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51.醸造班

Side: 府谷恭平

結局、筑紫氏は攻めて来なかった。

監視気球の映像で朝日山城へ向かったのは確認出来ていたので、目標は此方じゃないのはわかってたけどね。


「それにしても所長、捕虜をどうしますか?」

舟酒さんが聞いてくる。

「何人います?」

「56人ですね。」


うーん、最終的に解放するにしても何もしないとまた攻めて来るしな。

という事で先ずは会員登録する事にした。

ランクはブラック会員だ。

ちなみに天尊のサービスは受けられない。


今回は天尊教に入信する人は助けるという体を取る事にする。

入信拒否は即死刑と言ったら全員が入信した。

そして背信者には死が待っていることも伝える。

つまり、ブラック会員が捕虜になったら次は助けないという事だ。


まあ、実際に殺せるかはその時にならないとわからないが。

最悪、強制労働か島流しくらいはさせて貰う予定だ。


「とりあえず死体の片付けは手伝って貰おう。」

「そうですな。」


死体の剥ぎ取りは終わっている様だ。

一般会員の人達が慣れた手付きで剥ぎ取っていた。

なので、遺体は250ほどあったが捕虜たちの手伝いで埋葬は直ぐに終わった。



「それじゃ、もう攻めてくるんじゃねえぞ。」


「「「へい。」」」


捕虜達はご飯を食べさせた後、お弁当を渡して送り出した。

彼らも帰りたがっていたし、此方も信用出来ない人物を門前町やセンターに入れたくなかったからだ。


そして頑張ってくれた社員や会員の皆んなにも、それぞれの職能に応じてボーナスが支給される。

一般会員の皆んなは臨時ボーナスに喜び、思い思いの物を買って楽しんでる様だ。

中でも酒が飛ぶように売れている。


そう、クレームが上がる程に。


「所長、酒類の消費が多すぎます。このままでは一年と持たずにセンターから品切れになる品が出てきます。」

なんでも死村くんの方で在庫確認を行なったところ、絶滅危惧種ならぬ欠品危惧商品の筆頭に酒が上がったそうだ。


「ど、どうすればいいかな?」

「無ければ作る。最初からこの方針でしたよね。」


確かに、自分で言ったような記憶がある。

しかし、酒なんか作ったこと無いぞ。


ということで醸造経験者をビジネスチャットで募集してみた。

すると、応募というより他薦があった。


「所長、上野さんの実家は造り酒屋だそうです。」

馬猪さんからである。

調理班の上野雫さんが造り酒屋の娘だったとのことだ。


「小さい頃、友達と酒蔵で遊んで酒粕食べてただけなんですけど、そんなんで良ければ。」

それは、醸造経験とは言わないのでは?

しかし、やる気はあるように見受けられる。

他に選択肢がある訳でもなし。


「上野雫くん、君を醸造班の班長に任命したい。」

「えへへ、頑張ります。」


「造り酒屋なら日本酒か、しかし設備をどうするかだな。」

「所長、それなんですけど。」

死村くんから提案である。

なんでも【天尊醸造】という醸造支援システムがあり、日本酒のサポートもしているとのこと。


「どんな事が出来るの?」

「本来は専用の機材と繋げて、日本酒醸造の全自動化を目的にしたものですが、肝心の機材が有りません。なので各工程毎の検査くらいにしか使えませんが。」

「あんまり使えなさそうだな。」

ちょっとガッカリだがある物を使っていくしかない。


「まあ、無いよりましです。あ、でも3Dプリンタでの麹撒きは出来そうですね。」


麹か、麹?あれ?麹が無いんじゃ?

「麹が無いぞ、肝心の麹菌が無いと酒は作れないんじゃないか?」


「麹ならありますよ。」


おお、上野さんがドヤ顔で言ってきた。


「酒粕から酵母起こしが出来ます。」


「なるほど、酒粕ならセンターにあるな。それでお願いするか。」


とりあえず試験的に少量を作る事にした。

だいたいお米15kgだ。

場所は会議室を提供し、そこで蒸しから始める。


蒸す前の白米の吸水チェックに【天尊醸造】の画像解析を使う。

蒸し上がった米の弾力チェックに【天尊醸造】の圧力センサーを使う。

蒸米の温度と吸水具合を【天尊醸造】で確認し、状態が整ったものから3Dプリンタで麹撒きを行う。


こうして見ると【天尊醸造】は結構活躍しているな。

まあ、出来上がった物を見てみないと判断は出来ないが。


この後、蒸米を混ぜて麹菌が行き渡るようにしたり、麹室に入れたりという工程が続くらしい。

ここは、造り酒屋の娘の性能とやらに期待するしかない。


因みに麹室はコタツで代用した。

試作酒が上手く行けば本格的な醸造蔵を作る必要があるな。


だが、酒は日本酒だけじゃ無い。

ビールやワイン、焼酎もいつか尽きる時が来る。

こちらも考えないとね。

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