33.農地開拓
Side: 府谷恭平
「農地が欲しい?」
農業班の園田さんから要望が上がってきた。
現在、当センターには農地が無い。
会議室の1つを水耕栽培ルームにしているのと、大量のプランターが外に置いてあるだけだ。
あと、芽出し中のじゃがいもが中庭を占領しており、そろそろ畑に植える必要がある。
「じゃがいもを植えるとしてどれくらいの土地が必要ですか?」
「最低2haは必要です。今後を考えると倍の4haは欲しいですね。」
4haというとセンター北側の柵の内側を全部開発すればいけそうな気がする。
「分かりました。建設班の栗井場さんと話を詰めてみましょう。」
という訳で栗井場さんも交えてセンター北側へやって来た。
「で、一体ここをどういうふうにしたいんだ。」
「はい、農業班からの要望は4haの農地と、水害対策のため堤防を築いて欲しいそうです。」
「堤防の高さはどれくらいだ。」
「2mもあれば十分かと。」
「そうすると川沿い400mのうち西半分は高台になっているから、必要になるのは東半分の200mという訳だな。」
「その通りなんですが、高台の方を削って1haづつの段々畑になるようにして欲しいです。」
「堤防用に土を削り出すのでそれは構わんが、ああ水田にする為か。」
「そんな感じです。」
「分かった。」
ということで栗井場さんとの話しが終わったところ、横で聞いていた園田さんが疑問に思ったのだろう、質問して来た。
「なんで1haの段々畑なんですか?」
「実は【天尊農業】という農業支援システムがありまして。ドローンを使って種蒔きや農薬散布を行えるのですが、その推奨する広さが1ha単位なんですよ。」
「なるほど、そんな便利なものがあったんですね。」
「ドローンを使って3Dプリントするように畝を作ったり、種蒔きするシステムなので、ある程度水平である事が条件なんですよ。」
「それは凄いですね。」
「はい、今回のじゃがいもでは畝作りで使用したいと考えてます。」
「種イモ撒きは出来ないんですか?」
「流石にドローンではまだそこまでは出来ないみたいです。」
正確には出来るが効率が悪すぎる、手で撒いていった方が早いということだ。
「これからとなると何が植えられますか?」
「はい、秋蒔きになるので、キャベツ、大根、玉ねぎ、カブなんかがいけますね。」
「小麦はいかないんですか?」
「収穫時期が6月くらいになるので、米作りを考えると今回はと思ってましたが、小麦と人参の二毛作にすればいけますね。1haは小麦にしてみますか。」
「そういえば水耕栽培の方はどんな感じですか?」
「今はレタス類を育てていますがいい感じです。あと40日もすれば収穫出来ると思います。全部摘み取らなければずっと葉が生えてきますので、その後は通年いけますね。」
「それは朗報ですね。そろそろサラダ類が厳しくなってくる頃なので待ち遠しいです。」
そんな話から2週間程して整地と堤防作りが完了したらしい。
「どうだい、こんなもんで。」
素晴らしい、きれいに4段の畑になっていて、段差部分はコンクリートで固めてある。
農耕機械が入れられるように道も整備されていて、稲作が出来るよう水路もある。
堤防の方もコンクリートでしっかりコーティングされている。
「素晴らしい出来です。ありがとうございます。それに給水塔まで。」
さらに頼んでいなかったが給水塔を作ってくれていた。
「いつか作らないとと気になっていたからな、ついでだ。」
これでやっと本格的な農業が始められる。
でも先ずは、耕すところからはじめないといけないんだよね。




