62.外部拠点
Side: 府谷恭平
次田の湯までの道路が開通したらしい。
まあ大きな工事は川に橋を架けるくらいで、ほとんど手を加えなくても走行可能な地形だったから工事は割とスムーズだったとのこと。
あと農民達が協力的だったのも大きかったそうだ。
筑紫氏の侵攻を撃退したことで、日和見だった人達も手のひらを返したように協力的になった。
そして道が整った事により、博多までトラックで行けるようになる。
神屋さんとの約束もあるし、博多に出す店の事も考えないとな。と考えていると。
「所長、温泉旅館の原案が出来ました。」
そういえば、こっちは死村くんに任せていたな。
「どれどれ、へえ、6階建てかぁかなり大きいね。木造だけど大丈夫?」
「こちらがイメージイラストです。」
そこには異世界にあるかもしれないお湯屋さんのイラストがあった。
「こっ、これは!『銭湯ちはるの髪と櫛』に出て来る、、、」
「そうです。あのアニメのお湯屋さんです。残念ながら地上部分だけですが。」
まんまパクリだけどいいの?
まあ、こんなところにまでクレームは付けに来れないからいいのか。
「そうか、これが出来たら帆足さんビックリするだろなぁ。」
「どちらかと言うと、このアニメを見た一般会員に見せたいですね。このお湯屋さんを見たら凄く喜ぶと思うんですよ。」
「いわゆる聖地巡礼という事になるのかな?」
「さすがに聖地巡礼は言いすぎです。でも、夢の国映画を見て東京夢の国ランドへ行くくらいの感動は与えたいですね。」
たしかにアニメの実物が見れたら、胸熱になること間違いなしだ。
「それはそうと内装はどうなるんだ。」
「もちろん原作に忠実にですよ。」
「ということは最上階まで突き抜けた吹き抜けになるのか。」
「そうです。各階から一番下のお風呂が丸見えです。」
それはアニメ的にOKなだけであって、実際に各フロアから丸見えの温泉宿はNGだろう。
「それはそれでどうかと思うが、入る女性客いるのか?」
「ちゃんと見られない区画のお風呂も作ります。安心して下さい。」
あ、ちゃんと考えてあるんだ。
「まあいいだろう。ところであのエレベーターも再現するの?」
「もちろんです。吹き抜けとあのエレベーターはセットみたいな物ですから。」
「そうは言ってもセンターにエレベーターなんてないだろう。どこから持って来るんだい?」
「耐荷重1600kgの電動ウィンチが有ります、これを使います。」
「ぞんなものがあるのか。人が乗る箱は割とシンプルな造りだったし何とかなるか。」
「それで相談があるんですが?」」
「何だい?」
「シアタールームを作ろうと思います。そこで【天尊動画】を配信したいのですが?」
なるほど、アニメに出てくる建物で、元になったアニメを上映するということか。
「いいんじゃないかな。あと他のサービスの方はどうなっているの?」
「先ずは食事ですが、もちろんジブ○飯です。厚切りベーコンエッグや巨大おにぎり、ミートボールスパゲッティ、飛空船の中でも食べられるシチューが出てきます。」
「もっと普通に和風旅館で食べられそうな物も欲しいな。」
「分かりました。ジブ○飯は裏メニューにとっておきます。」
「中で働くキャストはどうなっているの?」
「油婆婆と竿ナシは外せませんね。あと泊と釜翁も。」
「いや、そんな話じゃ無くて、、、」
いかん、死村くんが暴走してる。普段は『銭湯ちはる』をボロクソに言っているくせに本当は大好きだったんだな。
「ま、まあそこら辺は後で話し合おう。そう言えばもう一つのはどうなった?博多に作る倉庫のヤツ。」
「それなら、こちらが博多に建設する倉庫の原案です。」
「こっちはトラックターミナルか。」
「はい、立体駐車場みたいな感じで3階まで直接車で乗り付けられます。」
「木造だろ?車の重量に耐えられるの?」
「いいえ、今回は鉄筋を使おうと思います。鉄筋コンクリート、いわゆるRC造りというヤツですね。」
「鉄筋なんて作れたんだ。」
「電気炉はありますので鉄は溶かせます。なので型に流し込んで作っただけのヤツなんですけどね。」
「おいおい、強度は大丈夫か?」
「建設班に説明して、その分密になるように設計して貰いました。震度6迄なら耐えられる計算です。」
「なんか凄いないろいろと。」
「それで資材について相談があります。」
「まあ、こんだけのものを作るんだいろいろ必要だろうな。何が足りないんだ。」
「石灰石です。今回使うコンクリートの量は半端じゃ有りません。大量の石灰石が必要です。あと鉄ですね。」
「鉄は大量に仕入れるとなると鉄鉱石になるけど、ウチって鉄鉱石から製鉄出来たっけ?」
「それについては金属加工所が溶鉱炉を建設中です。まだ、耐火レンガを使った実験的なものですが、アルミナで整形が出来るようになれば本格的なものが作れる見込みです。」
そうか、俺は知らなかったがいろいろ凄い事になってきてるんだな。
「博多の倉庫はこれだけ大きいと電力はどうするんだ?」
「太陽光と風力では照明と空調、通信設備でカツカツです。EVトラックの充電までは賄えないですね。」
「まあそうだよなぁ。」
「それで提案なんですが、博多まで行けるようになりました。なので沖縄でさとうきびを栽培しませんか?」
「それは何が目的なんだ。」
「先ず第一が砂糖の確保です。」
「それはいつかやらなきゃと思ってはいたんだ。いいんじゃないかな?」
「二番目は砂糖を搾った後の廃糖蜜を使ってバイオディーゼル燃料を作ります。」
「ああ、なるほど。センターにある車両の半分はディーゼル車だからな。EVトラックだけに頼らなくて済むという事か。」
「それもありますが、ディーゼル発電機が使えるようになります。」
「それはいいな。いざという時に発電出来る手段があるのは心強い。」
「将来的には石炭を使った火力発電所を考えていますが、結構難しそうです。」
そこまでは求めていなかったがまぁいいか、行けるとこまで突き進んで貰う事にしよう。
「とりあえず今の段階では了解した。引き続き管理者やスタッフの人選もお願いするよ。」
「分かりました。」
筑紫氏も暫くは攻めて来ないと思うので、今のうちに開発を進めておこう。