44.射撃大会
Side: 府谷恭平
「命中ーー!」
判定係が命中の旗を振る、周りからドッと歓声が上がる。
門前町の広場で種子島の射撃大会をやっている。
門前町を含む当センターの住民で15才以上なら誰でも参加可だ。
島井さんが来た時に実際の射撃を見せないといけないが、自分では当てる自信がないので、適正のある人に任せようという魂胆だ。
なので適正のある人を発掘する為の射撃大会を開いた。
優勝賞金は10万円分のポイントだ。
ルールは各人3発づつ撃って全部的に当たれば勝ち抜け。
距離を30m、50m、80mで行い、全て的に当てた人は決勝へ進む。
決勝は100mで、的には中心50点、内輪30点、外輪10点と点数がつけられている。
各人5発づつ撃ち合い、優勝は最も合計点数が高い人になる。
社員からは下平さんが決勝に上がって来たようだ。
以外と唐西さんは50mで脱落した。
作成者が必ずしも上手い訳ではないらしい。
一般会員からは2人、小次郎という18才の青年と千代という16才の少女だ。
小次郎くんはちょっと喧嘩っ早い所はあるが、仕事は真面目にこなすらしい。
お酒が大好きでポイントは全て酒に消えるみたいだ。
千代ちゃんの方は元隣村出身の幼年学校生だ。
何のドラマの影響か、フードコートでたまに足の組み方を練習している姿が見受けられる。
結果は下平さんの圧勝だった。
そもそもほとんどの人が今日初めて鉄砲を撃ったのに、そう簡単に当たる訳がない。
裏を返せば、それだけ才能のある人物が発掘出来たのは大きな成果だろう。
80mまで行った人も他に6人程いる。
鉄砲隊を組織するのもアリだな。
♢ ♢ ♢
それから暫くして島井さんが来た。
「鉄砲の方はどんな感じですか?」
「お久しぶりです、島井さん。用意出来ました。直ぐに見られますか?」
「はい、お願いします。」
という事で射撃場の方へ案内した。
「これが鉄砲ですか?」
島井さんが種子島レプリカから作った鉄砲を手に取ってしげしげと見ている。
「ええ、それでは実際の使い方を説明します。」
と言って、鉄砲を下平さんへ渡す。
下平さんが早合の弾薬を銃口から入れて棒で押し込む。
さらに携帯カイロの炭火で火縄に火をつけ、射撃体制に入る。
「撃てっ!」
俺の合図で下平さんが撃った弾は、50m先に的として設置した胴丸に命中した。
「これが鉄砲ですか、凄いものですな。」
島井さんが驚いている。
胴丸が貫通しているのを見てうーんと唸ってた。
プレゼンは上手くいったみたいだ。
「これは如何程でお譲り頂けますか?」
値段だが縛尾くんに聞いたら鉄砲伝来時は2挺で金2000両と言っていた。
これは今後とも交易商品にしたいのでそこまでボッタくる気は無い。
「1挺100貫、2挺ありますので200貫になります。」
ちょっと島井さんが驚いている、高いと思ったのだろう。
しかし、あまり安くすると後で量産型種子島を売る際に支障がでる。
なのでこの金額を提示した。
因みに早合の弾薬は別売りだ。
10発で200文。これも10セットお買い上げ頂いた。
後々、此方の方が主力商品になる見込みだ。
硝石は日本に無いからね。
「これで筑前守護代様(杉興運)に良いご報告が出来ます。」
島井さんもちょっと肩の荷が降りた感じだ。
しかしまだ心配事がありそうな顔をしている。
「実は相談が。」
島井さんがあるお願いをしてきた。