表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天仕の少女と魔人の少年(天女と魔年)、天仕の少年と人間の少女(天年と人女)の物語  作者: 説那


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/79

天年と人女 後編 第十話 加勢

「まったく、しぶとい!だが、いつまでも、そうやってはいられんぞ!」

 イレミアスが結界に対し、何度も剣を打ち込んでくる。

 その時、今まで眠ったままだったカミュスヤーナが、フェリシアの膝の上で身じろぎした。

「フェリシア様・・アルフォンス様?」

 上半身を起こすと、頭の上の私とフェリシアをその赤い瞳で見つめる。

「カミュスヤーナ。危ないから伏せていて。」

 フェリシアがカミュスヤーナに向かって囁く。


 カミュスヤーナは、頭の上で結界に対し、剣が何度も振り下ろされるのを見てとり、顔を青くさせた。そして、私の方を見て言った。

「アルフォンス様。このままだと死んじゃう?」

「そんなことは私がさせない。たとえ、私が犠牲になっても、君とフェリシアは私が守る。」

 私の言葉に、カミュスヤーナは大きく顔を歪めた。その赤い瞳に涙を滲ませる。彼は空中をきっと睨みつけると、同じ方角に声を張り上げた。

「アルフォンス様が死ぬなんて嫌だ。どうか助けて!マックス!」


 カミュスヤーナは助けを求めて叫んだ後、目をぎゅっと瞑った。

 そして、目を開くと、口の端を上げて、私を見た。

「もっと早く助けを求めればいいものを。」

「カミュスヤーナ・・?」

 纏う雰囲気が変わった彼を見て、私もフェリシアも目を瞬かせた。

 カミュスヤーナは、まずフェリシアの瞳をじっと見つめた。フェリシアはしばらくすると、ふっと意識を失って、私の方に倒れこんでくる。

「フェリシア!」

「眠らせただけだから、心配ない。」

 カミュスヤーナは、私に応えながら、自分の手首を縛っている縄を、炎を出して燃やし尽くした。


「まったく、彼女といい、そなたといい、なぜ命を狙われているのか。」

 カミュスヤーナは、やれやれといった様子で、頭を振った。自分の手首を動かし、問題ないか確認している。その様子は、命がかかっている今の状態に、そぐわずのんびりとしていた。

 気づくと、背中の後ろで剣が結界に当たる音がしなくなっていた。

 後ろを振り返ると、イレミアスが呆然としたように、こちらを見つめている。

「そなた・・一体何をした?」

 彼の眼は私ではなく、カミュスヤーナに向いていた。


「抵抗。」

 カミュスヤーナは自由になった手首を、プラプラと動かして、大きく息を吐いた。

「アルフォンス。この者は殺してしまっていいか?」

「はっ、殺すだと?できるものなら、してみろ。小童が。」

 カミュスヤーナの言葉を聞いて、イレミアスが口を挟む。

 カミュスヤーナは、弾けるようにその場から飛び上がり、イレミアスが持っていた剣を奪った。空中で剣を刃が下に向くように持ち替えると、そのままイレミアスに飛びかかる。

 剣の刃がイレミアスの首の中央に深々と刺さった。ダンという鈍い音と共に、イレミアスの身体は木の床に縫いとめられる。

 あまりに一瞬の出来事で、何が起こったのかよく分からなかった。


 カミュスヤーナは剣から手を放し、イレミアスの腹の上に乗った。

「口ほどにもない奴だ。アルフォンス。結界を解いていいぞ。」

 カミュスヤーナの言葉に、私は慌てて結界を解いた。

 腕の中で眠ったままのフェリシアの身体を、自分の膝に下ろした。

「イレミアスは死んだのか?」

「正確にはまだ死んでいない。でも、首と身体が繋がっていないから、間もなく死ぬだろう。」

「・・そなたは、何者だ?マクシミリアンか?」

 私の問いかけに、カミュスヤーナは面白そうに眉を上げた。


「記憶が戻ったのか?」

「記憶?いや、元々カミュスヤーナが、テオファーヌの子であるということに違和感があったのだ。カミュスヤーナはテオファーヌの色を受け継いでなかったし、顔立ちも似ていなかったから。どちらかといえば、そなたと姉との子であると考えると辻褄が合う。」

「なるほど。」

「先ほど、カミュスヤーナは『マックス』に助けを求めたであろう。マックスはマクシミリアンの愛称だ。」

「そう、私にはそなたらを助ける力があった。カミュスヤーナはそれが分かっていて、私に助けを求めた。だから、私がカミュスヤーナの身体を借りたのだ。一時的に。」


 カミュスヤーナは、イレミアスの身体から降りると、私に向かって問いかけてきた。

「この後どうするかを話し合おう。眠っている女はしばらく起きないから、寝台などに寝かせておいた方がいい。ちなみに・・。」

 カミュスヤーナは、イレミアスを指差した。

「この者は天仕か?」

「そうだが。」

 イレミアスは羽を収めてしまっているので、一見天仕かどうか判断がつかなかったのだろう。私は彼の問いかけに首肯した。


「じゃあ、何か刃物を貸してくれないか?後で処理したい。」

「・・長い間、その身体を借りていて大丈夫なのか?」

 中身は魔王マクシミリアンであるとはいえ、その身体はまだ5歳児のカミュスヤーナだ。何かしら負担があるだろうと思われた。

「カミュスヤーナの魂は眠っているし、元々私の子だから、それほど抵抗はない。多分影響も少ないだろう。」

「なら・・いいが。」

 私は、彼を見て大きく息を吐いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ