表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
董卓の孫娘はお爺ちゃんを救いたい!〜悪役令嬢、竹簡の予言で滅亡回避〜大悪党の董卓ファミリーが闇堕ちする前に、私が全部救います!  作者: 雨咲 しゆみ
第二章──毒の予言と夜宴の蝶

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/83

#49 文姫の“反転”

 ***


 蔡邕は微笑み、私も頷く。文姫はまだ、少し追いつけてないみたい。


「蔡邕。貴方……仙術が使えるわね?」

「……はは。遠い昔、好きな女性を振り向かせようと必死に学ぼうとした時期があった。というだけです」


 私の問いに、蔡邕は自嘲気味にそう返した。


「私に仙術は扱えませんでした。ただ少し、五行に理解があるだけですよ」

 悲しそうに眉を下げた彼には、まだ何か隠していることがある。そう思ったけれど、それ以上私は踏み込めなかった。


「……そうなの」

 ただ小さくそう返す。


「えっ、それってもしかして……お母さまのことですか?」

 振り返れば、キラキラした瞳。文姫はあまり空気を読めない。こういうところが、仙術を修得する遅さの原因でもあるかもしれない。こいつ文才はあるのに、なんでこんなところで鈍感なんだ……。


「ああ。まあ、そういうことになるかな……」

「ちょっと文姫? いまはそんなお話聞いてる場合じゃないでしょ。練習練習!!」


 頭を掻いて少し言いづらそうにした蔡邕の言葉を遮り、私は文姫を呼び止めた。


「ええ!? いいじゃないですか〜。お父さまはなかなか、お母さまのことをお話してくれないんですから〜」

「なに言ってるの! もうこっちも時間がないの。漢詩大会は一週間後なのよ! さあ!」


「でもでもでも、もごっ!? む〜〜!」


 まだうるさく抗議しようとした文姫の口に茶菓子を詰め込んで、私は彼女を引っ張って蔡邕から引き離す。

 去り際、安心したように、でも少し寂しそうに、蔡邕はぺこりと頭を下げたまま顔を上げなかった。


 ***


「そう、集中。私と一緒に、呼吸を合わせて」


 庭の奥。私は文姫と二人手を繋ぎ、ゆっくりと呼吸する。


「あ、あの……いつまで……」

 何分そうしていただろう。ついに痺れを切らした文姫が声をかけてくる。

 どういうわけか、その顔は少し赤い。


「いつまでもよ?」

「いっ……いつまでも!?」

「そう。五行が巡るまで、焦らないの」


 文姫は驚きと羞恥が混ざったような顔でこちらを見ているが、これは仕方ない。


 蔡邕とのやりとりでわかったことは、五行は常に変容し続けている。ということだ。

 手の指はそれぞれ分かれているが、掌では繋がっている。それはつまり、五行もそうであるということ。

 無理やり流し込もうとしても、漏れていく。私は五行を“木”と“火”しかうまく使えないと思っていたが、本当はそうではないのかもしれない。五行が体内を巡れば、あるいは私自身も──自ずから然り。


 今回、先に術言を唱えるのは私だ。だからたぶん、五行を“呼び込む”役目は私。

 つまり、私自身が五行を体内に宿さないと、文姫に伝えられる力はずっと小さくなってしまう。


「大丈夫、落ち着いて文姫。貴女が感じられるように、うんと濃い五行を流し込んであげるから」

「う……うんと濃い、五行?」

「そうよ。私の中を巡った五行を編んで、貴女に流すの。……指先から」


 そう言って、少し強く手を握る。

「あっ。小紅さま……」

 文姫の顔がさらに赤くなる。なんだ……? 呼吸も少し、乱れてないか?


「な、なななんか意識したら急に……」

「急に?」

 もじもじと、文姫が身体を捩り始める。ちょっと、気が散るじゃないか。


「何してるの文姫、集中して。これじゃ、五行が巡らないじゃない」

「だ、だってだって、小紅さまが変なこと言うからじゃないですかぁ!」


「べ、変なことなんて言ってないわよ。何を思ってるの貴女!?」

 意味がわからない。だけど顔を真っ赤にしたこの娘のことだ。まさか……何かに影響された?

 私は最近の文姫の行動に頭を巡らせる。そういえば、寝所に何か巻物を持ち込んでいたような……。


「文姫……貴女、そういえば昨日の夜も何か書物を読んでいたわね」

 少しキツく睨めば、文姫はびくりとその肩を上げる。


「え、ええ!? あ、いや……そうですね。陛下がくれたあの巻物を……」

「嘘おっしゃい。あれは朝に私が読んだけど、貴女が夜中に読んでいた巻物は、朝も枕元に置いてあったじゃない」

「あ、あれぇ!? そ、そうだったかなぁ〜??」


 目を泳がせる文姫。明らかに、こいつは嘘をついている。

 合わせたままの両手を絡み付けるようにして引き寄せる。

 そのまま、私はそっと文姫の耳に口を寄せ、吐息を混ぜてこういった。


「悪い子……お仕置きが必要ね」


 その時一瞬だが、何かが身体の中を通り抜ける。

 濃い何かが、文姫の中に注がれていくのがわかった。


 え、五行が……?


 ひゅ……


 息を呑む音。そして文姫は目を回して倒れた。顔を“真っ赤”にして。

 はぁ。私も前世で読んだことがあるからわかるぞ。でもな、その歳で“反転”ものはやめておけ。

 どっちも男やどっちも女なんて……いや、いいぞ。わかる。でも、いまじゃ無いだろ。

 仙術も恋愛ものの書物も、まずは“正”から。


 ため息をつきながらもパタパタと袖で文姫に風を送る。

 こんなことしてる場合じゃないけど、文姫には一旦あの“卑猥な読み物”を止めさせよう。

 これじゃ、いつまで経っても手を繋げない。でも……。


「ほんの一瞬だったけど、ちゃんと流れたわ」


 手を握ったり開いたり。それだけでも、五行は動く。

 次は、成功させられる。そんな予感が、確かにあった。


 ***

面白かったらブクマ&★評価をもらえると

明日の更新の励みになります( ๑❛ᴗ❛๑ )♪

まだまだお付き合いくださいね☆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ