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ウチ、分かったかも

「にしても、なーんでウチなんか誘拐したんじゃろ」


 一瞬のエアポケット。逃げ込んだ森の中、童女たちの笑い声が遠ざかりきったところで私は思わず呟いてしまった。妙士郎が怖い顔でシーッ!と指を立てるが、まあ大丈夫じゃねえの。周りに何もいないっぽいし。一方のペトラは不思議そうな顔で、私の独り言の続きを待っているようだった。なるたけ声が響かないよう2人に小声で説明する。


「や、だってさ、グランディンは奇襲に成功してんだべ? 攻撃すればオルタナだって全滅してたかもしんない。なのに、実際にやったのはウチの誘拐だった。何で?」

「そりゃ……お前が一番弱いからじゃねーか?」

「だから何で《《誘拐》》なの? そんなことして何の意味があんの? だってあのバッタは……いつでもウチを殺せた」


 言葉にして、ぶるるっと震えてしまう。体に食い込むほどの鋭い爪で掴まれ、そのまま誘拐された。“パンデモニウム”で唐突に大発生する人間大の昆虫モンスター・イナゴライアス。貰った資料には捕まえた人間の頭をバリバリ食らう化け物だと書かれていたはずだ。(なんか瀬黒曰くメダルフラッグ?みたいな名前のレトロゲーに似た敵がいるらしい)

 それなのに、イナゴライアスは私を食わずに捕まえただけで結界の中に飛び込み、結局はヴィヴィアンたちに撃ち落とされ、ズタボロに殺されていたのだった。結局そのドサクサで逃げ出すことができたんだけど……あのバッタは、まるで操られているかのように私の誘拐を選んだ。


「Right...つまりー、敵はどーしても真美華が欲しかったーって感じナー?」

「何だそりゃ?」

「グランディンは、結界の中にウチを誘い込みたかった……ウチを……? 何でさ……」


 顔を上げる。それはなぜだ? 立体感のない梢と、絵の具で塗りたくられたようなパステルの空を見据える。絵本のような世界、何者かのよう創作物? グランディンは地上に出るつもりがなく、私を捕まえるために待ち構えていた。それは……つまり。


「ウチ、分かったかも」

「……何が? って、おい!」

「アッハ!」


 手を伸ばす。

 こいつ、きっと私と同じなんだ。私も腹黒でバカだから、相手のやりたいこともだんだん分かってきた。腹黒のバカなら何のために、どんな目的を持って私をさらう? 私に何をやらせたい? そんなの、決まってる。

 そう、私、須野原 真美華に価値なんてない。私の人生、いつもそうだ。価値があるのは……。


「《撮丸》、顕現。……信頼してっからね、みんな」


 神器だ。

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