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天仕の少女と魔人の少年(天女と魔年)、天仕の少年と人間の少女(天年と人女)の物語  作者: 説那


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天年と人女 後編 第十三話 不成立な笑顔

「アルフォンス・・。」

 彼女が青い瞳を私に向けた。

「フェリシア。気が付いたか?」

 私の姿を認めると、彼女は瞳を細めて笑った。

「ここは・・。」

「先ほど乱闘があったところとは別の部屋だ。危ない目に合わせてしまい、すまない。」


 彼女の髪に手を置いて、滑るように撫でる。彼女は気持ちよさそうに目を伏せた。

「アルフォンス。怪我は大丈夫なの?後、カミュスヤーナは無事?」

「怪我は応急処置を済ませた。カミュスヤーナは別の部屋の寝台で眠っている。」

「あの剣を向けてきた人は誰?それに貴方が天仕って・・。」

「順を追って説明するから、落ち着いて聞いてくれ。フェリシア。」


「まさか、貴方の命を分けてもらっているなんて。」

 私の長い話を聞いた後、フェリシアは大きく息を吐いた。

「いいのだ。私が決めたことだから。」

 私は寝台に上半身を起こしているフェリシアの頤に手を当てた。

 彼女の柔らかい唇に自分のそれを押し当てる。

「アルフォンス。どうしたの?」

 唇を話すと、彼女は私の顔を見て、困ったように笑った。


「もう、これが最後だから。」

「最後って。」

「すまない。フェリシア。もう私は君の側にはいられない。」

「どうして?」

 彼女はその青い目を見開く。私は彼女の髪を撫でながら、嚙んで含めるように、その理由を口にしていく。


「私は天仕だ。しかも、『与うるもの』の力を使ってしまった。何かしら、他の者に知られれば、君や私たちの子の命が危ない。この力を利用しようとする者が現れるかもしれない。それに、私は同種族の者からも命を狙われている。今回のようなことがまた起きないとも限らない。それに君たちを巻き込むわけにはいかない。」

「そんな・・。」

「もしかしたら、いつかまた一緒に暮らせるようになるかもしれない。でも、当分の間は無理だ。私は姿を隠す。周りの者には死んだか、行方知れずと答えるのだ。いいね?」

 彼女は、私の言葉を聞いて、その青い瞳をうるませた。


 私は泣き出した彼女の頭を胸に抱え込んだ。

「フェリシア。私は君のことを愛している。治療を始める前はとても曖昧な感情だったけれど、今は曇りなく心から君を好きだと言おう。君といる時間は、とても幸せだった。だから、本当は君とは・・離れたくない。。」

 若干、後半が湿った声になった。

 私の言葉を聞いて、フェリシアが弾かれたように顔を上げた。

「私も・・私もよ。アルフォンス。私も貴方のことを愛しているわ。貴方に抱きしめられると、とても安心できるの。とても満ち足りた気持ちになったわ。」


 私は彼女の言葉を聞いて、彼女が安心できるように何とか口の端を上げてみせた。

「フェリシア。君はこのような私に、はっきりとその思いを伝えてくれる。私はそんな君に何度も救われてきた。」

「アルフォンス。」

「君たちを側で見守ることは叶わなくなったが、私は、君たちをこれ以上危険な目には合わせたくないのだ。フェリシア。」

「私は、逆に貴方が心配なの。だって、貴方の危険は減らないのでしょう?」

「私一人なら、何とかなるだろう。それに君とその子が、ここで幸せにいて、いつか3人が一緒になれると思えば、私だってそうはやられない。これでも、騎士団長になるほどの剣の腕なのだから。」


 君も知っているだろう?と言葉を続ければ、彼女は口を噤んで頷いた。

「その日を夢見ることは許してくれ。」

「私も・・夢見ていいのかしら?」

「無論。その時が来たら、3人で日々をのんびりと過ごそう。君の体力も人並みには戻っているから、どこかに遊びに行くこともできるだろう。」

「私は・・海や広い草原が見てみたいわ。」

「どこにでも連れて行こう。きっと、この子もそれを喜んでくれるだろう。」

 私は彼女の大きくなったお腹に手を当て、軽く撫でた。


「だから、笑って別れよう。私は君の笑顔が好きだから。」

 会ってから常に私の目を引き付けてやまなかった彼女の笑顔を、目に焼き付けておきたかった。でも、私の言葉を受けて何とか笑おうとする彼女の顔は、痛ましくて、私は何といっていいか分からなくなり、黙って彼女を抱きしめた。

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