37.ビー玉製造機
Side: 府谷恭平
外貨獲得の為、ビー玉は重要商品として認識している。
しかし、当センターに無尽蔵にある訳ではない。
なので自分達で作れないかと相談を持ちかけた。
「死村くん、ビー玉ってどうやって作るか解る?」
「何で僕に聞くんすかそんな事?」
「誰に聞けばいいか分からなくてね、困った時は死村くんかなと思ってね。」
「まぁ、いいですけど。」
といいながらネット検索をしながら、ある動画を見つけて来た。
「これを見て下さい。作り方を説明してますから。」
そこには『ビー玉が出来るまで』というタイトルの動画があった。
ちなみに天尊では、世界中のネットワーク上の購入情報を収集していた為、かなりの情報についてネット検索が可能だ。
あるユーザが他社サイトで商品を購入する迄に辿ったプロセスを調べる為、関連するサイト全てが収集対象となっている。
なるほど、作り方はだいたい分かった。
結構単純だけどかなり大掛かりな施設が必要になる。
とりあえず主要なもの以下の3つ。
①溶鉱炉
②一定速度でガラスを切る鋏
③真球に整形するローラー
この中で①溶鉱炉はサイトの商品がそのまま使えるとして、残るは②③か。
彼に頼んでみるか。
「という事で頼みがあるんだけど飯論くん。」
「いきなり何です?所長。」
「こういうのを作って欲しいのだけどっ、ていうか顔色悪いけど大丈夫?」
飯論くんの目の下には隈がくっきりと浮かび、顔には死相が漂っていた。
「ちょっと、大苺さんが寝かしてくれないんですよ。」
「えっ?君たちってそういう関係!」
ちょっとドキドキしてきた、周りの皆んなも耳ダンボになってるよ。
「いえ、そう訳ではありません。ある装置の製造を任されていて、ちょっと寝不足なんですよ。」
ああ、あれか、ハーバーボッシュ法で使うやつだ。
「そっちの方はいつぐらいに出来そうなの?」
「なんだかんだで、あと一ヶ月は掛かりそうですね。」
「そうかぁ、流石に割り込むのは悪いから無理か。それじゃそちらが終わったらでいいから頼めない?」
「分かりました。でも、その鋏だけなら直ぐ作れますよ。」
「本当!お願いできるかな。」
やった、課題を一つクリアだ。
「それにローラーの方は与田くんに頼んだ方が早く出来るんじゃないんでしょうか。」
「えっ!与田くんこんな複雑なローラー作れるの?」
「このローラーは同じ形の円盤が重なりあってバウムクーヘンみたいになってますよね。」
「ふむ、確かに。」
「つまり、同じ形の円盤を複数作ればいいだけなのでは?」
「そうか3Dプリンターを使えばいいのか。与田くんの得意分野だ。」
「そういう事です。」
「ありがとう、与田くんに頼んでみるよ。鋏の方はよろしくね。」
と飯論くんにお礼を言って、与田くんにローラー作成を依頼しに行った。
与田くんから出来たとの報告があったので受け取りに行った。
確かに動画で見た形にそっくりだ。
一応モーターも付けてくるくる回るようにしてある。
飯論くんへお願いしてた鋏も既に受け取っていたので早速試してみた。
場所は旧館の搬入口付近のコンクリート床の空間だ。
ここなら火事になることもないだろう。
電気溶鉱炉に材料のガラス片を入れる、もとは牛乳なんかの空瓶を砕いたものだ。
溶けたらアルミ製の漏斗に流す、漏斗の下の穴からゆっくり流れでてくるので、一定の速度で鋏で切る。
落ちてきた、赤く溶けた玉がローラー上で整形されながら、ゆっくり押し出されていく。
最初の玉が落ちてきて雨どいに入り転がって行く。
この雨どいは200m先でUターンしこちらに戻ってくるように設置してある。
往復400mを移動して、ある程度冷やされたビー玉が雨どいから出てくる。
金網をクッションにしてキャッチし、バケツに入る。
出来たものを一晩冷やして確認したら、確かにビー玉が出来ていた。
ガラスに濁りがあるのは不純物のせいだろう、今後の課題だ。
実験は成功したが、これを設置する場所がない。
とにかく冷やすための雨どいがかなり場所を食う、こちらも今後の課題だな。
島井さんとの取引は、一先ずセンターにあるビー玉で行おう。
質を上げないとこのままでは使えないな。




