32.無人販売コーナー
Side: 府谷恭平
「あぁ、やっぱり風呂はいいなぁ。」
天尊配送センターへ帰って、真っ先にやった事は風呂に入る事だった。
太宰府ではお風呂に入れなかってのでちょっと気持ち悪かったからだ。
まだ午後3時くらいなので空いているのも理由だ。
男湯は競争率が激しい。
「いやぁ、風呂はいいですなぁ。」
舟酒さんも入っているが肩まで浸かれていない、ポータブルバスは1人用なので体の大きな人はサイズ的にこうなってしまう。
将来的には大浴場の建設を検討したい。
それにしても突貫工事で作ったにしてはよく出来てる、床もスノコが敷かれているので安っぽい感じがしない。
清掃を考えるとタイル張りの床にしたいところだが、これも要検討だな。
シャワーも熱水と冷水の調整が出来てとても使いやすい。
栗井場さん達に感謝だな。
風呂から上がると脱衣所横の休憩所に向かう。
ここに噂の無人ドリンク販売コーナーがある。
「おや?認証チェック用の端末は無いんだ。」
センターの人間しか利用しないので顔認証にしてあるのか、まぁ少額決済なので取りはぐれは無いと判断してのことかな?
冷蔵庫が2台置いてあって『酒』『ドリンク』と書いてある、ドリンクはALL100円らしい。
ドリンクの冷蔵庫を開ける、見事に缶コーヒー、缶ジュースばかりだ。
お茶と水は無いんだなと思っていたら、たしか隣りにある食堂で無料サービスしているから需要は無いかと納得した。
次に酒の冷蔵庫を開ける、缶ビールがズラリと並ぶ、こちらは350mlは200円、500mlは300円だ、銘柄は関係無いらしい。
350mlの超ドライなビールを1つ貰う、椅子に座ってプシュッと開けた瞬間、スマホに通知が来た。
お買い上げ内容の通知だ。
凄いな【天尊小売】のシステムは、冷蔵庫から取った段階ではまだお買い上げでは無いのだろう。
開けるか、品物を持ってこの部屋から出たら買い物として判定されるのだろう。
死村くんは、こういうニーズがあるところに各人が個人商店を出して行けば、皆の生活がより豊かになる。
ともっともらしいことを言っていたが実際はどうなんだろう?
ビジネスチャットをチェックしていたら死村くんから周知が上がっていた。
『無人販売でお店を持ちたいあなた、死村浩幸まで。コンサル料50000円〜』
流石だ死村くん、きっと君には誰も勝てない。
そして、死村くんの購入履歴を見たら驚愕の事実が。
今回のドリンクコーナーで、彼は全ドリンク100円で出していて好評だ。
しかし内部情報を知り尽くしている彼はさらに狡猾だ。
天尊サイト、実はユーザ毎に表示金額が少し異なる、彼が狡いところはどのように振る舞えば価格が安くなるか、そのルーチンを知っていることだ。
ドリンクを大量購入する前に表示金額のランクが変動しているので、そういう事なのだろう。
最低金額のバルク品を大量購入しているので、仕入れ値は半額を切る。
しかも爆買いしたのがバレないように、配送日時を6ヶ月先まで小分けに指定しているので、毎日補充分を追加購入しているようにはたからは見える。
きっとお酒の方も似たような感じなのだろう。
彼は決して敵に回してはいけないなと思った。




