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ブラッドアンドハント  作者: アルミさん
8/9

原点にして

「またか…」

刃が抜けると同時に肉がぬるりと再生を始める。

裂け目が撫でられるようにふさがる。

勝樹は一瞬の焦りで呼吸が乱れた。

再生速度は少しだけ遅くなっていたが、それでも十分速い。

前と同じパターンならば、ここであせって致命を狙い再び手痛い反撃をもらう。

(焦るな)

三度の死で学んだのは「慎重さ」だ。

無理に突っ込めば、また同じ結末を迎える。

だから、相手の再生を削ぐように、何度も浅く深く、筋肉をえぐるように槍を入れる。

血が飛び散り、床が暗く染まる。

(焦るな)

自分に何度も言い聞かせる。

ゴブリンは怒声を上げ、体を地面に擦りつけるようにして傷をかばい、振り返る。

赤い目が血走り、獣のように爪を立てる。

だが一歩一歩、その歩幅が小さくなってゆく。

勝樹はその変化を目で追い、さらに槍に力を込めた。

相手の左脚の付け根を狙い、深く突き刺す。

今度は素早く、刃先を押し込みながら体を回転させ、股関節を粉砕するように回す。鈍い破砕音がしたように思えた。

ゴブリンは大きく体を崩し、右手の棍棒が床に叩きつけられた。

(効いてる……効いてるんだ)

胸の奥で、小さな歓びが芽生えた。

歓びはすぐに恐怖に変わる。

勝樹が油断した瞬間、ゴブリンは再び起き上がり、目に狂気を宿した。

まるで最後の力を振り絞るかのように、棍棒を掴んで振り回した。

反応できなかったが、こん棒は鼻頭をこする。

残った脚で跳ね、勝樹は右の脛を蹴られ、衝撃が膝をすり抜けて骨にまで突き刺さるような痛みが走った。

バランスを崩し、地面に膝をついた。

ゴブリンは再びこん棒を横に振り、頬に直撃。

血の味が口に広がり、視界が揺れ、白く塗りつぶされた。

「くっ……!」

(立て)

そう自分に言い聞かせながら、勝樹は最後の力を振り絞り立ち上がる。

槍を手に、グッと腰を入れて、肩から腹へと大きく突き刺す。

刃が深く入り、骨にぶつかる感触が全身に伝わった。

ゴブリンの叫びが、先ほどとは違う、鋭く切り裂かれたような音で広間に鳴り響く。

槍を構え直し警戒する。

再生はまだ始まらない。

ゆっくり近づき喉元を突き刺す。

(まだだ)

もっと命に直結する場所に突き刺す。

確実に刃を押し込む。

ゴブリンの両の足がゆっくりと力を失い、体が床に沈む。

「……し、死んだのか?」

耳元で、自分の心臓の鼓動だけが鳴る。

長く、鋭く、しかし生きているという確証の音。

勝樹の手から槍が抜け石床に音を立てて落ちた。

足から崩れ落ちるように座り込む。

両手と膝が震える。

一度口の中にある血を吐き出す。

直ぐに血が口の中に広がる。

だが、確かに彼は生きていた。

勝樹は荒い息を整えながらようやく、震える声を漏らした。

「……倒した…」

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