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董卓の孫娘はお爺ちゃんを救いたい!〜悪役令嬢、竹簡の予言で滅亡回避〜大悪党の董卓ファミリーが闇堕ちする前に、私が全部救います!  作者: 雨咲 しゆみ
第二章──毒の予言と夜宴の蝶

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#57 英雄たち

 ***


 階段を登りきると、すでに集まりきっていた参加者たちの目が一斉にお母さまを向く。

 その反応は様々で、容姿に目を奪われる者、油断ならないと眉を顰める者……中には、ギラリと睨みつけてくる者もいる。

 そんな数々の視線を受けながらも、お母さまはにこりと微笑んで小さく一礼するに留めた。本当に肝が据わってる。


(すごい注目ですね)

(ええ、唯一の女性参加者だもの。好奇の目を集めるのは仕方ないわ)

 文姫とそんな話をしていれば、司会が歩み出て声を張った。


「静粛に! これより、皇帝、皇后両陛下がご入場される。皆の者、頭を下げよ!」


 司会の号令で観衆と、お母さまを含む参加者たちは一斉に頭を下げる。


 でもそんな中で一人だけ、まるで会場の反応を楽しむかのように、ゆっくりと見回す者がいた。

 その男は会場の中央、お母さまのすぐ近くにいて、口元には挑戦的な笑みを浮かべている。

 すらりとした背丈に、切れ長の両目はまるで鷹のよう。青みがかった髪を後ろに流して、右耳に小さな耳飾り。

 歳は、二十代前半だろうか。この男は……


「ごほん。そこ、早く」

 司会が一つ咳払い。男に小さく注意する。


「おい馬鹿、“曹操(そうそう)”。聞こえなかったのか? 早く頭を下げるのだ」

 そんな男の袖を隣から引っ張るのは、まさしく貴公子然とした風貌の優男。この男も若い。


「ふふ、袁紹(えんしょう)。そう焦るな。この景色……並いる中華の傑物たちが、まるでこの俺に服従しているみたいじゃないか。こいつは“見もの”だな。なあ、お前もやってみろよ“三公(さんこう)”」


「やるか、馬鹿! 霊帝さまが来られたらどうする。そんなことしていたら、この俺まで怒られるだろうが!?」

「はっはっは、お前はつくづく気が小さい男だな」

 曹操は愉快そうに笑ったあとに、ゆっくり頭を下げる。


「違う……分を(わきま)えているだけだ」

「ふ。“機”を掴むためには、時にその“分”を敢えて切り離すことも必要だぞ」


「……」

 曹操の言葉を受けて黙り込む袁紹。軽々しく言葉を交わす二人のやりとりはまるで親友だが、どこかそれだけでは終わらない雰囲気も漂っている。


(えっ。まさか……この二人が“曹操”と“袁紹”!?)

(小紅さま? お知り合いですか?)

(あ、いえ。ちょっと一方的に……)


 この二人も知っている。どちらも三国志の“超大物”──その若き日の姿だ。


 “曹操”──三国志における最強の一国、“魏”の礎を築いた人物。

 そして、『萌え剣』における私の“最推し”。

 

 中華全土で発生した民衆の一斉蜂起──“黄巾の乱”。

 この男は、その討伐で若くして己の軍才を示し、その後は反董卓連合での活躍、黒山に住み着いた賊の討伐、呂布の撃破などを経て、兗州(えんしゅう)豫州(よしゅう)司隷(しれい)徐州(じょしゅう)と、順調にその勢力を拡大していくことになる。


 そして後に──“袁紹”。隣にいるこの親友と、中原の覇者をかけて争うことになるのだ。



 ──カーン カーン シャンシャンシャンシャン……


 その時、甲高い鐘と鈴の音。


「霊帝陛下の、おなーり〜」


 司会の声。

 ついに霊帝さまご一行が入場してくる。


 “見えていない”とわかっていても、私は頭を下げそうになる。

 だけど、思わずその動きを止めたのは、強烈な何かが先に“香った”から。


 甘い“蜜”と“脂”の混ざった匂い。まるで満開の花畑のどこかに“濡れた獣”でも潜んでいるような、そんなあべこべな組み合わせ。


 わからない。でもどこか変だ──明らかに。

 

 続いて霊帝さまに寄りかかるようにして入場してきた“その女”を見た瞬間──私の中で“誰か”が震えた。


 大胆に露出した胸元から覗くのは、艶のある白い肌に、豊満な胸。

 首に巻かれているのは、ふわふわの白い獣の尾。白と桃色を重ねた衣装には、その至る所に金糸の刺繍。孔雀の羽飾りを背負った──その女。


 すぐにわかった。彼女が何皇后だ。

 歳はまだ二十に満たないほど若く見えた。この美貌で、劉辯ほどの大きさの子がいるようにはとても見えない。

 目は大きく、やや上がった目尻から伸びたまつ毛は天を突くほど長い。

 平伏す大衆を見下ろして蠱惑的な笑みを浮かべながら、満足そうに霊帝さまにもたれかかっている。


「うふふ。見て見て(こう)ちゃん。皆んなあなたに頭を下げているわ」

「当然だ。皆、朕の家臣たちであるからな」


 小さく話す二人の言葉は、この壇上でも前にいるごく僅かな者たちにしか届いていないだろう。

 でも、“透過の術”は音を透かす。呼吸の音も衣擦れも、私が意識さえすればノイズは消える。

 だから、彼女たちの会話は私たちにも聞こえている。


「すご〜〜い。じゃあ、ここにいる人たち皆んな、なんでも言うことを聞くの〜?」

「ああ。余が命じればな」


 霊帝さまの答えを聞いて、一瞬だけど何皇后の笑みが醜悪に歪む。


「……へえ。それは本当に、すごいわ」


 喉の奥が勝手にこくりと音を立てる。

 彼女の薄桃の瞳に滲む深い“闇”が、私のすぐ背中にまで迫っているような気がした。


 ***

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