日常?
勝樹は少し上機嫌だった。
まだ若い彼は食欲旺盛。
それを今日はイノシシの「肉」で満たした。
何時もより沢山食べても、家族で分け合っても余った。
満腹感に満たされ自室のドアを開けた。
真冬なのだから当たり前だが寒い。
しかし勝樹の寒さは別だった。
自室に入るために開けたドアは、古城の謁見の間へと続いていた。
後ろを振り向くと現世への扉はない。
何時もと変わらず気だるそうに玉座に座り頬杖をついているヤマ。
魔法陣の真ん中に槍が一本置いてある。
「まだ、日にち残ってるよね?」
その問いにヤマは答えない。
気だるそうに細目で勝樹を眺めているだけ。
沈黙。
どうやら帰す気は無さそうだ。
何を思い考えているのか、表情からは全く読み取れない。
分かるのは、あの魔法陣の中に入れば地獄のような痛み、苦痛が待っていると言うことだけ。
そして、ヤマが少しでも指を動かすと。
勝樹の手には槍を持たされ、紫色の肌をしたゴブリン2体の元へ送り込まれた。
数こそ少ないが、その2体は粗暴だが全身に鎧を着ており、手には剣が握られていた。
彼らの目は狡猾な獣にそっくりだ。
勝樹は息を吸い、槍の穂先をわずかに上げる。
夜のわずかな光が、刃の縁を帯びる。
2体のゴブリンが動き、左右から二体が襲いかかる。
一匹のゴブリンが剣を振り下ろす。
勝樹の反応は遅くは無かった。
彼は横に踏み込み、槍の柄を返して受け止める。
叩く鈍い音が響く。
衝撃の波が腕を伝い、手に伝う。
衝撃を受け流しながら流れる様に反撃を試みた。
柄を捻り、真上へと槍を振り払うはずだった。
槍が真っ二つに折れた。
「え?」
彼は驚愕と寒気ですくみ、片手で残る柄を握り締めたまま膝を折る。
受け流しに使った力が逆流するように返ってきて、剣が胸の奥へと貫く。
背後から2匹のゴブリンがトドメを刺す。
何かが決定的に狂っている。
謁見の間へと戻された。
冷や汗が滝のように流れ出る。
ゆっくりとヤマを見る。
いや、睨みつけた。
槍で受け流した感触。
あの程度で槍が折れるわけがない。
経験則で確証はない。
しかし勝樹は怒りに任せて槍をヤマに目掛けて投げる。
槍は彼女に到達することなく、消える。
「それが貴様の選択か。」
勝樹の足元に魔法陣が浮かび、転送された。
身構える勝樹だったが転送先は自室だった。




