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董卓の孫娘はお爺ちゃんを救いたい!〜悪役令嬢、竹簡の予言で滅亡回避〜大悪党の董卓ファミリーが闇堕ちする前に、私が全部救います!  作者: 雨咲 しゆみ
第一章──破滅の予言と滲む未来

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#4 教えて文姫

 ***


「私が……?」


 文姫から告げられた事実に、私は思わず問い返した。


「はい。小紅さまが、です。覚えておられませんか?」


「ごめんなさい……まだ少し記憶が曖昧みたいで……」


「あ! いいえ、申し訳ありません!! なんか変なことを言ってしまって……その、忘れてください!!」


 文姫はパタパタと手で顔を仰いでから、何事もなかったように私の着替えの準備を始めた。

 しかし、私は後ろからその手を掴んで止める。


「待って」


 文姫を振り向かせ、今度はしっかりとその目を覗き込む。そこにはどこか躊躇(ためら)いのような、あるいは戸惑いのようなものが浮かんでいる。


「知りたいの。私が倒れる前のこと。……どうしても」


 そう言ってしばらく見つめていると、ついに文姫は折れた。そして小さく息を吐き、再び口を開いた。


「小紅さまは、立て続けに二回も倒れられたのです。それは、覚えておられますか?」


「二回? ……いいえ、覚えてないわ」


 そっと頭に触れてみる。昨日──この世界に来たときに倒れた感覚は、かすかに残っている。けれど、その前の一度目のことは、どうしても思い出せなかった。


 文姫は続きを話す。


「一度目は、一週間ほど前でした。ひどい高熱を出されたんです。その時、私のことを“文姫(ふみき)”と……そう呼ばれたのです。私の名前は“文姫(ぶんき)”ですよと何度も訂正したのですが、小紅さまは、『貴女はまだ何も知らないのね』──って」


 声のトーンが少し落ちる。

 どういうこと? 小紅(しょうこう)は私の知っている文姫(ふみき)と会ったのだろうか? でも、いつ? どこで?

 私の頭の中を色々な疑問が駆け巡る。


「そしてお身体もまだ十分回復しきっていないのに……病を押してそちらの竹簡を書き始められたのです」


 文姫(ぶんき)の視線の先には、机に積まれた竹簡。

 それは全部で八巻あり、すべてが私──小紅によって書かれたものらしい。もしかして、ここに答えが書かれてる?


「貴女、昨日の晩にそれを読んでいたわね」


 私がそう口にすると、なぜか一瞬だけ、びくりと文姫の肩が震えた。彼女はあわあわと誤魔化そうとしたが、私はそれを許さない。


「いいの、誤魔化さないで。私、見てたから」


「……すみません。いけないことだとはわかっていたんですけど……」


 文姫は、悪事を白状する幼子のような、そんな表情を浮かべた。


「あの……」


「なにかしら?」


「わたし……殺されますか?」


 少女の膝は震え、声には怯えが乗っている。とても昨晩、蔡邕や私に大口を吐いていた女の子には見えない。


 え? なんで!? なんで殺されちゃうなんて思うの??


 半ば混乱しながらも、私は精一杯の冷静さと優しさを込めて聞き返した。


「落ち着いて、誰もあなたを殺さないわ。けど、なぜそう思うの?」


「だって、秘密を……知ってしまったから」


 ふるふると震えだした身体を自分で抱きしめるようにして、文姫は答える。


 秘密──か。私は改めて竹簡の束に目を向ける。

 この聡明な少女が死を覚悟するほどの内容だ。一体何が書かれているのか……。


「言いなさい。その竹簡には……何が書いてあったの?」


「ええっ! 知ってますよね? だって、ご自分で書かれたんじゃないですか!」


「いいから」


 有無を言わせぬ圧を乗せ、私はもう一度文姫に命令する。

 文姫は眉を下げてしばらく黙り込んでいたが、やがて観念したように口を開いた。


「……未来です。董一族の、そして……この国の」


 その言葉と同時に、窓から強い風が吹きこんだ。

 積み上げた竹簡が一つ転がって、ぱたりと解ける。


 私は息を呑んで、それを見つめることしかできなかった。


 ***

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