39.新入学生
Side: 府谷恭平
あゆ達が美味いものを食べていい暮らしをしている、との噂を意図的に流して貰った。
まぁ嘘じゃないし、あゆ達に男の子の孤児達の前でこれ見よがしにヌガーチョコなんかを食べて貰っていたし。
結果、男の子の孤児達が入社試験を受けに来た。
面白いというか此方は意図して無かったのだが、隣村の女性達も入社試験を受けに来たのには驚いた。
何でも大抵が未亡人で、この間の龍造寺との戦で夫を無くしたのだそうだ。
そして刈入れを前に、夫がいないのを理由に田畑を取り上げられたらしい。
大体、助けてくれる親族がいない独り身の女性たちだ。
「呑家くん、結果はどうだった?」
「合格者は1人もいませんでした。」
「だよなぁ。」
50音と九九を突破出来た人は1人もいなかったので、全員幼年学校への入学となった。
男子が、5才〜9才の8人、女子が12才〜22才の6人となった。
但し、半年以内に卒業出来ない場合は退学となる。
永遠に引き篭もりを飼っては置けないからだ。
とはいえ、退学者のその後も考えないとなぁ。
「何であゆが先生なんだ。」
「しょうがないじゃないですか所長。孤児達相手に一番コミュニケーション取れるのが彼女なんですから。」
「それもそうか。でも8歳児が先生で本当にいいのか?」
「あゆちゃんに聞いたら、芸能人に年齢は関係ないって言ってましたよ。」
あゆ、お前は一体何を目指しているんだ。
しばらくして男子学生達から要望が上がってきた。
もっとアクティブな事がしたいと。
女子学生は結構ドラマにハマっていたが、アニメやアイドルにハマらない子もいるということか。
「呑家くん、どうしたらいいと思う?」
「ならばあれしか有りません。」
「ああ、あれか。」
という事で、カリキュラムにゲームを追加した。
男の子は競争が好きだ、すんなり受け入れてくれたみたいだ。
女子学生も興味を示す子が出ていた。
あゆは悔しそうな顔をしていた。
よっぽどアイドルの素晴らしさを布教したかったのだろう。
さらにドローン操作のシミュレーターみたいなゲームをタイトルに加えてみたところ、高得点を叩き出す子が出始めたので豊令さんに見て貰った。
すると。
「是非、ウチのドローン隊に欲しいですね。」
なんと就職先が決まってしまった。
今はアルバイト社員しか想定していなかったので、正社員の仕事をする場合も考える必要があるなと思った。
この後、ドローンゲームが上手くなると、就職に有利になりそうだとの噂が流れると、ドローンシミュレーターゲームを熱心にする子が増えた。
そして、幼年学校の卒業生が出始めた頃、新たな入学希望者が殺到して来た。
隣村以外の近隣の村の孤児達や迫害されてる人々のようだ。
老若男女の数は200人を超えた。
「所長、これ以上受け入れるにはキャパが足りません!」
「ううむ仕方ない。全体集会を開くぞ呑家くん。」
ビジネスチャットで全体集会を周知した。
議題は『新市街地建設について』だ。




