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天仕の少女と魔人の少年(天女と魔年)、天仕の少年と人間の少女(天年と人女)の物語  作者: 説那


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天女と魔年 後編 第一話 思い

「姉様もお元気で。彼によろしくお伝えください。」

 彼はそう言って、私に対してわずかに口角を上げてみせた。

 相変わらず表情に乏しく、他人行儀な面が否めない。昔はもっと屈託なく笑う子だった。今の彼にしてしまったのには、私にも原因の一端がある。


 私は、天仕の住む地にいる時は、常に身の危険を感じて怯えていた。

 弟であるアルフォンスがいなければ、気軽に出歩くこともできなかった。だから、弟が一緒でない時は、家に閉じこもっているか、遠くに狩りに出かけていた。そして、私は狩りの途中で襲われて、魔人の住む地に墜落した。


 今となっては、そのおかげでマクシミリアンに出会えたのだから、私はもう気にしてはいないのだが、アルフォンスにとっては、かなり辛い出来事だったらしい。

 私を助けるために、剣の腕を磨き、脅かす存在である純血統種たちにも立ち向かい、必要な情報を引き出した。そして、魔人の住む地にまで、自分の命を顧みずに足を運んだ。事なかれ主義の両親には頼らずに、ただ一人で。


 私は、アルフォンスが、ここエステンダッシュ領で無事に過ごせるのか、少し不安だった。私には、マクシミリアンがいるし、彼の元に帰るという目的もある。彼の病を治す手段を見つけることは、残念ながらできなかったけれど、今、こうして家族を説得し、戻ることができる。


 でも、アルフォンスは、私を守るために常に周りを警戒していた。そのため、友も好きな人もいないようだったから、ここでも一人孤独に過ごしていくのではないのかと心配した。その上、私までいなくなってしまっていいのかと迷った。

 だが、院で彼は友人を得て、思い人も見つけられた。月一回の治療の時、彼女と一緒にいる時の弟の表情はとても柔らかだ。彼女となら、弟も幸せに過ごしていけるだろう。例え、私が側にいなくとも。


 私の目の前にいるアルフォンスは、その瞳に心配の色を浮かべる。これ以上ここにいても、私のできることは何もない。私はマクシミリアンの元に帰らなければ。マクシミリアンは・・生きていてくれているだろうか?

 金色の髪、赤い瞳。何度も私の頭や背中を撫でてくれた手や、抱きしめてくれた時の彼のぬくもり。彼のことを思わない日は一日だってなかった。


『君が戻ってくるというなら、私はその場所を守るために生きる。』


 あの言葉を彼が守ってくれていることを願って、私は弟に背を向け、転移陣の青い扉を開けた。

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