6.初任給
Side: 府谷恭平
仮住居作りは与田くんに任せて新館へ戻る。
早速、呑家くんを見つけたので状況を聞いてみる。
「私も舟酒さんからのまた聞きになるんですけど、給水機を設置しようとしたら槍を持った10人ほどの現地住民に襲われたそうです。」
槍を持った現地住民と聞いてアフリカの原住民をイメージしてしまった。
「こっから先は俺が説明しよう。」
舟酒さんが来てくれた、詳しい話を聞こう。
舟酒さんと警備員1人、建設班から3人の合計5人で給水機設置に行ったそうだ。
給水機の起動確認の為、ポンプから水がジャバジャバ出始めたあたりで、10人程が川向こうに現れて石を投げ始めたとの事。
口々に「水泥棒」と言っていたので彼らの利水権を侵害したと思われたのだろう。
「それにしても、水泥棒ということは日本語が通じるという事ですよね?話し合いは出来なかったんですか?」
「それがその後直ぐ、槍を持った数人を先頭に川を渡って襲い掛かって来てね。」
多勢に無勢と見て、直ぐに撤退を決断したそうだ。
給水機も置いてきて、戻ったセンター内から確認したところ、給水機は壊された後のようだとのこと。
「すまない、給水機を壊されてしまった。」
「人命第一です、負傷者もなく引き上げて貰えたのでむしろ感謝します。」
撤退理由は、やはり丸腰だったことが最大の理由だ。
警棒だけで槍に対抗するにも限度がある、こちらにも武器が無いと分が悪すぎる。
多人数で攻められたらマズイぞ、何か使えるものがないか調べなくては。
一旦、お昼休みで全員に集まって貰って昼飯を食べながら作戦会議。
給水班が襲われたことを皆に伝えて防衛力は必要と説明。
防衛に使う武器について皆んなの意見を聞いてみる。
「そもそも、用意できる武器は何があるんです、所長?」
舟酒さんが質問する。
「ナイフや斧、鎌、あと弓くらいかなぁ。」
「どれもイマイチですな、素人が使うには難易度が高そうだ。」
「猟銃なんかは手に入らないんですか?」
彼は唐西さんかな?
「銃はサバゲーで使うレベルのエアガンしか無いんですよ、殺傷能力は有りません。」
「それなら…」
と唐西さんが語りだす、彼は兵器系の動画配信者で、電動ドリルを使った連射弓というのを作ったことがあるそうだ。
設計情報はスマホに入っているので、材料さえ有れば作れるとのこと。
「試しに1つ作らせて下さい。」
「了解しました、必要なものをおっしゃって下さい、呑家くん、対応お願いするね。」
「分かりました。」
と早速、呑家くんは唐西さんと打ち合わせに入った。
「他に何かいいアイデアは有りませんか?」
「所長、武器も大事ですが防御力も高めませんか?」
舟酒さんが言うには、天尊のサイトではかなりの防御用装備が揃うらしい。
防弾チョッキ、軍用ヘルメット、防刃シャツ、防刃パンツ、肩肘膝脛などの各種プロテクター、軍用ブーツ。
とりあえず全員に揃えてもらおうという事で、この場で天尊アカウントの登録を行なってもらう(既存のアカウントがある人はそちらを使う)。
基本給10万と支度金10万の計20万円分のポイントを振り込んで行き、個人でサイズ合わせが必要な防刃シャツとパンツ、ブーツなどを各人で購入して欲しい旨を伝える。
フリーサイズの防弾チョッキ、ヘルメット、プロテクター等はコチラで準備することにした。
「生活雑貨なんかも買っていいですか?」
誰かわからないが女性の方から質問が上がる。
「はい、サイトで買える物は自由に購入して下さい。」
軽く言ったつもりだったが、皆んなの目の色が変わった、皆んな買いたいものが色々あったらしい、嬉々としてポチポチやっている。
「受取りってどうするんですか?」
こちらも知らない人だ、早く皆んなの名前を覚えなくては。
「皆さんがいつも使っていた搬出口から梱包されて出てきます。宛名にご自分の名前がある事を確認して受取って下さい。」
まぁ、イメージとしては巨大な自動販売機だな、配送システムは無人で完全自動化されているのであながち間違いでは無いのだが。