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ブラッドアンドハント  作者: アルミさん
31/33

代償

綾は目を開けた。

聖域での一週間が身体に刻まれているはずなのに、目の前には最後に見た体育館の光景がそのまま広がる。

時間はほとんど進んでいない。

目眩で視界が歪む。

視界の端が波打ち、耳鳴りが遠くで鳴る。

立ち上がろうとした足がふらつき、綾は一瞬、膝をついた。

身体には温かな光が纏い始める。

彼女は無意識に指を額にあて、呟くように言った。

「聖剣よ。」

光輝く剣が彼女の手に現れる。

背中から翼が現れ、残像を残しゴブリン、魔犬が斬られ光に変わる。

翼から放たれる風は傷と疲労を癒す。

翼から放たれる光は皆に力を与えた。

勝樹は目を開きある1点を見つめた。

「マヤが、綾を選ぼうとしていた。」

胸の奥に冷たいものが落ちる。

綾は宙を舞い力を与え、その機動力を活かして刃を振るう。

何を思ったか、彼女は体育館の外に出て戦い始めた。

「ホーリーランス」

呟く。

左手に光の槍が現れた。

彼女は、それを魔物の群れめがけ投げる。

着弾すると眩い光が照らし、数十の魔物を光の粒子へと変えてしまう。

今まで空を支配していた夜鴉は綾の光に引かれるように集まり、綾を攻撃。

「エンドリ!」

彼女の身体から青白い電気が放電し、夜鴉から夜鴉へと連鎖して次々に撃ち落としていく。

その電気を帯びている彼女の速さが一段と速くなる。

だがその瞬間、綾は全身を焼き尽くすような激痛に襲われた。

視界が揺れ、赤く滲む。

まだ使いこなせていない。

脂汗を流しながら戦う。

疲労感が急激に襲う。

それでもと歯を食いしばる。

彼女の強さ、彼女が発する光が皆を奮い立たせ士気を高めていく。

それを勝樹は複雑な気持ちで眺めていた。

しかし、ここは戦場だ。

呆けて眺めている時間は無い。

体育館の壁が突き破られ、破片が飛ぶ。

そのすぐ近くに勝樹はいた。

大量の破片は勝樹を幾度も襲う。

全身の痛み。

何が起こったのか。

左太ももと、右肩を木片が貫いていた。

そして壁を破った魔物はグラーヴだった。

前回、優斗を殺した張本人。

「こんな所で。」

床を這いずりながらグラーヴから離れる。

「先輩、痛そうですね。」

見上げると、槍を持った霧島レイナが居た。

彼女の声は冷たくもどこか無邪気だ。

「何やってるんだ!逃げろ!」

「逃げる必要はありません。大丈夫ですよ。」

瓶を取り出す。

その中には緑色の液体が入っていた。

「逃げろ!はやっ…」

無理やり口の中に瓶を押し込まれ中の液体を飲まされた。

更にレイナは無理やり勝樹に刺さっている木片を引き抜く。

激痛。

勝樹は大声を上げてしまう。

その間もグラーヴはゆっくりと近づいてくる。

「優斗せんぱ〜い。早くしないと勝樹先輩が死んじゃいますよ!」

その言葉に反応した優斗は振り向く。

レイナは手に持つ槍を優斗に投げ、グラーヴを指差した。

「アイツを倒してください。」

「勝樹!ハンタービジョン!ホーミングショット!」

受け取った槍と、包丁やナイフなどを投げまくる。

投擲物は不規則な軌道を描きグラーヴへと突き刺さり、槍は心臓を貫く。

グラーヴは二度、三度と痙攣して崩れ落ちる。

優斗は激しい頭痛に襲われた。

「大丈夫か?」

頭痛を抑えながら優斗は勝樹に近く。

何故急に頭痛がしたのか分からない。

疲れで身体が悲鳴をあげているのか、あるいはこの力のせいなのか。

激痛で勝樹は答えられない。

「私が背負いますので大丈夫ですよ。」

勝樹を背負い、戦線から離れる。

負傷者が集まる場所で、レイナは勝樹をゆっくりと降ろした。

「いやー危なかったですね先輩。少し休んでいてください。私はこれで。」

何を言っている。

何処かに去っていくレイナの背中を見送った後、自分の体を見ると気のせいか傷が小さくなっている。

「勝樹!大丈夫か?」

傷を見て表情が曇る。

優斗が先ほど投げた槍を勝樹に手渡す。

何処かで見たような槍。

「直にヒーラー呼んでくるよ。」

「大丈夫だよ。」

外から小さな破裂音が何度も聞こえた。

何が起きたのか確認しようとした時、ある言葉が聞こえた。

「自衛隊が来た!助かったぞ!」


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