過ぎ去りし栄光
腰まで伸びた白銀の髪の毛。
整った顔に右目が青、左目が赤のオッドアイ。
身長140センチほどの少女が火の粉が舞い、至る所で炎が立ち上っている街でただ一人、天をみあげていた。
赤黒い空から翼を羽ばたかせながらゆっくりと降り立つ黒曜石の様な鱗、赤く真紅の瞳。
伝説の厄災の象徴。
その竜からみたら人間は野球のボール位の大きさに見え、少女から見れば視界内に収まりきれない巨城。
少女を見ると威嚇するように咆哮。
大地は砕かれ、分厚い空気の壁が発生し周りにある建物はすべて吹き飛ばされる。
本来なら小さな少女は吹き飛ばされてもおかしくないにもかかわらず、ソレを合図に少女は竜に向かい走り出す。
竜の口から炎が漏れ始める。
それでも少女は走る速度を落とさない。
竜は巨大な口を開き火球を放つ。
火球は少女の手前で着弾し、強烈な光と熱、爆風がもはや瓦礫の街と化していた街が消失し巨大なクレーターが出来上がっており、半分位真っ赤に煮えたぎる溶岩が音を立てていた。
鎧袖一触。
灰すらのこさず消失なんともあっけない。
「月華美刃」
巨竜は瞳を大きく見開く。
背中全体に赤黒い無数の刃が豪雨の如く振り注ぐ。
少女は指を竜に向けると宙に紫色で半透明の槍を持った上半身だけの骸骨が5体現れ竜に向かい突撃。
「ダムド」
一体も欠けることなく五体の骸骨は深々と槍を突き刺す。
竜は少女めがけ空をきり裂く様に尻尾で薙ぎ払う。
「シャドウステップ」
竜の首筋、正確には竜の角が作り出した影から少女が生えてきた。
「月華美刃」
豪雨の如く赤黒い無数の刃が竜の首を切断しようと次々に切り込む。
竜の悲鳴は大気を震わる。
首に黄色い膜が出来上がる。
その正体は魔法障壁。
魔法攻撃に置いて絶大な防御力を誇る障壁。
本来は薄く透明なのだが、この竜は可視化できるほどの濃密で城壁の様な厚さを誇っていた。
しかし赤黒い無数の刃は弾かれる事も減衰することもなく、透過していく。
竜は羽根を羽ばたかせ、宙に浮き上がり飛び回り少女を引きはがす。
「フライ」
少女は魔法で空を飛びながらソレを目で追う。
竜は顔を少女にむけ、再び口から炎を漏らす。
今度は火球ではなく火炎放射を吐く。
「シャドウステップ」
火炎放射は虚しく天を焦がし、少女は再び竜の角の影から現れる。
少女の赤い瞳が光輝く。
「死で始まり、死で終わる、ゆえに死を与えん!ブラッドパプテマス。」
竜の全身から赤い液体が噴出。
噴出した赤い液体は丸い球体を形成し竜を包み込む。
少女の赤い瞳が発する光はさらに強く輝き、空と大地を紅く照らす。
光の強さに呼応するかの様に竜を包み込んだ赤い液体の球は巨大化していく。
そして、瞳の輝きが徐々に失われていくと同時に巨大な球体も収縮していき、竜を飲み込んだまま砂粒程に縮小。
少女の赤い瞳の光が完全に消失したと同時に砂粒程に圧縮された球体は破裂。
瞬時にすべてを赤黒く染め上げた。
少女は左目を押さえる。
紫色の炎が宙に現れた。
竜は魂になっても厄災を振りまく。
紫色の炎を周りに振りまき燃え上がらせていき周りを紫炎で囲むと竜の魂は鳴き声とともに大地へと落ちていく。
そして紫の光の塔が天に向かいそびえ立つ。
爆風もないただの光の柱。
光が収まると荒れ果て、破壊された大地だけがそこにあった。
5秒ほど静寂の後、少女の声が微かに聞こえる。
「逆流する水、反転する時、招かれざる過去の星の光をここに。時の逆転。」
青白い光が辺りを照らす。
光の中から少女が現れた。
青白い光が少女の青い右目から発生している。
少女の身体が完全に現れると右目の光はすぐに消失。
少女は再び天を見あげた。
赤黒い不気味な空は青空にかわり天気雨が降り虹が現れた。




