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悪役令嬢を名乗った私ですが、ラスボス竜騎士団長に「一生愛す」と求婚されました  作者: みー


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第19話:【聖域の儀式】王太子の野望と巫女の真実〜ゼフィールとセシリア、夫婦による奇襲〜

ゼフィールの契約竜が吐き出す熱風と、夜空を切り裂く風の音だけが、私たちの周りにあった。


私を抱きかかえるゼフィールの鎧は冷たい。しかし鎧に覆われていない肌は熱く、安心できる命綱であることを認識させる。

彼の手に握られた黒いペンダント――竜の血の守りの紋章が、微かに脈打っていた。


「見えたぞ、セシリア」


影の山脈の中心地。そこにぽっかりと開いた窪地に、古代の石造りの祭壇があった。それが"衰退する竜の聖域"だ。


祭壇の上では、大枢機卿ヴァレリウスが、黒衣の男たちに囲まれ、何かを詠唱している。その中心には、縛られたルナと、王太子アルベールが立っていた。


ルナの瞳は怯えと絶望に濡れていたが、その華奢な体からは、不思議な柔らかな光が発せられていた。彼女の腕に浮かぶ紋章が、古代の魔法陣と共鳴している証拠にちがいない。


「儀式は、もう始まっている!」


ゼフィールが焦燥の声を上げる。


アルベールは興奮した面持ちで、ルナの頭上に手をかざしていた。


「ルナよ!お前の聖女の力を私に捧げよ!その力で竜の呪いを鎮め、私は真の王となる!セシリアを奪ったゼフィールは、魔物として滅びるのだ!」


ルナの力は、竜の血を持つ者の呪いを鎮めるために使われる。アルベールは、その力を横取りし、自分のものとして利用しようとしていたのだ。


「ゼフィール、今です!」


「承知!」


ゼフィールは私を背中にしっかりと固定すると、契約竜に命じた。


「一気に降下しろ!奇襲だ!」


契約竜は咆哮を上げ、祭壇の真上へ急降下した。


轟音!



竜の着地により、祭壇の石畳が砕け散る。


ゼフィールは私を庇うように、祭壇の上に降り立つと、即座に黒の剣を抜いた。


「ヴァレリウス枢機卿!貴様の陰謀、ここで終わりだ!」


ゼフィールの突然の出現に、アルベールは狂乱した。


「ゼフィール!貴様は謹慎処分のはず!なぜここに!?」


「俺の妻の知恵が、貴様の愚かな企みを全て暴いた」


ゼフィールはアルベールを一瞥すると、枢機卿へと剣を向けた。

枢機卿は表情一つ変えずに、詠唱を続ける。


「竜の魔物よ。貴様の暴走は、この聖域で止める。王太子殿下、ルナの聖なる力を受け取ってください」


枢機卿は黒衣の男たちに命じ、ゼフィールへと襲いかからせた。


ゼフィールは一振りで複数の敵を吹き飛ばすが、詠唱を続ける枢機卿に近づくことができない。ルナの体から発せられる光は強まり、儀式が最終段階に入ろうとしていた。


その瞬間、私はゼフィールの背中から飛び降りた。


「セシリア!危険だ!」


ゼフィールが叫ぶ。


「わたくしの悪女の知恵が必要ですわ!任せて!」


私はルナの前に立ち、縛られた彼女の目を見た。


「ルナさん、怖がらないで。私はゼフィール・クロムウェルの妻、セシリアです。私たちはあなたを助けに来ました!」


ルナは私を見て、微かに口を開いた。


「あ……あなたは、あの……噂の……悪女侯爵夫人」


「ええ、その悪女ですわ!」


私は頷いた。


「教えて、ルナさん。この紋章と儀式は、あなたの意思で進めているのですか? アルベール殿下に、あなたの癒やしの力を捧げたいのですか?」


ルナは震えながら、首を横に振った。


「いいえ……私は、誰も傷つけたくない。この力は、誰かに譲るものではなく、ただ守るためのもの……」


私はルナの言葉で、全てを理解した。"聖女の血"の力は、譲渡するものではない。自発的な献身で、竜の血の狂気を鎮めるためのものなのだ。


「なるほど!ヴァレリウス枢機卿!あなたの儀式は、根本的に間違っている!」


私は高らかに叫んだ。


「巫女の力は、誰かの強欲のために使われるものではない!強制された儀式では、巫女の力は暴走し、力を奪おうとしたアルベール殿下を、逆に滅ぼすでしょう!」


私の言葉は、詠唱を続ける枢機卿と、力を得ようと興奮していたアルベールの顔色を一変させた。


「戯言を!」


枢機卿が叫ぶ。


「戯言ではありませんわ!」


私は続けた。


「儀式に必要なのは、巫女の心からの愛と献身です!アルベール殿下は、ルナさんの心を、恐怖で縛った。そんな状態で得た力は、アルベール殿下の呪いになるでしょう!」


私の"悪女の知恵"による核心を突いた分析が、枢機卿の計画を崩壊させるのだ。


ルナの体から発せられていた光が、黒く不吉な色に変わりはじめている。


「これは……!何たることだ!」


枢機卿が慌てて詠唱を止める。


儀式が失敗したことを悟ったアルベールは、逆上し、縛られたルナに飛びかかった。


「おのれ!裏切り者め!私に力を捧げろ!」


「アルベール!貴様の手は、ルナに触れさせない!」


ゼフィールは、私とルナを守るため、全力を込めて黒の剣を振り下ろした。その一撃は、祭壇の石畳をさらに深く砕き、アルベールとゼフィールの間に、巨大な亀裂を生じさせた。


そして、その瞬間、私の胸にある黒いペンダントが激しく脈動した。ゼフィールの竜の血の力が、私を通じて、ルナの巫女の力に、共鳴し始めたのだ。


「ゼフィール!巫女の力を奪うのではない、あなたの愛を、彼女の心にぶつけてください!」

(第19話・了)

(次話予告:【真の聖女】悪女の夫への愛が、竜騎士の呪いを浄化する!)

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