変わった世界
世界に始めて魔物が現れて1年が経った。
勝樹は両手を合わせる。
そこには二枚の写真——両親の笑顔が並んでいた。
自衛隊が来てから三か月、治療と避難で地元へはすぐ戻れなかった。
代償を負い時間を巻き戻してもらい、優斗も綾も助かった一方で両親は帰らなかった。
何度も謝った。
何度も。
街のテレビが世界各地の被害を伝え、国会の議論、自衛隊や猟友会の法改正、自衛隊や警察の疲弊がニュースを占める。
魔物襲来は日本だけではなく世界中同時多発的に起こったらしい。
その被害は甚大とニュースになっていた。
軍隊も警察も自国の端から端まで現状の人員、装備弾薬では守り切ることができないからだ。
それにより魔物専門の民間によるハンター協会まで創立された。
身近なことで変わったことは、通っていた大学は廃校となりこの1年で勝樹は猟銃免許を取得した事。
両親の葬式のときに久しぶりにあった叔父さんの山田直哉は町工場経営をしており先の魔物襲来により従業員を失ってしまった事で、勝樹は事務員として町工場で働いていること。
古城にあった本を読みあさり、錬金術を学んでいること。
「叔父さん少し出かけてきます。」
電子タバコをふかして答えてくれる。
「あぁ気をつけてな。」
軽トラを走らせる。
目的はなく気晴らしだ。
まだ、世間ではあまり知られていないが神によってスキルや加護を得られた人がいる。
綾や優斗がそうだ。
だが、勝樹には何もない。
そして、錬金術も行き詰まっていた。
スキル加護が無いということは魔力が無いということらしい。
魔力が無ければ本格的な錬金術が出来ない。
ソレだけではない。
ゲーム内の古城には今まで集めた強力な装備品があったがそう言った物は何も無く、倉庫には朽ち果てたミイラが椅子に座っていて、魔石や鉱石、骨や爪みたいなものが転がっているだけだった。
猟銃だけで魔物とやり合わなければならない。
お昼時になりショッピングモールのフードコートでバーガーを食べる。
「おやー?先輩じゃないですか?」
霧島レイナが声をかけてきた。
田舎は狭いのでこんな事は珍しくはない。
「大学は廃校になったから先輩ではないな。」
「そうでした。勝樹さん、悩み事ですか?」
勝樹の隣に座る。
「まぁな。」
「どういったことですか?」
悩みを話しても解決しないだろうなと思いつつ触りだけを話すことにした。
「うーん。あるエネルギーを使いたいんだけどそのエネルギーが未知でしかも俺はソレを持ってないから困ってるんだ。」
「それなら考え方を変えたらどうですか?勝樹さんは電気を発することも操ることも出来ないけどスマホ使ってますよね?充電して。…個人が使う必要は無いんじゃありません?必要な物を必要な所に流す。後は方法です。何処かでそのエネルギーを調達して、流す回路を造る。まぁ私はそんな知識無いんで素人の考えです。」
勝樹はしばらく黙り込み考え始めた。
「バーガー冷めちゃいますよ?あっ!ポテト少しもらいますね。」
ポテトを半分くらい食べた後、再びレイナは口を開いた。
「そういえば、優斗さんも綾さんも魔法みたいなもの使ってましたね。魔法といえばこんなのもあり得そうですね?血は命の象徴だって。呪いとか?不思議な事が起きるとか、まぁ迷信ですけどそれでは私はこれで失礼します。」
レイナは会釈をしてから何処かへと行ってしまった。
勝樹は適当に「あぁ、また」と返事をしたが、頭の中にはエネルギー、魔力の事で一杯になっていた。
「魔力が使えないなら他から持ってくる。血は命の象徴…」
ブツブツと独り言をつぶやくその姿は不審者そのもので数人に変な目で見られた。
掌に鋭い痛みが走り現実へと無理やり引き戻された。
慌てて掌を見ると赤い模様が、浮かび上がる。
勝樹はため息をつきながらポケットの中に手を突っ込み万年筆を取り出す。
「わかりました。もう少し待っていてください。」
万年筆に声を小さくかけた。
この万年筆は呪いのアイテム。
代償を負ったあの日から、何度も捨てたがポケットの中に戻って来る。
見た目は万年筆だがキャップを取ると干からびた指が入っていて、鋭く尖った爪で刺すと血を抜き取る。
しかし一定期間、血を提供しないと勝樹に痛みが走り、最終的には勝樹の血を全て抜きとると言う代物だ。




