原点にして
絶望し、叫んだ。
「2体は無理だろ!なんなんだよ!」
再生するゴブリン1体倒すだけでも何回も死んでるんだ。
武器を持ってなくても2体同時に相手にしなくてはならない。
「むりなの?」
ヤマは相変わらず玉座でだるそうに頬杖をついて勝樹を見下ろす。
「無理に決まってるだろ!」
「わかったわ、難易度を変えてあげる。2体が無理なら3体はどう?」
勝樹は混乱した。
何を言っているんだ。
あいつは勝樹の設定したヤマなのか。
ヤマをみる目が、もはや得体のしれない化け物を見ている目になる。
「作戦会議は終わった?」
彼女の人差し指が光りながら動く。
また転移だ。
「今考えてる!」
しばらくの静寂。
何も思い浮かばない。
無表情で見下ろしながらヤマはつぶやく。
「同じ事をして、同じ間違いをする。」
「何が言いたいんだ!」
槍を彼女に向けるがピクリとも動かない。
脅威ではないと判断しているのだろう。
怒りで我を忘れ、槍を思わず向けたが彼女に襲いかかることはできなかった。
「槍は先端だけの武器じゃない。柄は鈍器になるし、重みもある。骨を折ることも、撲殺することも出来る。全てが致命に至る武器。時には足を使ってもいい。特に今回はゴブリン、小僧がその気で蹴ればある程度は飛ばせるかもね。先端を刺したら直ぐに抜いてばかり、テコの原理を使えば体勢を崩すことも、そのまま押し倒すことも出来る。ゴブリンはずる賢くて群れで動く。片方が脅かしスキを作り、もう片方が油断した瞬間を突く。なのに小僧の動きは素直だ。時には嘘を織り交ぜてみたら?相手の動きを制したほうが勝つ。簡単でしょ?」
人差し指を動かし光る。
転移魔法が発動した。
「力があるものだけが正面から戦う権利を持つ。だけど小僧は違う。だから、人は武器を開発し、重火器を手に入れ、毒薬を使う。私はそんな人間たちをみて思ったのよ。卑怯とは何も努力せず、産み出さず、不平不満を言うことしかできない者のためにある。そして覇道とは考えられること全てを行い、手に入れること。全てを使って戦いなさい。」
紫がかった肌、赤い眼。
再生する異常なゴブリンが二匹。
武器は持っていないが、殺す事に一切の躊躇いがない獣。
勝樹はゆっくりと右足を一歩引く。
重心を低くし、腰を落とす。
一匹のゴブリンが走り出した。
もう一匹のゴブリンを視界から外そうとしているのだろう。
勝樹も意を決し動き出した。
後出しじゃんけんだ。
相手の動きをみて動く。
飛びかかるのをみて真正面で受け止めないで斜めにすれ違うように身体ごと回転して刃先を低く滑らせて相手の腿の外側を深くえぐる。
腿を深くえぐられ着地が上手くできず転ぶ。
再生する。
追撃をするために倒れたゴブリンに走り出す。
もう一匹のゴブリンはこの時を狙ってるはず。
穂先の方を握り、僅かに視界を動かしこの隙を狙ってるゴブリンを探し出す。
僅かにゴブリンの体の一部が視界内に入ったのを見逃さず、勢いよく柄の部分を振り回す。
ゴブリンの脇腹をとらえた。
重く鈍い振動が手に伝わる。
ゴブリンは思った以上に重い。
振り抜かなければ。
「うりゃ〜!」
ゴブリンを吹き飛ばす。
余裕の無い勝樹は何処に吹き飛ばしたか確認せずに、手から槍を滑らせるように持ち替え、倒れているゴブリンにめがけて突き刺す。
腿はこの間に再生されてはいたが避けることは出来なかった用で腹に深々と突き刺さった。
抜かない。
突き刺した勢いを殺さずゴブリンを上に持ち上げる。
バタバタと暴れるゴブリンをほぼ真上まで上げると、今度は一気に引き抜く。
ゴブリンは重力に従い地面に地面に叩きつけられる。
勝樹はうつぶせに落ちたゴブリンを体重を乗せて踏みつけ、肩甲骨を槍で突き刺した。
自分の体重と、肩甲骨を貫かれた状態ではさすがのゴブリンも勝樹の抑えを解く事が出来ない。
肩で息をしながら吹き飛ばしたゴブリンを探す。
すでに立ち上がり、今にも走り出しそうだ。
槍は抜かず傷口を広げるように槍を動かす。
そのたびに悲鳴を上げ、口から血を吐き出す。
いくら再生出来たとしても肺に血が溜まれば窒息も見えてくる。
もう一匹のコブリンから視線を離さず、いつ来ても反応できるように注意しながら、槍は抜かずに再生できないように動かす。
ゴブリンは動かない。
いや、動けなかった。
今の状況だけで言うなら勝樹に分がある。
動かなければ、肺に血液が溜まり窒息死。
動けば迎撃される。
威嚇するように低く唸る。
焦っているのか勝樹には分からないが、ゴブリンに選択肢を投げた。
助けるのか、動かないのか。
こいつらの知能がどれくらいあるのか分からないが、武器を使う知能はあるのだから。
槍をさらに強く動かす。
ボコボコと音が聞こえる。
ゴブリンは動いた。
噛み千切ってやると、言わんばかりに。
身体を引き裂くように槍を抜き、構える。
よく見ろ。
槍は突く物。
勝樹は薙ぎ祓いを選択した。
ゴブリンは飛び上がり血塗れの刃が空を裂く。
そのまま腕に噛み付いた。
熱湯をかけられたように熱い。
勝樹は自分の身体ごと倒れ込み押さえつける。
脂汗を滝のように流し、腕には牙が深々と突き刺さり血が流れ出ている。
「離すなよ!」
噛まれていない腕には力強く槍が握り絞められ、ゴブリンの喉元から頭に向け槍を差し込む。
深々と差し込み気道を防ぐ。
しばらくのうちゴブリンは息絶える。
もう一匹は。
傷口は、再生できていたが息苦しそうに床に伏せっている。
痛みに慣れ始めて来ているのだろうか。
腕を強引に牙から外し残った腕で脇腹を突き刺し、強引に仰向けにしてから喉を突き刺す。
引き抜かず先の様に気道を防ぐ。
腕の痛みがゆっくりと消えていく。




