50.朝日山落城
Side: 朝日宗贇
「と殿っ!このままでは兵を削られるばかりですぞ。」
なんだあの城は、雨霰のような矢だけでなく仕切りに鳴り響く轟音でも兵が斃れる。
あの音曲も忌々しい。
一度兵を下げて立て直すか。
と考えていたら、敵の城から何かが飛んでくる。鳥か?いや鳥はブーンとは言わん。
「何だあれは?」
「それよりも殿!一旦兵を下げられた方が。」
「いいだろう、一度兵を戻せ。」
言い終わった次の瞬間、大量の何かを落としてきた。
敵の攻撃と思い弓を構えたが、突然の轟音と飛び散る血飛沫に遮られる。
そして。
目が、目が燃える様に痛い。喉も焼ける様だ。
自分が何処にいるか一瞬わからなくなったが、矢が飛んでくる音は聞こえた。
いかん、敵が討って出て来たか。
(撤退だーーッ!)
な!声が出ぬ。
Side: 府谷恭平
「催涙爆撃は上手く効いてるみたいですね。」
そう、いつもの爆薬に催涙スプレー缶を突っ込んだだけだが、結構効果があるみたいだ。
「まあ、手間も掛からずに効果もあるのなら今後も使えそうですな。」
舟酒さんも気に入ってくれたらしい。
「今は混乱中だと思いますので、思いっきり矢を叩き込んで下さいね。」
「分かりました。」
「敵が逃げ始めたら追撃に移りましょう。」
「了解です。」
敵が逃げ始めるまで結構時間が掛かった為か川向こうは死体の山だ。
舟酒さんもハイラックスで打って出た。
いつもと違うのはEVトラックが数台続いている事だ。
荷台に連射弓を装備している。
当然川を渡れないので、センター北側の簡易鉄板橋を使って渡河している。
その後を警備員が率いる一般会員の歩兵部隊が続く。
まぁ、EVトラックは平坦な場所しか移動出来ないので、そんなに深追いは出来ないけど。
それにしても今回は捕虜が多い、催涙爆弾で悶絶している人が結構いたからだ。
流石に、無抵抗の人に止めを刺すほど鬼畜じゃないので、拘束するに留めた。
あと、戦利品も多かった。
やたら兵糧があったので、ありがたく頂戴した。
今回は敵将の首は取れなかったみたいだ、あっても困るけど。
そんな報告を受け取っていたら、偵察班の豊令さんから連絡が入った。
「所長、筑紫氏の城から兵が出て来ました。」
おやおや?ダブルヘッダーもあるかな。
Side: 朝日宗贇
クソったれがっ!めくらめっぽう走ったので家臣達とはぐれてしまった。
やっと目が見えて来たと思ったら、何処だここは?
と思ったら人だ。囲まれている。
「米ば返せっ!」
「そうたい米っ!どけやった!」
何だ百姓か。
舐められたものだ、さっさとこんな奴ら片付けてしまおう。
「百姓ども、落武者狩りのつもりか?おもしろい。」
見せしめに一人血祭りにしてやったが,逃げていかぬな。
いかん新手も来たか。
仕方ない、ここは一旦引くか。
♢ ♢ ♢
それからも行く先々で落武者狩りに会い、結局、城に帰り着くのに2日ほど掛かってしまった。
「おい、儂だ開けろ!」
城門の番兵に向かって叫ぶが返事が無い。
と思ったら矢が飛んで来た。
刀で叩き切ると城門の上には見知らぬ男が居た。
「誰だ貴様は?」
「さぁて、言うなれば今はこの城の主かな。」
「何を戯言を!この城の主は儂だ!」
「ああそうだ、城を奪われた元主はお前だ。」
な、そうか、旗が同じ目結紋で気付かなかったが筑紫か。
「降伏するなら命だけは助けてあげますよ。」
「いらん、好きにしろ。」




