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ブラッドアンドハント  作者: アルミさん
18/33

日常?

冬の空気がまだ透き通っている朝、大学の並木道は枝に張り付いた雪で薄く白く縁取られていた。

勝樹は厚手のパーカーにフードを深く被り、足早にキャンパス内を目指す。

キャンパスに着くと、綾はすでに構内のベンチに座っていた。

ダウンの襟を立て、手に持った保温マグから湯気がふわりと立つ。

彼女の髪は冬の光を受けて淡く輝き、通り過ぎる学生たちがちらりと視線を落とす。

勝樹の胸はいつも通り少しだけ早くなるが、彼は何食わぬ顔で近づき、壊れかけのイヤホンのことや次のゼミの資料のことなど、つまらない話題から会話を始めた。

「最近寝れてないの?顔酷いよ?ゲームのやりすぎは良くないよ?」

綾が訊く。

「あー、まぁ。最近寝つきが悪くて。」

講義は午後まで続いた。工学棟の内部は乾いた空気で満ち、暖房のせいで窓には薄い結露が生まれる。

計算の列と設計図の注釈が黒板に広がり、教授の声が淡々と教室を満たす。

綾はノートに丁寧な字を書く。

勝樹はその横で、設計の一部を自分なりに簡略化しながら、綾に小さな視線で確認を求める。彼女はそれに軽く頷き、二人だけのやりとり。

昼は学食で雑に済ませる。

窓際の席に座ると、外では生徒たちの一部が雪玉を投げ合っていた。

綾は食べながら、来週のサークルの忘年会の話題をする。

綾は毎年友人たちの調整役をするタイプだ。

勝樹はそれを聞きながら、どうして自分はこんなにも手際が悪いのかと思う一方で、やはり彼女は優秀だと思う。

午後のゼミは少人数で、テーマは「実験データの可視化」。

綾が発表に立ち、話し方は穏やかだが力強く聞く者を自然に引き込む。

勝樹は彼女の説明を聞きながら、傍らのラップトップでメモを取りつつ、時折小さな修正を書き加える。

夕方、図書館に寄る。

冬の入り口にかかる薄暗い図書館は静けさで満たされ、ページをめくる音さえ雑音に聞こえる。

勝樹は参考資料を探し、綾は彼の隣で静かに本を閉じる。

外ではもう日が落ち始め、イルミネーションが校門の並木を縁取り始める。

帰り道、二人は自然と歩幅を合わせ、商店街の小さなカフェに立ち寄る。

カフェの中は暖かく、コーヒーの香りが冬の冷たさを溶かす。

「来週は試験だね」

彼女の声にはわずかな緊張が混じる。

勝樹は「そうだね」とだけ答え、苦笑いを浮かべる。

夜道を歩くころ、雪がまた静かに降り始めた。

街灯に照らされた雪片が淡く輝き、世界が少しだけ柔らかくなった気がする。

綾の家の前で別れる時、綾はふと立ち止まる。

「ゲームばかりしてないで勉強しなよ?」

「わかったよ。」

終わったんだ。

ヤマはあれから出てこない。

部屋にも扉は現れなかった。


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