ。私も実況が得意なわけではないし、肝心の羽純はゲームに触れるやダンマリで、一切撮れ高の役に立ってはくれなかった。
「スパチャも全然だし、同接もひですぎる……。来てくれた人もすぐ落ちちゃってんじゃん。ゲーム実況がいっちゃん労力なく配信やれるけど、こりゃもう没だな……」
「……」
「おい、それ、逆走のマーク」
「……」
「返事しないぐらい集中してるってかい」
羽純の操る車は壁にガンガンぶつかりながら方向転換をしているのだった。ヘッドセットを外しつつ、やはりダンジョンに行くべきかと数秒考え、やっぱり無理だとため息をつく。
そうして私は、羽純の初心者プレーを眺めながら昨日のダンジョン配信の後の会話を思い出していたのだった。
「機能喪失?」
「世界で2例しか発見されていない奇病らしい。文字どおり戦闘型の神器が変形し、正常に稼働しなくなる病気だ。私の場合は刀身の消滅だったが、症例としては銃の引き鉄の消失、あとは巻物の文字が存在しない文字に変化したというものがあったそうだな。高位の冒険者に発生するものらしく、原因は不明。どうにかならないものかと私も随分あがいたが……結局、治療法がなくてな。もうアタッカーとして役に立たなくなってしまった。お陰で私は、オルタナのお荷物になってしまった」
記憶の中の羽純はずるずると鶏塩ラーメンを啜り、ほうとため息をつくのだった。「ラーメン屋に来るのは初めてだ」とラーメンを幸せそうに食っている羽純はあまりに呑気で、とてもガチ勢冒険者生命を絶たれた女には見えなかった。
私たちがこの一億総配信者時代を生き残るには、他の人にはできないダンジョン内部での撮影配信が最適解だろう。しかし、戦闘能力のない2人がダンジョンにのこのこ行くのはあまりに現実的じゃない。総じてモンスターが出にくい第1層ならとは思うが、そもそも視聴者が見たいのは戦う木雨雪 羽純のはずだ……。
「……ゲ」
「げ?」
漏れ出した私の悲鳴に、羽純が一瞬振り返る。私はというと、何気なく開いたスマホの画面に目を落とし凍り付いていた。
ポコンポコンという通知音と、画面上部に踊る『今晩東京帰るからな』『覚悟しろ』『夕飯食うなよ』の文字。




