30.商人紹介
Side: 府谷恭平
「この様に早く着くとは。」
と杉さんが驚いている、3時間くらいで着いちゃったしね。
門の前の目立つ所に車を停めたので、警備の方が大勢出てきた。
「コラー!何事かっ!不届き者は成敗致すぞ。」
って強気に出てたけど、責任者みたいな人が杉さんを見て「守護代様、ははー。」となってからはすんなり受け入れて貰えた。
ホルマリン漬けの首と献上品を渡したら帰ろうと思っていたが、手渡しでは駄目だと言われた。
ちゃんとした席で首と品を献上するようにとのこと。
ちょっとした離れをあてがわれた、今日は此処に泊まるらしい。
「離れで良かったですね、横に車が置けるので丁度いいです。」
「そうですなぁ、自慢の愛車にいたずらされたらタダじゃ置きませんからね。」
舟酒さんが愛車ハイラックスを熱く語る、誰もいたずらしないことを祈ろう。
夜は会食に呼ばれた、そこで杉さんから商人さんを紹介された。
「島井次郎右衛門にございます。」
「島井は博多の商人でな、そなたらの商品にも興味があるそうじゃ。」
「明で噂になっている南蛮の品とのこと、是非に商いをお願いします。」
ちょっとハードルが上がっている気がしたが、後で品を見て貰う事にした。
こちらからは硫黄、石炭、綿花、食料などが欲しい旨を伝えると、硫黄、食料は問題ないと言われた。
綿は貴重品でだいたい布になって輸入されるので、綿花での取引は微妙とのこと。
石炭については、何それって言われた。
黒い燃える石と説明すると、ああ、あれかみたいでやっと分かってくれたらしい。
会食が終わり、離れに島井さんを案内して、商品を見て貰う。
と言っても明日には献上する品なのだが。
「これは素晴らしい。」
島井さんが特に気に入ったのがビー玉。
こちらの意図通り宝石かなんかと勘違いしてくれたようだ。
「必ずや商いに参ります。付きましては詳しい場所をお教え願えませんか?」
ここでちょっと困惑する、自分が知っている住所では先ず伝わらない。
そこで、豊令さんに空撮写真で作ったなんちゃってマップを出して貰った。
「この地図の此処が私達の拠点になります。」
地図は差し上げますと言うと、本当に良いのかと何度も確認された。
結構気に入って貰えたようだ。
一夜明けて、朝ご飯を食べている時に『一刻後に呼びに来るので献上の準備をしておくように』との連絡があった。
とりあえず準備をしておこう。
そして昨日から気になっていたことがあるので聞いてみた。
「武辺さん、あなたは昨晩も我々と一緒に居ましたが、家に帰らなくていいんですか?」
「ええ、拙者の家は小城の方なので此方に帰る家はござらん。」
「あれ?杉さんの家臣なんですよね?」
「いいえ、違い申す。我は千葉介様の家人にござる。」
おおっと!ここで驚愕の事実が、てっきり杉さんの家臣か何かだと思っていたが違うらしい。
なんでも、小城郡あたりを治める千葉介(千葉興常)に命じられて今回の戦に参加したらしい。
そこで筑前守護代殿をよくお助けするように言われて、本当にお助けしていたとのこと。
なんか素直すぎるよ武辺さん。
そんなふうに思考がストップしていたら、丁度、案内の人が呼びにきた。