38.商人来訪
Side: 府谷恭平
「良い地図のお陰で迷わずに来れました。」
「ようこそ天尊配送センターへ。お久しぶりです島井さん。」
島井さん達一行は総勢17人で来た、荷物も結構多い。
商人風が3人、護衛4人、人足10人に見える。
「皆さんお疲れでしょう。どうぞ一服されて下さい。」
と中庭のフードコートへ案内した。
このフードコートだが、まだ日差しが強い季節なのでパラソルの要望が多々あった。
なので、12台あった6人掛け丸テーブルにそれぞれパラソルを付けた。
あと屋台もクレープ屋とハンバーガー屋がさらに増えていた。
ここなら全員が日陰でゆっくり休憩できるだろう。
「お茶にごじゃいます。」
あゆが冷やしたお茶をポットで持って来てくれた。
呑家くんに接待要員を見繕って貰ったら、あゆが選ばれたらしい。
まだちゃんとした言葉使いは難しいようだ。
他のテーブルにも冷えたお茶を運んでいた。
とりあえず島井さんをテーブルへ案内し、グラスにお茶を注いでいく。
「ほう、茶に御座いますな。これは有り難い。」
と一口飲むとちょっと驚く。
「まさか氷入りとは思いもしませんでした。」
「気に入って頂けたようで何よりです。」
それから、商談に入る前に島井さんへ天尊カードを渡した。
「これは私達と取引する際の割符のようなものとお考え下さい。」
「ほう割符ですか?」
「はい、今後代理でいらっしゃる方がいれば、その方の割符も用意しますが。」
「では、この2人にもお願いします。」
これらのカードは純粋に入館チェックでしか使わないが、後で使えなくなると困るので適当な額を振り込んでおこう。
カードの登録も終わったので、島井さん達を無人商店街へ案内しようとしたら、護衛の人が2人付いてきた。
なので、こちらにはビジターカードを貸与した。
ビジターカードはカード会員ではない人を一時的に入館者として扱うカードで、決済先はこの場合島井さんとなる。
とりあえず中に入ると冷房が効いていることに驚いていた。
さらに並んでる商品に興味を示していたので、カゴを渡して好きなものを入れていって貰った。
人気があったのが酒、それも一升瓶。
透明なガラス瓶が気に入ったみたいで、同じ理由でワインも人気だった。
あと羊羹も買っていた、杉さんに頼まれたのかもしれない。
その他はスルメ、せんべいくらいで、缶詰や缶飲料は全くのスルーだった。
2階ではアクセサリーや小物に興味を示していた。
服は良く分からなかったのだろう、手には取ったがカゴに入れた物は無かった。
3階ではお目当ての物がズラリと並んでいたので熱心に吟味していた。
どういうわけか、フィギュアは全くのスルーだった。
欲しい商品が決まったようだ。
眼鏡や望遠鏡にも手を出しているが、鏡、硝子食器の方を結構厚くいっている。
ビー玉に至っては商品棚にあるもの全て購入するらしい。
ここからは交渉となる。
島井さんが持って来た米、硫黄、石炭、綿を全部購入したいので、その都度値段交渉を行いコチラが8貫ほどプラスになったところでなんとか落ち着いた。
ビー玉に付いては当初の半値に値切られはしたが。
元々ビー玉は小玉400文、大玉800文で出していたので,半値になっても痛くも痒くもない。
と思っていたら、島井さんは更に余裕だったみたいで爽やかな笑顔で質問された。
「ビー玉をもっと買いたいのですが如何程ありますかな?」
直ぐには分からなかったので、呑家くんに商品として出せる物を全部持って来て貰った。
全部で800個近くになったので、島井さんもちょっと引いていた。
が、商人の意地が勝ったのだろう全部お買い上げ頂いた。
結局、コチラの儲けは200貫を超えた。
「良い取引が出来ました。これからも良しなに。」
「ありがとうございます。こちらこそ今後とも宜しくお願いします。」
この後、食事にお誘いした。
フードコートの屋台を食べ放題で楽しんで貰い。
日本酒やワインはお買い上げ頂いた銘柄と同じ物を持って来て飲んで貰う。
試飲もさせていなかったからね。
お供の人も一緒に飲んでもらおうと、他のお酒もジャンジャン持って来て大いに飲んだので、その日は泊まって貰い次の日に帰って行った。
「それにしても商人って、沢山お金を持ち歩くんですね。」
呑家くんの指摘に俺も同感だ。
あれから酒の追加がかなり入り、利益はさらに膨らんでいた。