67.足軽隊
Side: 府谷恭平
「早速ですが大林さんには、ここの警備隊長を任せたいです。」
博多ターミナルの警備を担ってもらおう。
「え?城を任せて貰えるので?」
うーん、説明が難しいので城でいいかな。
「はい、ここの城代をやると思って頂いて結構です。」
「なんと!」
結構驚いているな。それならもう少し驚いて貰って大丈夫だろう。
「ただ兵がいないので一緒に勧誘をお願いします。」
「え?兵がいない?こんなに人が居るのに?」
「彼らは工事に従事しているだけなので兵ではありません。他に仕事を持たない人達がいますので彼らから兵を募ろうと思います。」
「なるほど流民を兵にするということですな。」
「はい。」
博多では兵を現地調達しようと思っていたが、現地人を兵にするノウハウを持っていなかった。
なのでフリーの武士を探さないとと思っていたところ、丁度、大林さんをゲット出来たという訳だ。
大林さんなら人柄も分かっているし任せても大丈夫だろう。
「ということで兵を募集しに行きましょう。」
大林さんを連れて漁業班のいる浜辺へ向かう。
そこには漁業班の班長魚田さんに魚を売りに来ている沢山の人達がいた。
「彼らには今は魚を獲って貰っていますが、定職に就ければそちらがいいという人はいると思うんです。」
「ずっと足軽を雇うので?金が勿体ない気がしますが。」
「はい常時雇いの兵になります。」
そして兵の募集をしている旨を彼らに伝えるがいまいち反応が薄い。
何かこちらを値踏みしている感じで見て来る。
そこで大林さんが自分に任せて欲しいというので任せてみた。
「お前たち!わしが此度将を務める大林菅助よ!腕に覚えがある物はかかって参れ。わしを倒せば将になれるやもしれぬぞ!」
おお、ガチな煽り方だ。プロレスのマイクパフォーマンスを想起させる。
「面白い、半次郎だ。本当に勝てば将になれるんだな?」
「勝てばな。」
なんか大林さん凄い自信ありげだ。ここは任せてみよう。
半次郎くんはゴムボートのオールで戦おうとしていたので刀と取り替えてあげた。
俺がオールを持って「始めっ!」の合図をした。
すると。
瞬殺だった。
大林さんの峰打ちで半次郎くんは気を失っているみたいだ。
「他に掛かって来る者はおらんか?」
大林さんがカッコいい。
流民の人達も腕に覚えのある人はいる様で、それから4, 5人ほどが大林さんに挑戦して瞬殺されていった。
「このわしが大将ぞ!わしに従う者はおらんか!」
やはり戦国時代、力有る者に人は集まるのだろう。
皆んなが我も我もと押し掛けて来た。
総勢100人を越えているかもしれない。が、これは喜ばしいことだ、全員受け入れよう。
漁業班の魚田さんは「皆んないなくなったら明日から魚をどうすんの?」と呟いていたが今はスルーしておく。
それにしても大林さんって強かったんだなぁ。
それとも武士は皆んなあれぐらい強いのか?
とにかく、俺は前線には出ないようしよう。
後で聞いてみたら京流という剣術を会得しているとのこと。
以外と武闘派な人だったんだな。
とりあえず志願兵の皆んなには、今日から飯は食べ放題だと伝え、功徳が増えるので屋台で酒もたらふく飲めるぞと言うと物凄く喜んでいた。
大林さんからは「明日からは調練でしごいて行くから程々にな」と釘を刺す場面もあったが。
寝る場所に関してはセンターにテントと毛布を100人分発注した、今日中には届くだろう。
こんなに早く集まるとは想定外だった。が、いい方に転んでくれたので良しとしよう。
後で判明したが、兵になった人達に家族も居たので世話する人数は倍になった。
なのでターミナルの用地をさらに広げ、居住区を作る事にした。
島井さんに相談すると、有り難いことに追加で土地を譲ってくれた。
居住区の建設にあたっては、建設班はターミナルの建設真っ最中なのでそんなに人はさけない。
なので大林さんにお願いした。
配下の100人の兵を使って家を作っていく。
作るのは門前町に作った長屋をコンクリートで作った物だ。
お手本で建設班に1棟2階建10部屋を作って貰った。
それを参考に大林さん達が同じ物を作っていく。
要は鉄筋で骨組みを作り、型枠を作ってコンクリートを流しこんで行くだけなので理解し易かったのだろう、建設は順調に進んでいった。
兵になると家が貰えるという噂が広まって、さらに兵が集まって来た。
結局、兵は200人ほど、家族も含めると500人くらいの人達が集まった。
「士官したばかりの某が、これ程の兵を任されてよいのであろうか?」
大林さんは悩んでるみたいだが問題ない。
こちらとしては嬉しい誤算だらけだったが、今後、別の拠点で兵を集める際にもかなり参考になった。
さて、次はさらなる戦力アップの為にアレをやるか。