7.夜に備えて
Side: 府谷恭平
与田くんが何やら話があるみたいで近づいて来た。
「所長、仮住居の方があらかた終わりました。ついては部屋割りをどうしますか?」
ああ、それがあったか。
「不公平感を無くす為クジにしよう、各部屋の番号は振り終わっているかい?」
「はい、終わってます。」
与田くんに、クジに使用するプラスチックのプレートを100枚ほど持ってきて貰う、よく自転車の鍵に付けてあるヤツだ。
周りにいる数人に手伝ってもらい1〜88の数字を書いていく。
書き終わったら男女に分けたクジ引き用の箱に入れて、目立つ場所に置く。
「皆さん、仮住居の部屋割りを行いたいと思います。こちらのクジが部屋番になっているので引いていって下さい。」
何人か引いていく、引いた人はその場で天尊アカウントの住所に部屋番を入力して貰う。
入力の際には頭に【天尊旧館】を付けてもらうので、検索を掛ければまだクジを引いていない人が誰なのか直ぐに分かる仕組みだ。
「所長、新入社員の方達にもビジネスチャットを入れて貰いませんか?」
与田くんから提案される、確かに全員への連絡手段は必要だ。
「そうだな、今はみんな買い物に忙しそうなので、夕食時に皆に周知するか。与田くんはビジネスチャットの導入手順をモニターに表示出来るように準備をしておいてくれ。」
「了解です。」
と与田くんが去っていくのと入れ替わりに、舟酒さんがやって来る。
「所長、警備体制について相談なんだが。」
現地住民の襲撃があったことにより、今後、センター自体への襲撃が起こるであろう事を想定して、夜番を立てる必要があるとのこと。
現状でも警備員で夜番は立てているが、1人なので襲撃があった場合に対処出来ないからだそうだ。
「夜番の人数を増やして欲しいと?」
「というより警戒体制をどうするか?という問題ですな。」
現在、警備員は舟酒さん含めて5人、普段は監視カメラで不審者が敷地に入るのを監視するレベルなので、大掛かりな襲撃は想定していない。
「舟酒さんの考えを聞かせて貰えませんか?」
「今はセンター内の監視だけなので、周辺警戒と即応部隊も揃えて欲しい。」
敷地に入られてから対応してたら遅いので、ドローンでの周辺警戒と、襲撃があった際に直ぐに迎撃して足止めを行う部隊を3交代で準備するべきという。
確かに必要だ、現地住民だけでなく、専門の武装組織が集団で襲撃して来ることも想定すべきと思われる。
「夕食時に皆に説明して、交代で警戒する体制を整えましょう。ドローンについては専門性もあるので経験者を優先して選抜しましょう。」
そんな話をしているところへ呑家くんから連絡が入る。
「所長、連射弓が出来たみたいなので見てもらっていいですか?」
「分かった、何処に行けばいい。」
「中庭に来て下さい。」
俺は舟酒さんと一緒に中庭へと向かった。