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天仕の少女と魔人の少年(天女と魔年)、天仕の少年と人間の少女(天年と人女)の物語  作者: 説那


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天年と人女 前編 第十三話 逢瀬

「これは、素晴らしいですね。」

 私の隣で、少女がその頬を紅潮させて、目の前の景色に見入っている。

 目の前には青い絨毯が広がっている。

 その名をフィラネモの丘という。

 フィラネモは青い小花をたくさん咲かせる花で、春に丘全体を覆うように咲く。


「エステンダッシュ領では有名だと聞いていたから、てっきり来たことがあると思っていたが。」

「私は身体が弱いので、あまり外出はさせてもらえてないのです。今回はアルフォンス様がご一緒してくださったので、許可が下りました。」

 ありがとうございます。と彼女は私に向かってニッコリと微笑んだ。

 フィラネモの丘の一角に大きな木がたっているので、その木陰に身を置き、美しい丘を眺めている。ずっと立っているのは彼女の体力的に難しいだろうと思ったので、屋外でも利用できる簡易椅子を木の横に設置していた。


「フェリシア。診察してもいいか?ちゃんとエルキュールの許可は得ている。」

「はい。どうぞ。」

 椅子に座った彼女の前に立って、彼女の肌に触れていく。

「なるほど。その外套は私を診察時に隠すように身につけていただいたのですね。」

 私が左手で軽く外套の端を広げているのを見て、彼女は言った。

「静かに。脈が測れない。」

 彼女は自分の口を片手で押さえた。診察の最後に指先から魔力を彼女に流し込むと、下から青い瞳が私を見つめた。


「あの、アルフォンス様。」

「なんだ。」

「この間倒れた時は、大変ご迷惑をおかけしました。そして、治療途中で体調を崩されたとお聞きしたのですが、大丈夫でしたか?」

「問題ない。一晩寝れば回復したから。」

 よかったと彼女は安堵したような笑顔を見せる。その笑顔に呼応するように、私も口角を上げてみせると、彼女は呆けたように私の顔を見つめた。

 動きが止まった彼女を不思議に思って、彼女の名を呼ぶ。


「フェリシア?」

 彼女はハッとして、瞼をぎゅっとつぶった。目を開いた後、私を見て目を細める。

「いえ、何でもないです。そういえば、私倒れて寝ていた時に不思議な夢を見たのです。」

「夢?」

「はい。最初私は雪の中を歩いているのです。雪の中なんて歩いたこともないのに、それが分かりました。とても寒くて。」

 魔力が減って、体温が異常に下がっていた時のことだろうか?


「しばらくすると、歌が聞こえてきたのです。音響室で聞いたあの歌です。歌声の主の元に私歩いて行ったのです。そしたら、その歌はアルフォンス様が歌っておられました。飛びながら。」

「飛びながら・・?」

「アルフォンス様の背中に白い大きな翼があって。」

 彼女の言葉に、私は目を見開いた。


「歌が終わると、私の元に舞い降りてきて、抱きしめてくださいました。それがとても温かくて。ね?不思議な夢でしょう?」

「白い大きな翼か。まるで天仕のようだ。」

「姿形はアルフォンス様そっくりでしたけど、夢の中で会話はしていないので、別人かもしれませんね。どちらにせよ夢のお話ですが。」

 変に夢の中の内容が真実を捕らえている。温かいと感じたのは、流した魔力で体温が戻ってきたせいかもしれない。そして・・天仕である私には実際翼がある。ただ、身体の中に収めてあるだけだ。


「そういえば、あの時何と言おうとされていたのですか?」

 フェリシアは小首を傾げて問いかけた。

「何の話だ?」

「素晴らしい歌への返礼の話です。結局、私は倒れてしまったので、返礼どころではなくなってしまいました。しかも、私はまたアルフォンス様に助けていただきましたので、簡単に返せるようなものではなくなってしまいましたね。」

「あれは・・君が元気になったら、でいい。」

「私はもう回復して、貴方様とお話ししていますよ。アルフォンス様。」

「根本的な解決になっていない。・・エルキュールから治療のことは聞いたか?」


 彼女は私に向かって頷いた。

「兄さまから聞きました。私のことを治してくださると。」

「・・・治療内容も?」

「はい。全て。」

「君はどうしたい?」

「・・私はこの虚弱な身体を治したいです。でも、アルフォンス様のご負担になりたくはありません。」

「負担ではない。」


「いいえ!」

 彼女は私の言葉を否定した。

「この治療は頻度もあり、しかも長期間になると聞きました。その間、私はアルフォンス様のことを縛り付けてしまうのです。しかも、この治療方法はアルフォンス様の意に沿うものではありませんよね?でも、他にできる人がないから、仕方なく行われるのでしょう?」

「・・・。」

 彼女は涙のにじんだ青い瞳を私に向けた。


「私は元々このように生まれついたのだ。と諦めはついていたのです。だから、もしアルフォンス様がこのような治療はしたくないのであれば、無理しなくてもいいのですよ。」

「私は・・。」

 私は身を軽くかがめて、彼女と視線を合わせる。

「君に生きていてほしいと思ったから、この治療を引き受けることにしたのだ。」

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