48.受付対応
天尊配送センターより2kmほど北西に園部城があり、九州探題の渋川義長がここを御座所としていた。
Side: 渋川義長
「ふむ、金が足りんのう。何処かによい話でもないものかのぅ。」
九州探題府からこんな鄙びた所へ移ったのは失敗だったか。
しかし、少弐が攻めて来るやもしれんので迂闊に戻る訳にもいかぬ。
大内は負けて太宰府へ逃げ帰るし当分は帰れんか。
近隣の村々の年貢だけでは微々たるものじゃしのぅ。
これでは兵も集められんわい。
「探題様(渋川義長)、最近羽振りの良い者達がおる様です。矢銭を掛けてはいかがでしょうか?」
ほぅ、そんな者おったかの?
ろくに商人も寄り付かぬと思うておったが。
「矢銭か、それはよいの。たっぷりと取り立てて参れ。」
取れるところから取るしかないのが歯痒いのう。
「ははー。」
Side: 府谷恭平
センター南側台地の開発も進んで来た。
台地の上は500m × 500mの平地になった。
今はへりの部分に柵を作って防御をし易くしている。
そしてこの平地に作られた施設第一号が鶏小屋だった。
騒音対策の為、居住区から少し距離があった方がいいだろうという配慮からだ。
鶏のお世話はアルバイト社員が行う。
今のところ、あゆと新たに卒業した、うり、あつみ、いね、ちまり達が交代でお世話する。
いわゆる飼育係だ。
一応、呑家くんに指導をお願いしているので変なことにはならないと思うが、彼女も養鶏のプロじゃない、頑張ってもらうしかない。
そして門前町の方には城壁が出来た。
北側の堤防からグルっと囲む様に南側台地に繋がる高さ7mのコンクリートの壁だ。
上の要所には連射弓が配置してある、防御の際には力を発揮してくれる事だろう。
下の方は銃眼が開けられていて、屋根付きの場所から鉄砲が撃てるようになっている。
さらに城門部分は内側が虎口になっていて、誘い込んだ敵を殲滅出来るようになっていた。
「門前町の守りもかなり良くなったんじゃないかな?」
「そうですな。」
舟酒さんと防御施設の見廻りを行っている。
舟酒さんには防衛司令官を担って貰っているので、随時、不備な点を洗い出して貰い改善する予定だ。
「本当は城壁のさらに外側に鉄条網の柵を設けた方がいいんですがね。」
「すいません、そこは交通の利便性を優先して今回は無しで。」
他との調整で実現に至らない物もいくつかあるが、概ね良好だろう。
とそんな事を考えながら歩いていたらヘルプコールが鳴った。
これはたまに来る困ったお客さんを示すコールだ。
警備担当者から『九州探題の使者』を名乗る人が来たようだと告げられた。
なので応接室に案内するように伝える。
「私は警備室に向かいますけど、舟酒さんはどうされます?」
「私は城門の方へ向かいましょう。」
「よろしくお願いします。」
警備室へ着くと応接室と回線を繋いでオンライン会議を行う。
応接室は城門付近に設置した部屋だ。
アポイントの無いお客様とミーティングをするのに使う。
だいたいこの手の人達は問答無用で切り掛かって来るので、専用の部屋を用意した次第だ。
場所は城門の直ぐ脇なので中へ入れずにあしらえる。
今日は有意義な話になればいいな。
「こんにちは、私が所長の府谷です。」
応接室にある100インチのモニターに突然人の顔が映って喋り掛けたのでびっくりしている様だ。
固まったまま反応が無い。
「すみません、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「そ、その方無礼であろう。」
「いやいや、無礼なのは名前を名乗らないあなたの方ですよ?」
「我らをこのような所に閉じ込めおって!」
「とりあえずご用件だけでも伺いましょうか?」
「ええいよいかっ!その方らに矢銭を申し付ける!」
「お断りします。」
ブチっと通信を切る。
やはりああいう困った客にはこの応接室は効果的だ、無駄な時間を使わなくて済む。
あとは城門あたりで暴れたりするだろうが、舟酒さん達警備員が上手くいなしてくれるだろう。
後で聞いたら、九州探題の使者の人達は帰られたそうだ。
完全武装した十数人で囲んであげたら素直に帰ったとのこと。
「所長、また攻めて来ますかね?」
舟酒さんがやれやれみたいな感じで聞いてくる。
「どちらにしろ、ああゆう輩は掠奪が目的です。変に譲歩しても何も解決しませんよ。」
「まぁ、そうなんですがね。」
「でも、ちょっと嬉しいんじゃないですか?この防衛施設の性能が試せるのが。」
舟酒さんはニヤリと笑っただけだった。
Side: 渋川義長
「なんと儂の命が聞けぬと申したか!」
「は、探題様(渋川義長)のご威光を解せぬ慮外者にございました。」
儂を軽んじるなどあってはならんことぞ。
「けしからん!直ぐに討ち取ってまいれ!」
「ははっ、しかし多少数が多くごさいますれば国人どもの兵も集めるべきかと。」
そうじゃ、逆らう者は徹底的に潰してやるわ!
「許す、国人供にも討伐の命を出せ!」




