表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天仕の少女と魔人の少年(天女と魔年)、天仕の少年と人間の少女(天年と人女)の物語  作者: 説那


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/79

天年と人女 後編 第四話 赤い瞳の子

「では、フェリシア。行ってくる。カミュスヤーナをよろしく頼む。」

「はい。お気をつけて。」

「アルフォンス様。行ってらっしゃい。」

 家を出るアルフォンスを見送る私の腰辺りに、プラチナブロンドの髪、赤い瞳の幼子がしがみついたまま、アルフォンスに向かって声をかける。

 アルフォンスは、私と幼子に向かって、軽く頷くと、扉を開けて家を出て行った。


「カミュスヤーナ。本を読みましょうか?」

「はい。」

 彼は首肯すると、いつもの居室に向かって歩き出す。私は今日の予定を頭の中に思い浮かべながら、彼の後に続いた。


 カミュスヤーナは、私とアルフォンスの子ではなく、摂政役であるテオファーヌの子である。私が面倒を見ている経緯は少々長くなる。

 まず、私は16歳の誕生日を迎えると同時に、婚約者であるアルフォンスと婚姻した。

 そのため、私たちは同じ家に住むことになった。領主の館の近くにある家を賜い、そこに私と彼の両方が移ったのだ。


 領主の座は既に兄、エルキュールが引き継いでいた。

 領主の補佐に当たる摂政役には、兄が領主の座を引き継ぐと同時に、経験を積むために騎士になっていた兄の親友であるテオファーヌが就いた。

 そして、私の夫になったアルフォンスは、一介の騎士から騎士団長となった。

 彼は、騎士団長になってから、勤務が不規則で、自宅に帰ってくることが少ない。不寝番の時は詰所で仮眠をとることもある。私が寝ている時に帰ってきて、起きる前に家を出ることもある。ちなみに今日は遅番で、家を出たのは午後だった。


 一方、テオファーヌは、騎士であった時に、婚姻もし、子どももできた。しかし、テオファーヌの妻は出産後の肥立ちが悪く、亡くなった。

 テオファーヌは摂政役の仕事が忙しく、身近に女性もいなかった。

 その上、当のカミュスヤーナがなぜかアルフォンスを慕っており、しょっちゅうこの家に遊びに来るようになっていた。父親であるテオファーヌが、拗ねてしまうくらいに。

 でも、アルフォンスにも騎士団長の職があるので、家には日中はいない。

 だから、普段、家にいる私が面倒を見ているというわけだ。

 今日、テオファーヌは、朝早くに、カミュスヤーナをこちらに預け、摂政役の仕事をするため、領主の館に向かっている。

 居室には、背の低い椅子と大きな卓が配置されている。カミュスヤーナはそのうちの一つの椅子に腰かけると、卓に積み上げられている絵本を手に取り、開いて眺めだした。

 私は、カミュスヤーナの正面の椅子に座り、卓に置かれた縫物を手に取る。縫物をしつつ、カミュスヤーナの方をチラチラと眺める。


 カミュスヤーナは、父親のテオファーヌとまったく似ていない。親子なのにも関わらず。

 テオファーヌの亡くなった配偶者とも、私は顔を合わせたはずだ。ただ1回くらいしか会っていなかったので、それほど印象はないのだが。カミュスヤーナは母親にも似ていない。そして、髪の色も瞳の色も、両親の色を一つも引き継いでいない。

 それよりも彼はアルフォンスに似ている気がする。アルフォンスの色も引き継いでいないので、彼が父親ということもないのだが。

 そういえば、髪の色は、アルフォンスの姉であるリシテキア様と同じ色だな。と考えていると、彼はこちらを見てニッコリと笑った。


「フェリシア様。いつもアルフォンス様がいないと、寂しい?」

 彼は悪気なく聞いてきているが、私は少し心が痛くなる。

 婚姻したら一緒に暮らせるようになったものの、彼の仕事が忙しすぎて、一緒に過ごす時間は当初の予定よりかなり少なかった。

 正直寂しくて、何度も彼が家を出るのを引き留めそうになっている。

 それになかなか2人の子もできない。私が虚弱体質だったことに起因しているのかもしれないし、それほど一緒に寝ることができていないからかもしれない。


「寂しいわ。」

「ちゃんとアルフォンス様ご本人にそのことを伝えてる?」

 私がカミュスヤーナの方を見つめると、彼はだめだなぁというように苦笑した。4歳児とは思えない大人びた表情だ。

「ちゃんと、言葉を交わさないとだめだよ。何も言わずに分かり合えるなんてないよ。」

「・・カミュスヤーナは寂しくないの?」

 カミュスヤーナも普段父親には会えていない。ちゃんと家に帰ったら言葉を交わせているのだろうか?


「寂しくないよ。」

 カミュスヤーナは不思議そうに首を傾げた。

「でも、カミュスヤーナも普段お父様に会えていないでしょう?」

 彼は私の言葉に軽く頷いた。

「だけど、僕にはマックスがいるから大丈夫だよ。」

「マックス?」

「そう。僕の友だよ。」

 色々なことを教えてくれるんだ。と言って、彼は笑う。

 カミュスヤーナはまだ院に行ける歳でもないし、友達ができる機会などあるのだろうか?

 そうは思いつつも、彼の大人びた言動から、誰かの影響は受けているのではないかとも思っていたから、私はそのまま話を合わせることにした。


「マックスが言葉を交わさないとだめだと言っていたの?」

「マックスにも大切な人がいたんだって。でも、えーと、相手に甘えて言葉を尽くしてこなかったから、その人と離れないといけなくなったって。」

「・・・。」

 作り話にしては凝っている。本当にマックスというかなり年上の友達がいるのかもしれない。

「だから、僕が大きくなって結婚したら、妻にはちゃんと言葉を尽くしなさいって言われたの。」

「そうね。私もアルフォンスに寂しいって伝えてみるわ。」

 私が彼の頭を撫でると、彼はとても嬉しそうに、はにかんでみせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ