34.天尊農業
Side: 府谷恭平
センターにある耕運機を検索してみたが、大型のものは無く全部一人用のハンディタイプだった。
「これは農業班の3人だけでは無理だな。手伝ってくれる人を募集するか。」
ということで農作業を手伝ってくれる人の募集を掛けたが集まりが悪い、応募者は9人だけだった。
耕すだけならなんとかなるが、じゃがいもの種イモ撒きという一大イベントがある。
悩んでいるのを見かねたのか呑家くんが提案する。
「所長、彼女達にお願いしましょう。」
そうか、また彼女達の力を借りる事になるのか。
「あゆ、仕事の依頼だ。」
そう、孤児のあゆ達である。
あれからちょくちょくセンターに遊びに来ていたので、ご飯やお菓子と引き換えに清掃などの軽い仕事をして貰っていた。
流石にそのままではかなり汚れていたので、何回かお風呂に入れていたら気に入ったらしく、わりとセンターに居着くようになった。
いまでは会議室1つを孤児達の寝泊まりルームにしてある。
あゆが率いる女の子達8人程が暮らしている、男の子の孤児達はまだ警戒してか住み着くまでには至っていない。
「今回は人手がいる、男の子達にも繋ぎを頼む。」
「分かった。」
「報酬はご飯食べ放題でいいか?」
「ヌガーチョコも欲しい。」
あゆはヌガーチョコが気に入ったようだ。
いや違うな、ヌガーチョコ中毒になりかけているというのが正しいか。
定期的にヌガーチョコを摂取しないと精神が不安定になるらしい。
「いいだろう、あゆには別にヌガーチョコ1箱を用意しよう。」
あゆの顔がぱぁーと明るくなった、かなり嬉しいらしい。
それから作業の説明と開始時間を伝えて別れた。
園田さん達農業班とお手伝いの人達で開墾をしている。
4つの段々畑の各面を3人づつに振分けて耕しているようだ。
ハンディタイプの耕運機を3列に並んで耕して行く。
特に農業班の3人は慣れているのか進みもいいみたいだ。
その畑の上ではドローンが飛んでいる、俺のドローンだ。
何をやっているかというと、畑の空撮写真を撮っている。
この写真を元に、じゃがいもの畝をプリントする。
耕し終わった畑に専用ドローンで畝をプリントしていく。
一往復毎に土が自動で補充され、指定された配合割合で肥料を混ぜ込んでいき、混ぜ合わせた土を幅70cm、高さ15cmになるように積み重ねていく。
真ん中は高さが5cmほど低くなるように設定されており、種イモを撒くポイントとして30cm間隔で印を付けていく。
同じ畝が何本も自動でプリントされて行き、全ての畝が完成する。
後は孤児達も含めた皆んなで、印の付いた場所に種イモを植えて行けば出来上がりだ。
結局、2haをじゃがいも、1haをキャベツ、1haに大根を植えることにした。
キャベツと大根は種蒔きもドローンがやってくれた。
小麦は時期が早かったみたいで、大根収穫後になった。
玉ねぎはプランターで育てるらしい。
今回の事でも思ったが孤児達は使える、社員として受け入れても良いのではと思い始めた。