#8 確かな未来
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「それじゃあ文姫、二つ目の竹簡を読んで」
私は文姫に『第弐巻・毒』と書かれた竹簡を差し出す。
最初に読んでもらった竹簡には、具体的な予言は何も書かれていなかった。だからこれが、私たちが読む最初の予言ということになる。
「はい。……って、やっぱり私が読むんですね」
文姫は少し嫌そうな顔をしたが、そんなこと言ったってしょうがない。だって、漢字ばっかで読めないし!!
「そうよ。しっかり情報を共有して頭揃えをしておかないと、いざという時に動けないじゃない。いまのところ貴女と私、二人だけがこの秘密を知ってるんだから」
「じゃあいっそのこと、この竹簡を仲穎さまに直接お見せするのは如何でしょう?」
文姫は閃いたという顔でこっちを見る。確かに、要はここに書かれている内容を回避すれば良いのだから、董卓自身に動いてもらった方が話は早いし確実である。でも……
「ん〜〜。それは、もう少し様子を見てからの方がいいかも。まずは、この予言の書の内容が正しいかどうかしっかり確かめてからの方がいい」
「ご自分で書かれたんじゃないんですか?」
私の言葉に文姫は首を傾げてこちらを見る。
「ええそうよ。でも、覚えてないんだから全部鵜呑みにはできないわよ」
未来を知った小紅が書いたとはいえ、現代まで伝わっている内容がどこまで正確なものかはわからない。だって、私の知っている董卓はでっぷり肥え太った陰険なジジイだったけれど、お爺ちゃんはそんな人じゃない。
それにあまり歴史を変え過ぎてしまうと、この予言の書自体が役に立たなくなってしまう可能性がある。私自身の知識や記憶も。そうなってしまえば、私たちはただの幼女だ。フラグは一つひとつ折っていくに越したことはない。
私はそんなことを考えていたが、文姫はその言葉を少し誤って解釈したようだ。
「な〜んだ。じゃあ、董一族が全員処刑されるっていうのも……」
少しおどけたような顔で文姫がそう口にした瞬間──
ドクンッ!
「うっ……」
「小紅さまっ!?」
突然、胸の奥を握り潰されるような感覚。強烈な目眩と吐き気が私を襲った。
違う、貧血でも病み上がりでもない。
これは……“この身体”が知っている恐怖だ。避けられなかった未来の、“痛みの予告”。
ごほごほとむせた私の背を、駆け寄った文姫が優しくさすってくれる。
大丈夫、大丈夫だ。時間はまだある。それに、こんな未来なんて変えられる。
私はそう、もっと未来からやって来たんだから。
「だ、大丈夫ですか?」
「ええ、ありがとう。ちょっと眩暈がしただけ」
やがて落ち着き始めた胸を撫で下ろして、ゆっくり深く息を吐く。
その様子を心配そうに見ていた文姫を見つめ、静かに私は告げた。
「その未来は本当よ」
「……っえ?」
「私には、未来の記憶があるの。それを書いたことは覚えてないけれど、たぶん、そこに書かれていることの多くは間違っていない。私たち一族は、滅びの運命を背負っている」
文姫はしばらく唖然としていたが、私の尋常じゃない雰囲気を察してやっとその言葉の意味を理解したようだ。
「じゃ、じゃあ……」
「そう。だから、私たちで変えるの。お爺ちゃんを助ける。それで、皆んなを救う」
改めて、文姫に告げる。これは決意だ。
「さあ、最初の予言を読んで」
私は再び竹簡を差し出す。文姫は、今度こそ真剣な眼差しでそれを受け取った。
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