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56.統治政策

Side: 府谷恭平

あの後、ドローンで筑紫館に火を掛けたら、落城したと勘違いしたのか降伏して来た。

退去するなら命は取らないと言うと、素直に退去を選んでくれた。

総勢200人ほどの彼らを見送った後、これからの事を皆んなと考える。


「先に聞いておきたいのですが、戦国大名になりたい人はいますか?」

「なりたいって言ったらどうなるんですか?」


呑家くんが聞いてきたか。

こういう時に率先して質問してくれるのは彼女の良いところだ。


「ここの領地で戦国大名をやって貰います。」


「・・・、私はいいかな。」

「俺も無理。」

「ないない。絶対ない。」


ふむ、やはり否定的な意見ばかりだな。俺だってそんなのやりたくない。


「ということで、この地の統治は行わない方針ですけど反対意見はありますか?」


「具体的にどういうふうに考えているんですか?」

お、死村くんか、前にもこういう会話の流れがあったような気がするな。


「先ず我々は宗教団体であることを農民達に説明します。なので年貢は取らない。」

「え、それはいいんですか?」

「逆に聞くけど年貢って欲しい?」

「あ、なるほど、確かに要りませんね。」


そう、我々が食糧を求める方法は自作か交易で事足りる。

わざわざ小さい土地に執着して体力を削る事もない。


「領地を治めないのは分かりましたが、筑紫氏が戻って来たらどうします?」

「そこで第二弾が情報操作だ。」

「どういう事です。」

「筑紫氏は神の怒りに触れたのでこの地を去る事になったと喧伝する。」

「その事に何の意味があるんですか?」


「そして農民達には『天尊教に入信すれば年貢は取らない』と言えばどうなると思う?」

「ああ、そういうことですか。要は農民と旧領主を分断する作戦ですね。」

「そういうこと。」


周りが皆んな無税なのに自分だけ無理して税金払う人は少数派だ。

なので農民達は自分の欲の為に旧領主から離れざるをえないようにする。

筑紫氏が無理に年貢を掠奪してくれれば、農民は100%こちらに付くと思う。


「所長、入信拒否する人はどうします?」

「どうもしない。日本人は同調圧力に弱いからね、最初の切り崩しが上手く行けばそのうち入信すると思うよ。」

「なるほど、ガレージ広場の屋台みたいな感じで増やしていくんですね。」

「キャッチーな言葉で気を引いて利で釣る作戦さ。」


「所長、筑紫神社や筑紫館はどうしますか?」

舟酒さんからだ。防衛責任者として気になるのだろう。


「筑紫神社はそのままです。ここで屋台を出したら縁日みたいで楽しそうです。」


「筑紫館はどうします?要塞化したりしますか?」


「筑紫館は更地にしようかなと考えています。」


「更地ですか、それは結構思い切りましたね。」


更地にする事で農民達に領主が居なくなったことをアピール出来るし、防衛のコストも掛からない。いい事だらけだ。

それに筑紫氏がこの更地を占領しても鉄砲の的にしかならない。直ぐに制圧できる。

筑紫神社に関してはある仕掛けを施しておこう。


「更地にして、トイレくらいは設置してパーキングみたいにしたらどうかなと。」

「筑紫氏が取り戻しに来たらビックリするでしょうな。」


「とりあえず我々がこの地に求める事は安全な交易路の確保です。農民達の生活を守るのは余裕が有ればくらいに考えて良いのではと思います。」

「そうですな敵対的な関係にならなければ、特に大事ないですからな。」


その後は特に反対意見も無く、統治はしないという統治方針が決まった。



Side: とある村長

筑紫様がお館を追放されたという噂を聞いた。

お館は跡形も無くなってしまったらしい。

そんな時、天尊教がやって来た、筑紫様を追放したのが彼らだ。


「皆の者聞けい!我らは天尊教だ。筑紫は神の怒りに触れ追放となった!」


村の皆んなは訝しげに見ている。

新しい領主だ、どれだけの米を徴収されるのやら。


「入信する者には神のご加護を与えよう。」

やれやれ坊主はどこも一緒か、祟りじゃと脅して金をせしめる気であろう。

どれ、ちょっとイヤな質問でもして困らせてやるか。


「すみませぬ、お尋ねしたい事があります。」

「良かろう申してみよ。」

「筑紫様の何が神様のお怒りに触れたのでしょうか?」

「うむ、説明いたす。」


おや?あんまり嫌な顔をしとらんな。

事前に言い分けを考えて来ていたのか。


「筑紫は年貢を取りすぎた。お前達を苦しめる程に年貢を取った事が神の怒りに触れたのじゃ。」

なんとこれは驚いた!しかし口ではどうとでも言える。


「それではワシらの年貢はどうなりますので?」


「無しじゃ。神のご加護がある限り、お前達は誰にも年貢を納める必要はない。」


これにはたまげた!こんな事があるのか?

しかし、いや待て騙されるな、何か裏があるのではないか、そうか!お布施で持って行く気じゃ。


「お布施は如何程になりましょうや?」


「布施は払いたい者が払えば良い、此方からは求めない。」


こ、これは本当の神様がいらしたのかもしれぬ。

一度だけ、一度だけ信じてみるか。



Side: 府谷恭平

布教活動は上手く行っているみたいだ。

今のところ大きな反発は無い。


良く聞かれるのがお布施についてだ。

そもそもお布施なんて取ってないので、言われるまで意識すらしていなかった。

でもお布施か、これは使えそうだ。


お布施をしたら功徳が増えると広めよう。

実際に天尊ポイントを付与してやれば、わざわざ肉体労働をやらせなくても屋台で買物ができる。


さらに普通じゃ手に入らない品を恩恵品として出せばどうだろう。

ペニシリンなんてこの時代にないから、まさに神薬として扱われるかも。

黙ってても、食糧や物資が集まって来るかもしれない。

一考の価値ありだな。

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