42.鉄砲
Side: 大内義隆
周防国山口にある大内舘で、大内義隆は肥前侵攻が失敗に終わったと知らせを受け取った。
「五郎(陶隆房)、豊後守(杉興運)はまんまとやられて太宰府へ逃げ帰ったらしいよ。」
「それはなんとも無様な。大内の威信を何と心得ておられるのやら。」
「手紙には筑紫の裏切りがあったと書いてあるが、どこまで信じればいいんだろうね。」
「言い訳にもなりませんな。お屋形様、私にお命じ下されば、少弐の首なぞ即刻挙げてご覧にいれましょう。」
「まぁ、そう迅るなって、大友にも備えないといけないしね。」
ちょっと五郎(陶隆房)は不満そうだ、暴れたいんだろうなぁ。
「それにしても、豊後守(杉興運)は戦は今一つだけど、僕の珍品趣味をよくわかってる。」
「献上品のことですか?」
「そう、このホルマリン漬けの首なんてションベンちびりそうになったよ。」
まさかこの時代にこんな物が見れるとは思ってなかったんだよね。
そう言えば南蛮人ならアレがあったはず。
豊後守(杉興運)に探りを入れさせてみるか。
Side: 杉興運
「大内様からは何と。」
「太宰府の守りを固めよとの仰せじゃ。何とか首の皮は繋がったようじゃの。」
お屋形様から書状が届いた。
どれほどのお叱りを受けるかと思うたが、幸いなことに死罪は免れたようじゃ。
「それはようございましたな。」
「それでじゃ島井、今日そちを呼び出したのは頼みがあっての。」
「はい、なんなりと。」
「そなた、あの南蛮商人と商いをしておろう。」
「はい、それが?」
「『鉄砲』というものがあるらしい。それを南蛮商人から手に入れるように、と書かれてあってな。」
「それはどのようなものですか?」
「なんでも火縄で鉄の球を打ち出すものらしい。ワシには見分けが付かぬ故そなたに任せたい。」
よく分からんが、お屋形様がお望みとあらばそれを果たすのがワシの努め。
それにしても、お屋形様は何故そのようなものをご存知なのだろうか?
「お任せ下され。必ずや良い知らせをお持ちしましょう。」
まぁ、島井の報告を待つとしよう。
Side: 府谷恭平
門前町の工事も一段落し、今は社員寮を建設中だ。
皆んなの中では此方がメインだからね。
場所はセンターの南側、その為南側は柵外も開拓対象として切り開くことにした。
自宅のすぐ横で戦闘されるのも嫌だしね。
バッファを設ける為にも南側台地全部が対象だ。
あと工場施設などはセンター西側へ建設していく予定だ。
化学班の大苺くんからも、アンモニア抽出の実験は上手くいったので、プラントの建設をお願いされているからね。
そんな事を考えているとお客さんが来たらしい。
「お久しぶりです。島井さん。お元気ですか?」
「ええ、お陰様で。こっちはえらい活気ですな。」
「まぁ、ボチボチです。ところで今日は自らいらっしゃるなんて珍しいですね。」
いつもは代理の人が来てたはずなんだが。
「今日は、いつもの商いの他に用事がありまして。」
「ほう、何でしょうか?」
「鉄砲というものを知りませんか?」
おおっと!いきなりぶっ込んできやがった。
でもおかしいな?唐西さんに作成はお願いしたけど外部に漏れるはずも無いし。
ここはもう少し詳しく話しを聞いてみるか。
「鉄砲とはどのようなものでしょうか?」
「なんでも、大内の殿様が仰るには、火縄で鉄の球を飛ばす道具だそうです。」
ふむ、ウチの秘密がバレた訳じゃ無くて、まだ情報収集という段階か。
それにしても大内の殿様という事は結構大きな話になりそうだな。
ならばこれをビッグビジネスにするのも悪くない話だ。
「物はわかりますが、今手元に無いので少しお時間を頂けますか?」
島井さんは、手に入りそうだと分かると嬉しそうに帰って行った。
さて、兵器班の唐西さんに相談だ。




