鷹愛づる姫 〜花嫁衣装は誰がため?〜
「おいで、ウィダルグ。ここよ!」
城の大門すぐ横の見張り塔。その屋上で丈夫なミトンをはめた左腕を水平に掲げる。
吸い込まれそうな蒼穹の彼方に視線を投げかけると、ピイィーーー……と、尾を引く鳴き声が聞こえた。
来た。彼だ。
雛の頃から世話をした鷹のウィダルグは、成鳥になってもどこか甘えん坊だ。あっという間にわたしを見つけ出す。
滑空。大きな翼でバサバサッと微調整。わずかな滞空のあと、瞬く間に彼の体重が腕へとのしかかる。
重みそのものは嫌いではない。
むしろ、いつも通りの脚の揃え方が几帳面で愛らしく、笑みが浮かんだ。
わたしを目標に降りたくせに、もう、こっちを見やしない。
わたしは彼の片脚に括り付けられた細い筒を外し、懐へと納める。所用は済んだとばかりにつやつやとして柔らかい羽毛に額を寄せ、安堵の息とともに目を瞑った。
「よしよし。お帰りなさい。いま、ご褒美をあげる」
「姫様。あとは我々が」
「ありがとう。でも、あなた方は忙しいでしょう? わたしは慣れてるから平気。このまま連れて行くわ。父上への報告も兼ねて」
「――は。畏まりました」
◆◇◆
我が国はいま、岐路に立たされている。
それは跡継ぎでもない末子の自分にもわかることだった。
渓谷の国ファーロウ。
昔、大国が自軍の将を厄介払いするためにあてがった僻地は、そのまま彼の人の末裔が治める領土となった。
開墾を経てある程度実りを得られるようになったころには、皮肉にも母国が滅んだ。谷向こうの帝国に攻め滅ぼされたのだ。
ファーロウ領は交通の要衝とは言い難く、当時は辺境で旨味もなかったため、帝国領への併呑を免れた。
ファーロウは初代領主だった将軍の名。
鷹のように素早く自軍を展開し、さまざまな戦術を駆使した。敵軍を撃破すれば他方へは深入りせず、占領下の民へも不当な搾取を行わず、風のように次なる戦地へと向かう名将だったらしい。
そのため、当家の紋は向かい合う鷹の意匠。左右対称に広げられた羽に特徴があり、中央には当時の母国から授けられたという四つの宝が描かれていた。
盾、剣、玉、それに――
「王女殿下。こちらでしたか」
「……ウィダルグ、何?」
ひんやりした石造りの歩廊をゆくと、背後から靴音。慇懃に声をかけられた。ゆるりと振り向く。
気難しそうな水色の瞳。性格そのままの無愛想さで寄せられた、いつもの眉根に苦笑する。腕に乗せた鷹の羽と同じ色の髪は切るのが面倒だからと長く伸ばし、背中で適当な三編みにしているのを知っていた。
人間のウィダルグは、つかつかと大股でこちらに歩み寄った。ちらりと同名の鷹を見る。
「こいつ、無事に戻ったんですね。王への報告はこれからでしょうか。立ち会っても?」
「……」
こ れ は。
言葉面をとれば丁寧に伺いを立てられているが、『ぜったい同席させてもらいます』――という、彼なりの強い意志が込められている。
わたしは肩をすくめた。
「いいわよ。でも、この子はさっき帰ったばかりなの。部屋で餌をあげないと…………あら。ありがとう」
ウィダルグは状況にふさわしく、マントの下に簡易鎧を身につけている。その腰のポーチを覗かせると中から携帯干し肉を取り出し、断りもなく鷹に差し出してしまった。
(配給の緊急事態用食料。あなたの分でしょうに……)
お礼の言葉とは裏腹に、じとりと睨めつける。
ちょっと溜飲を下したようにスッキリとした面持ちになった青年は、にこりと微笑んだ。
「どういたしまして。さ、参りましょう。王の間までお供を」
見張り塔から王の間までは、さほどややこしい路順ではない。兵は多く、空気はものものしかったが、みずからの鷹と宰相の息子を引き連れ、唇を引き結んで粛々と渡る末姫を止める者など居なかった。
ましてや、彼女は『当事者』の一人なのだ。
「姫……! よう来た。彼の者はなんと」
「挨拶も省かせていただいて恐縮ですわ、父上。わたしもまだ目を通しておりませんの。ここで読み上げても?」
「構わぬ」
では、と前置いて愛鷹を人間のウィダルグに託す。
彼は腰を折って鷹を預かると、恭しく身を引いた。
玉座の後ろの採光窓は円形のステンドグラスになっている。そこで彩色された日差しだけはうららかな謁見の間。
絨毯に落ちる影は五つ。気を揉んで立ったままの両親、宰相、それにわたしたちだけだった。
わたしは胸元から一本の筒を取り出し、かちりと留め具を外す。引き抜いた羊皮紙に刻まれた細かな文字を、細めた目ですばやく追った。
内容は、ある意味予想通り。
「“再三の降伏勧告に応えぬ、そなたの父君にはがっかりだ。古に降りし王家の尊い血筋。その姫を我が妃に迎えたいという気持ちは変わらぬ。まどろっこしいやり取りはこれで終わりだ。明後日の夜明け、貴国の砦門前に花嫁姿のそなたが居らねば、我が軍はただちに貴国に雪崩れ込むであろう。賢き判断を、と父君に伝えよ”。………………以上です」
「おお」
「何てこと」
「あの馬鹿。どうして、あんな男が帝位に」
「――ちっ」
父母と宰相、それに幼なじみでもあるウィダルグがそれぞれの心境を漏らす。品行方正を地でゆく宰相子息殿が舌打ちをしたとは、ちょっと驚いてしまったが。
わたしは、くるくると巻いた羊皮紙を、はい、と父に渡した。
「どうしましょう。嫁ぎます?」
「いやだめだ」
「なぜですか。戦など不毛です。どうせ、あいつの目当ては『ファーロウの金脈』よ。わたしへの執着なんか、単に攻め入る口実を見つけたいだけですもの」
「それでも、だ」
「父上」
すげない返事に、しゅん、と声が萎えた。
肩を落とすわたしの視界にウィダルグの白いマントが映る。
一歩、前へ出たのだ。
だから、今度はわたしが後ろで庇われるような形になる。少し、ムッとした。
「お言葉ですが陛下。ファリア様は儚いご容姿に反してとても強いかたです。正直、騎士団の誰より強い」
「…………知っておる」
「おまけに、幼いころから『谷の魔女』の手ほどきも受けておられる。毒殺はおろか、痺れ薬なども効きはしないでしょう」
「!? お待ちなさい。どうして姫が害される方向で話すの」
顔を青ざめさせた王妃が、やつれた表情でウィダルグを見る。
ウィダルグは声を落とし、つとめて柔らかく、国一番の貴婦人に紳士的に説明しようと試みた。
「畏れながら、私も姫も、帝位に就いた奴の気性を知り尽くしているからです。八年前、我々はあいつの亡命を受け入れました。びいびい泣いてばかりだったあいつが、十七になるまでの八年間です。我々は精一杯に庇護しました。その返礼がこれですか……! 馬鹿にしています。そう、奴は馬鹿なんです。あまつさえ、さんざん世話になった姫に懸想を」
「ウィダルグ。ウィー、論旨が外れたわ」
「失礼」
つんつん、と横からマントを引けば、呆気ないほどさっと気炎を鎮める。
――まったく、冷たいんだか、熱いんだか。
(昔はもっと素直だったのに。皇帝になんかなってしまった、『あの子』も)
いまも鮮やかに思い出せる。
気弱で泣き虫だった王家の養い子。
熾烈化した次期帝位争いから逃れ、流れ着いたのがファーロウだったという。
年端もいかない少年を追い出すような真似は、両親はできなかった。招き入れて食事と住む部屋を与え、教育を施した。自分たちの子どもと同じように扱っていたと思う。だからこそ『あの子』は、年の近いわたしとウィダルグについて回って。
懸想。
好きなのは。
わたしが、好きなのは……。
巣から落ちた鷹の雛を見つけたのは三人で、森にピクニックに行ったときだった。
もちろん、たくさんの騎士と侍女が一緒だった。
それでも、ちいさかった雛を助けたい、育てたいと言ってきかなかったわたしの味方になってくれたのは、あの子とウィダルグ、二人だけで――
「…………」
「王女様? いかがなさいました」
「いいえ、何も」
目を閉じ、ゆるく頭を振る。
思案げに問う宰相に否と答え、その場は退くことにした。
――――なのに。
「どうして、ばれちゃうのかしら」
「どうしてでしょうねぇ……」
深夜。
わたしは『谷の魔女』と呼ばれるお師匠様直伝の眠り香だの隠形術だのを駆使し、こっそり馬屋に来ていた。
愛馬に馬具を着け、しー、と口に指をあてての脱走劇。
それが幕開け早々に幕引きとなるだなんて、理不尽以外の何ものでもない。
わたし同様、すっかり旅支度のウィダルグは苦笑している。彼の肩には鷹のほうのウィダルグまで。裏切り者……!
口を尖らせて問う口調は、自然と拗ねた響きを帯びた。
「行き先、わかってるの?」
「守りの砦門前に布陣している帝国軍のキャンプでしょう? 帝国側の正式通達には『皇帝の花嫁を迎えに来た』『断り続ければ親征となるだろう』と、ありましたから。ならば、あの陣営のなかに奴がいると見るべきです。会いに行かれるつもりでしょう」
「だったら」
「お供しますよ」
「!! ウィー? なぜ」
今夜は新月。雲間の光は薄い、どこか夢のような星明かりが朧気に木々の輪郭を浮かび上がらせている。
掲げたランタンの灯火を受け、昼空よりもなお繊細な色合いの瞳がいたずらっぽく煌めいたのは、そのときだった。
「護衛です。どちらかといえば、あいつの」
「ああ、あの子、お勉強もきらいだったけど剣も苦手だったものね。……ふ、ふふふっ! いいわよ。ついて来ても」
ひらりと馬に跨る。
やさしく、賢い愛馬は嘶き一つあげずに主人を乗せた。
「供を許します」
「ありがたき幸せ」
格式張った礼を返すウィダルグも、既に馬上のひとだ。
鷹は、夜に飛ぶには適さない。
二騎は揃ってしずかに、やがて裏の隠し城門から街道へと抜けると一路、帝国軍が進駐する砦門前を目指した。
◆◇◆
「〜〜だからって! ちょっと反則すぎやしないか??? 君ら!!」
「あら。お声が大きくてよ、皇帝陛下。夜中ですわ。しずかになさって」
「兵は!! 兵はどうした! まさか、殺したのか? 全員??」
「そんなわけないじゃありませんか、陛下」
帝国軍の規模はそこそこの大きさだったが、将兵らと思わしき天幕群の最奥に、至尊の君が仮宿とするにふさわしい大天幕があった。とてもわかりやすかった。
チャキ、と剣を構え直したわたしは、仰向けに寝ていた新皇帝の喉笛に切っ先を向けた。
暴れられては厄介なので、念の為腹部に片足を乗せている。
妙な真似をすれば、まず、蛙がひしゃげたような声を出す羽目になるだろう。
はくはくと口を開け閉めする哀れな幼なじみに、淡々と質問する。
「さあ陛下。このわたしが、直々に乗り込んであげたのよ。素直になったら? どうしてこんなことを」
「さっ、再三手紙に書いただろう……! 君が好きだと」
「戯れ言を」
「!!!! ひぃぃっ!」
目を細め、若干の苛つきとともに剣先を肌すれすれまで近付けた。すると、横合いから理性の固まりじみた手が差し出された。
「だめですよ、王女。いきなり致命傷だなんて」
「そうね。ごめんなさい、わたしったら。ついうっかり」
うっかりで皇帝の天幕に忍び入り、あまつさえ脅しをかけてしまう。
その破天荒さに、ウィダルグは改めて嘆息した。
「――アラン。『ファリア』は? 君が持ち去った私の鷹だ」
「!」
ぐっ、と顔色を変えたアラン――新皇帝の視線が泳ぐ。口よりも能弁だった。
ウィダルグは涼しげに「そこか」と呟いた。
「あっ、ちょっと待って!!? あああ、やめて。俺のファリアが」
「誰があなたのよ」
「いてっ」
すかさず落とした拳骨に、成人男子となって久しいはずのアランが呻きながら頭頂部を押さえ、悶絶する。
わたしは、これ以上は必要ないと判断して剣を収めた。
「ファリア。良かった、こんなところに」
「ピイィッ」
「ピーーーー!」
荷物の積まれた一画に、不自然に黒布を掛けられた箱がある。人間のウィダルグが布を取り払うと豪奢な鳥籠が現れ、小ぶりな鷹――『ウィダルグ』の番にあたる雌の鷹、『ファリア』が捕らえられていた。
彼女は半年前、即位のためにファーロウを発ったアランがどさくさ紛れに盗みだした鷹だ。
最初は「彼女を返せ」と、こちらから鷹を飛ばした。それが、なぜこんなことになったのか。
「頭が痛いわ……」
「ううっ。ファリア。せめて鷹のほうだけでもと思ったのに」
「? 何それ」
きし、と、折りたたみ式らしい寝台が軋む。
肘をついて半身を起こしたアランは、うらめしそうに傍らのファリアを流し見た。
「だーかーら。言ってるじゃないか。君が好きだったって。なのに、君はあんな鷹狂いをずっと想ってるから」
「アランっ!? それは」
慌てて、あまり賢いとはいえない幼なじみの口を手で塞ごうとする。
ちょうど折り悪く、ぶじに鷹のファリアを助け出したウィダルグが、驚いた顔でこちらを凝視するのを見つけてしまった。
(いけない。聞かれた?)
どきどきと鼓動が速まり、勝手に頬が染まる。
アランは嬉しそうに、けれど刹那的な潔さでわたしの腕を掴み、一瞬だけ手のひらに口づけた。
「!!」
「アランッ!!!! 貴様!!」
「ほーら、一番の頑固者が素直になった」
「え?」
無駄のない動きで駆け寄ったウィダルグに、ばしっ! と腕ごと叩き払われたにも拘らずアランは清々しく笑っている。
「じゃあね二人とも。帰りも気をつけて。俺ができるのは、ここまでだから」
ひらひらと手を振り、そのまま出口の垂れ布を差し示す。
「君とともに居たかったのは本当だよ、ファリア。ありがとう。今まで」
「アラン……」
そうして不貞寝のように、ぼふんと上掛けを被ってしまった。おやすみ、とまで言われては煙に巻かれた面持ちで退出するしかなかった。
追い打ちのように複雑な表情のウィダルグが囁く。
「王女、そろそろ外の兵が」
「…………わかってる。いま、行きます」
天幕の外はしずか過ぎるほどで、魔女直伝の眠り香の凄まじさが伺い知れる。
耐性のない者が吸えば恐ろしいまぼろしの虜になるという『幻影香』を焚いても良かったけれど、不要の混乱も禍根も作りたくはなかった。彼の、真意が知りたかっただけから。
(真意)
東の空が明るみ始める。
暁の気配に、足音を消して急ぎ砦門に向かう。
眠りこけている番兵の脇を通り、わたしたちは再び、繋いでおいた馬に騎乗した。
―――が、記憶にある風景に差し掛かったとき、おもろに急停止をかけた。
「待って」
「王女殿下?」
急くように愛馬も嘶く。この森を抜ければすぐに城だ。
けれど、ここは雛だったウィダルグを拾った場所だった。矢も盾もたまらず、馬を降りて彼を待つ。
二羽の鷹は主たちから離れ、適当な枝に飛んでいった。彼らは彼らで大変仲睦まじく、再会を喜び合っているように見えた。
わたしは、緊張を隠さずに人間のウィダルグを見つめた。
「覚えてる? この場所。ここで、あの子を拾ったの」
「もちろんです、王女」
「!」
まただ。
また『王女』。それは、記号のようなものであって『わたし』じゃない。
わたしが見てほしいのは。
心から欲するのは……。
唇を噛む。想いがあふれ、とめておけなかった。ぐんぐんと胸を満たして絞めつける。くるしい。くるしい。
気がつけば、叩きつけるように叫んでいた。
「――ッなぜ! 名前を呼んでくれなくなったの? 鷹には変わらず呼びかけてるくせに」
「お」
「ほらまた!」
「違います。『落ち着いて』」
「〜〜落ち着けるわけないでしょう!?? このばか! 変態、鈍感! なのにっ、わたし」
ほろりと涙が伝う。
拭おうにも、両腕を掴まれてしまっていた。払おうにも、好いた弱みでへなへなと力が抜けてしまう。
言ってしまった。
もう、どうにでもなれ、と顔を背けると、なぜか顔を近づけられて時が止まる。
薄氷の水色。
その瞳にわずかな苛立ちと熱を認めて。
(………………?)
「どこですか」
「は?」
「さっき、アランに口付けられませんでしたか。たしか左手。ここ?」
「!! ウィ、ウィダルグ!! や、ちょ」
なんてこと。
ウィダルグに、アランと同じ場所にキスされた。しかもそのまま離してもらえない。近い、近すぎる。
思考が繰り返す。どうして、こんなことに。
すっかり茫然自失になったわたしを抱き寄せ、ウィダルグは諦観したように呟いた。曰く――
ずっと好きでした。
でも、貴女は王の娘で。
昔は何も考えず、互いの雛に相手の名を付けられた。嬉しかった。けれど、と。
「気付いてしまったんです。アランも貴女を見ていた。けど、貴女は私もアランも同等に友として接しているように見えました。臣下の子である私のほうが、出会いが早かった。それだけで血筋的には」
「――……『ファリア』」
「え?」
「ファリアよ。呼んで。今すぐ。でないと一生呼んであげない」
「!!!」
抱きすくめられ、身動きもできないなか、わたしが辛うじて告げた言葉は、然るべき重みも苦みも、ちゃんと伝えたようだった。
(思い知ればいいんだわ。いつの間にか名前で呼んでもらえなくなった寂しさを。つべこべ言う必要なんかないのよ。この、強情者!)
わたしは、あなたを。
「……っ、ファリ、ア」
「うん」
「ファリア」
「ウィー。……ウィダルグ。ウィダルグ・オルゲイア」
「はい」
高い位置にある、彼の首筋に鼻を寄せた。もう二度と、変な距離でやんわりと遠ざけられたくなかった。
「花嫁衣装は、あなたのために着たいです」
「〜〜、……!!!!」
言語不明瞭な想い人の唇を、背伸びして思いっきり、塞いでやった。
◆◇◆
そのあとは。
どうやら待ちきれなかった二羽の鷹が先に城へと戻り、見張り塔の兵からすぐに就寝中の父上までことのあらましが奏上された。
わたしたちの一晩限りの出奔は、即座に明るみとなった。
帰城のあとはこってりと叱られたが、翌日を待たずに軍を退かせたアランからは、正式な国書が届いた。
“ファーロウの姫とオルゲイアのご子息に、改めて祝いを。ファーロウ国王よ。今度はすみやかな英断をされるように”と。
そのせいもあってか、わたしは降嫁を認められた。
ただのファリアとして、ただ人のウィダルグとともにいる。
偶然だけれどわたしたちを結びつけた、二羽の鷹のように。
fin.
作中挿絵は猫じゃらしさまのフリーイラストです。
お話が生まれたのもこちらの絵を拝見してからでした。
使わせていただき、感謝申し上げます。
お読みくださり、ありがとうございました。