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天仕の少女と魔人の少年(天女と魔年)、天仕の少年と人間の少女(天年と人女)の物語  作者: 説那


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天女と魔年 後編 第二十話 報復

「リシテキア!」

 私が彼女たちの元に駆け付けた時には、彼女は腕の中にカミュスヤーナらしき白い布包みを抱えていて、天仕の男に向かって背中を向けていた。その背中にはざっくりと大きな傷がはしっていた。

 その男からカミュスヤーナを守るため、彼女が代わりに傷ついたように見えた。

 たぶん、装身具の結界も、彼女に向けられた攻撃ではなかったから、反応しなかったのだろう。私は自分の不甲斐なさに泣きたくなった。


 天仕の男は、頭に手を当てたまま私の方をゆっくりと振り返る。

 青い髪、黒い瞳。背中の大きな白い羽。手には剣を握りしめ、その剣からは血が滴っている。

「貴様。リシテキアに何をした。」

「・・そなたは何者だ?リシテキアの知り合いか?いや・・その赤い瞳。」

 男は顔をしかめながら頭を大きく振った後、私の方を、目を眇めて見やった。

「そうか。そなたがリシテキアの番か。」

「だから、なんだ。」


 男は自分の足元にいるリシテキアを見る。

「その手管で、この者を虜にしたのか?リシテキア。」

「なに?」

「マクシミリアン。耳を貸さないで。」

 リシテキアがかすれ声で、私に言う。

「それらは私たちが手取り足取り実地で教えたものではないか。」

「そうしないと、家族に手をかけるといったから。私が望んでしたわけではないわ。」

 男は跪くと、伏せているリシテキアの頤をつかんで、顔を上げさせる。


「まったく余計なことをする。せっかく命だけは助けてやろうと思ったものを。」

「リシテキアに触れるな。外道が。」

 私は男に向かって手を振った。男はリシテキアから吹っ飛び、横にあった大木に身体を叩きつけられる。

「ごほっ。」

 男は激しく咳をして、大木の根元に転がった。


 私はリシテキアの身体を抱き起こした。彼女は瞼を閉じていて、荒い息を吐いている。

 カミュスヤーナは彼女に抱えられていて、まったくの無傷だった。そして、また泣いてもいない。彼は私の顔を見ると、その小さな手を差し出して、笑いかけた。私はカミュスヤーナを彼女の腕の中から取り上げると、袂に入れていた白い布で更に身体を厚く巻いて自分の脇に置いた。


「貴様。何をする!」

 私に切りかかろうとした男を睨みつける。それだけで、男は動きを止めてその場に棒立ちになった。男は大きく目を見開き、その後屈辱的だと言わんばかりに顔を歪めた。

「貴様は何者だ?人間ではないな。」

「だからなんだ。小物が。リシテキアを害した罪は重い。その命で贖ってもらう。」

 私は威圧で奴の動きを牽制したまま、男の黒い瞳を見つめる。しばらくすると、男は私の瞳を呆けたように見つめて、動きを止めた。そして、そのままその場に膝をつく。


 リシテキアの様子を見たが、まだ閉じた瞼は開かない。多分意識が朦朧としているのだろう。私は彼女の瞼を覆うように片手を当てた。これから行うことを彼女にはあまり見てもらいたくなかった。

「私の言うことは聞こえているか?」

「はい。」

 男に問いかけると、相手は従順に応答した。

「私がさっき言ったことも覚えているな?」

「我が命で罪を贖えと。」


 私は口の端を上げて、男を見やる。

「貴様が手に持っているものはなんだ?」

 男は自分の持っている剣を目の前に持ってきて、茫然としたように眺める。

 正直、奴の記憶やその臓器は得ておきたい。だが、それよりも彼女を害した罪のほうが大きいことも確かだった。

「自害しろ。」

「承知いたしました。」

 男は私の言葉にためらいなく、剣を逆手に持ち、自分の首を貫いた。

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