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今日も今日とて学校。
早く夏休みが来ないものか…。
中学生時には別にあっても無くても良かった長期休暇のありがたみを高校に入って感じた。
まだ休暇に入って無いのにだ。
昨日は少し帰り際にイベントがあったが平穏が1番だ。
だと言うのに、今日は朝からちょっとした出来事があった。
「ねぇ。 昨日何してたの?」
「ぇ…、昨日って何のことでしょうか…?」
「昨日の帰宅中のことだよ。 誰かに絡まれてなかった?」
俺が誰かと会話をしたのだ。しかも相手はあの早乙女さんだ。早乙女さんから何故か話かけてきた。
「あぁえーと、絡まれてましたね」
「あの時何したの?」
「いえ…、別に何もしてないです」
「本当に何もしてないの?」
「はい、してません…」
「そうだったの、ごめんね」
そう言っていつものグループに早乙女さんは戻って行った。
始めて話したけど昨日の見られてたのかな…。事実として昨日は何もしてないし。
それにしても近くで見ると本当に可愛いな。あんな至近距離に近づくのは最初で最後だろう。眼福でした。
「どうしたんだよ。あんなド陰キャに話かけて。 なんかされたのか?」
「ううん、何でもないんだ」
「そうかよ。 なんかあったとしたら俺があの陰キャをぶちのめしてやったのによ! ギャハハハ!」
やっぱり黒田、アイツはクソだ。本当にいつもこんな感じでブレないな。早乙女さん相手だといつにも増してイキり散らしてる。
そして今日の帰りの時間になった。
今日は帰りに寄らないと行けない所があるからさっさと帰ろう。
早乙女さんと話をするという奇跡が起こったが今から考えれば幻覚だったかな。
「帰りのHRはじめるぞ。来週から1年生だけ入学後ってことで遅めの中間試験が始まるからちゃんと勉強しとけよ〜」
「テストとかマジ最悪だわ! まあ成績もいい俺からしたら屁でも無いがな笑」
「俺は何でこのクラスに入れたのか分からないから自信ねえよ~。篤マジ尊敬するわ〜」
テストの話を聞いた途端阿鼻叫喚するするクラスメイト達。そしてあいも変わらずイキりまくってる黒田。
うん、いつもの日常だな。
とはいえ俺にとってもテストは大事なものだ。
爺ちゃんとの約束の件があるからな。成績が悪いと地獄の生活に戻ってしまう。
「来週の月曜日から水曜日までで全教科の試験がある。今日は試験日程の発表だ」
貼り紙がされ試験の日程が発表される。初日は数Ⅰからか。まあ問題ない。
俺が1番苦手な英語は最終日か、嫌だな…。
「それでは日直号令だ」
そのまま日直が号令を行い解散になる。終わった瞬間皆テスト終了後に何処に遊びに行くとかの話をしてる…。
いいなぁ…。
テストもその後も憂鬱だが今日は行かねばならない所があるので早く帰らないとな。
駅に着いた俺は普段の家のある駅とは逆方面の電車に乗る。目的地はここから2時間くらいだ。
遠くて行きたくないな…。高校入学してからは週一回はこの生活をしている。
長い時間乗り換えも何回かして見慣れた駅へと降りる。この駅を見るたび帰ってきたって感じと嫌な気持ちの2つが入り乱れる。
「おう、凛久帰ってきたな。早く乗れ」
駅に車で迎えに来てくれたのは正真正銘の俺の爺ちゃんだ。
「どうだ最近の学校は。 少しは慣れてきたか?」
「まあ、ぼちぼちかな」
特に会話が盛り上がるわけでもなくたまに思いついたように喋りながら車に揺られ目的地に着いた。
車から降りると見慣れたサンドバッグが視界に写りテンションガタ落ちだ。
別に元からテンション一切上がって無かったわ。