表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/69

58.博多

Side: 府谷恭平

島井さんに博多へ行きたいとお願いした。

ちょっと、えって表情になったが直ぐに笑顔で快諾してくれた。

なので、メンバーはそのままで博多へ向かう事になった。


今回は太宰府へ寄らず、真っ直ぐ博多を目指すルートのようだ。

島井さんのナビで主要道路を通って貰ったので道の状態もいい。

これなら普通の車でも十分通行可能だ。


途中にあった関所は、前に貰った通行手形が使えたので特にトラブルは起きなかった。

そして、那珂川と御笠川(石堂川)に挟まれた水堀に浮かぶ博多の街が見えてきた。


「これが博多かぁ。」

遠くから見えた時は、某天空のお城に辿り着いたような高揚感が有ったが、いざ門の前まで来るとちょっとした違和感を感じた。


「なんだろう、夢の国ランドを想像して来たら、お花畑屋敷遊園に来たこの感じは。」

「ああ、なんか長崎の出島くらいのガッカリ感はあるわね。」

「私達が知っている博多が大き過ぎるんです。これでも充分大きいじゃないですか!」


そう、九州に特に佐賀県に住む者にとって福岡市は果てしなく大きい、そのイメージでみるとこの博多は少し小さく感じた。

島井さんは訳が分からずポカーンとしてるけどね。


「島井さん、車を停める場所ってありますか?」

「それならウチの資材置場を使って下さい。」


と案内されたのは博多の街に入る手前のだだっ広い野原だった。

「あそこの小屋にはウチの者がいますので盗まれることもありません。」

という事で、野原にある小屋に車を停めて博多見物に出かける事に。


入口では島井さんの口利きでスムーズに入る事が出来た。

それから、年行司という偉い人を紹介された。


「神屋寿禎と申します。」

「府谷恭平です。」

「南蛮人とお聞きしましたが、私が聞いた感じとはずいぶん毛色が違いますなぁ。」

「ええ、南蛮人の毛色は金だけでは無いという事ですよ。」


アッハッハッハと笑い合っていたら、奥から女中さんが飛び出して来た。

「旦那様!お坊ちゃまの様子が!」


なんか慌てているようだ。

神屋さんも話を聞いて急に慌てだした。


「な何?善四郎が!」


「どうしました?」


「申し訳ない、孫が熱でうなされているようなのじゃ。今日の所はお引き取り願いたい。」


「そうですか、それでは今日のところはお暇します。」

島井さんがそう言うと、神屋さんは家の奥に消えていった。


「なんかバタバタしてすいませんなぁ。次は湊でも観に行きますか?」

「よろしくお願いします。」


それから島井さんに案内されて、湊や交易広場、お寺や神社を観て回った。

見た感じ、まだポルトガル人はいないみたいだ。


交易広場では皆んなで手分けして相場を調査して回る。

結果、島井さんからは倍以上の値段で買わされていた事が発覚したが、これは輸送料が含まれるのだろうと納得した。


この後、島井さんのお家へお邪魔した。

流石、博多の大商人、神屋さん家に負けない豪邸だ。


あと、入場手形らしき物も発行して貰った。

これで次からは自由に博多の街に入る事が出来る。


「島井さん、お店を出したいのですが難しいですかね?」

「ええ、その事も含めて神屋さんを紹介したんですよ。あの人がウンと言わないと難しいでしょうなぁ。」


小さくてもいいから博多の街に拠点が欲しい。

そう思って、島井さんにお願いしたら神屋さんを紹介されたのだが。


「それにしても熱病ですか気になりますなぁ。」

島井さんも商人仲間の事が気になるようだ。


「詳しい症状とか分かりますか?」

縫野先生も気になっているようだ。


「ウチの女中から聞いた話では、舌にぶつぶつが出来て腫れ上がっているそうな。何の祟りじゃろうかと言うてましたな。」


それを聞いて、縫野先生はピーンと来た表情で此方を見て来た。

何かわかったのかな?


「縫野先生、何か分かりました?」

「もしかしたら猩紅熱かも?一度診てみたいわね。」


それから島井さんにお願いして、神屋さんに診察したい旨を伝えて貰った。

向こうも藁にも縋りたいのか、直ぐに返事が来た。


神屋さんの家を再度訪問し、診察をさせて貰う。


「やっぱり猩紅熱ね。」


「どうにかなりそうですか?」


「ペニシリンが特効薬よ。」


なるほどペニシリンが効くのか、って持って来てたっけ?

縫野先生に聞いたら持って来ているそうだ、準備がいい。


それで問題は注射器でプスッとやるのを了承して貰えるかだが。


「天尊教の秘術ですか?」


神屋さんには宗教的な秘術だと説明して了承を貰った。

とりあえず注射をしてその日は帰った。


明くる日、神屋さんから使いが来た、熱が下がったのでお礼がしたいとの事。

またまた神屋さん家を訪ねる。

凄く感謝しているみたいだ。


「お礼がしたいのですが何か欲しい物がありますか?博多で揃う物なら何でも言って下さい。」


よほど嬉しかったのだろう、商人なのに迂闊な事を言う。

しかし、こちらの望みは初めから決めている。


「博多で店を出したいので、空き家を紹介して頂けませんか?」

「それくらいならお安い御用ですよ。」


トントン拍子で話が決まり、次に博多へ来るまでに用意してくれるそうだ。

良かった、これでアンテナを立てれば博多でもスマホが使えるようになる。


後は倉庫が必要だな。

お店の商品を運ぶ際に荷物の一時保管場所として、資材置場を貸して貰えないかと島井さんに相談した。

それならばと、ある程度の土地を譲って貰った。

よし!倉庫用地ゲットだぜ。


考えてみればアンテナを立てるだけなら此方でも良かった。

まぁ結果オーライだ。


それから島井さんと別れの挨拶をして帰ることにした。


「所長、帰りの道って分かりますか?」

「一応、来る時にゴウプロ的なドライブレコーダーで記録してあるので迷う事もないだろう。」


と考えていたが甘かった、行きの動画で帰り道の検証は結構大変だった。

しかし、元々一本道みたいな行程だったので、何とか帰り着く事が出来た。

楽しい旅だったがかなり疲れた。


後で分かった事だが、倉庫建設予定地は櫛田神社と承天寺の位置関係から現在の博多駅あたりではないかと思われる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ