28.あゆ
Side: 府谷恭平
帰り道、遺体の中に人影を見つけた、まぁ遺体も人なんだけどね。
「あれは?」
「子供でござるな。」
村人が残っていたのかも知れないと思い、近づいていくと逃げられる。
「武辺さん、村人の子供ですかね?」
「おそらく、あれは孤児でござろう。逃散の際にも捨て置かれた者でござろうよ。」
「何をしているか分かりますか?」
「遺体から物を剥ぎ取り、売るのでござろう。」
なるほど状況は理解した、であれば隣村の共同墓地の場所も知っているかもしれない。
「よし、捕まえましょう。」
「孤児を捕まえてどうするのでごさる、人買いにでも売るつもりではあるまいな?」
武辺さんがちょっと怒っている、そんな真似しませんよ。
「隣村の共同墓地の場所を教えて貰おうと思いましてね。」
「なるほど、ならば拙者が捕まえてきましょう。」
と武辺さんは瞬く間に子供を捕まえて戻ってきた。
子供は6才くらいの女の子だろうか、結構激しく暴れている。
「こんにちは、府谷です。お話したいけどいいかな?」
駄目だ、かなり警戒されてる。
こんな時には、とポケットから1個20円のヌガーチョコを取り出した。
そう、もので釣る作戦だ。
彼女の目の前で美味しそうに食べてみせる。
コチラが食べている物に彼女が興味を持ったのを確認してから彼女にもヌガーチョコを手渡した。
武辺さんも欲しそうにしているが無視だ。
「甘ーい。」
女の子が嬉しそうにもぐもぐしている。
武辺さんがよだれを垂らしてきたので、仕方なく彼にもあげた、とても幸せそうだ。
女の子にもっとあげようかと言うと、欲しいと言うのでもう1つあげた。
「おじさんとお話ししてくれたらもっといっぱいあげるよ。」
と言うと、やっと話しが出来る状況まで持っていけた。
それから色々と情報が聞けた、隣村の共同墓地の場所も分かった。
もう一つの収穫は孤児が他にも居て、数が十数人になるということだ。
丁度、矢を回収したかったので買取りを持ち掛けた、それと遺体回収のお手伝いだ。
遺体回収のお手伝いは遺体を袋に詰める作業だ、袋に入れてしまえばクレーン付きトラックにドンドン乗せる事ができる。
「矢は10本でお握り1個か相応の米、遺体は1袋でお握り1個か相応の米でどう。」
お握りがどれくらいのものか分からないと言われたので、早速交換してみる事にした。
女の子の名前は『あゆ』と言うらしい。
既に矢を10本以上持っていたのでセンターに行きお握りと交換する。
「このお握り1つと矢10本を交換しよう。」
交換したお握りはその場で食べていた、お腹が空いていたらしい。
ヌガーチョコ1箱30個入りを情報提供料として渡し、他の孤児達にも声を掛けて欲しいとお願いして別れた。
「栗井場さん、お願いします。」
隣村の共同墓地に来ている。
今から此処に15m×15m、深さ3mの穴を掘って貰う、遺体を埋める穴だ。
「任せとけ。」
ユンボで穴を掘る、掘った土を穴の横に積み上げていく、掘るだけなら2時間ほどだと言っていたので此処はお任せする。
さらに此処へ来るためには川を渡らないといけない、ユンボは川を渡れるがトラックは無理なので橋を架けることにする。
川幅が一番小さくて浅瀬になっている箇所を選んで大きめの石を置いていく、こういう時はクレーン付きのトラックは便利だ。
最後に工事現場でよく使う、トラックが通る用の鉄板を石の上に敷いていき、簡易橋の完成だ。
試しにトラックで橋の上を通って貰った。
共同墓地まで行けることも確認した。
センターの方に戻ってみると孤児達が仕事をしていた、
先ずは身ぐるみ剥ぎに忙しいらしい、まぁ、矢以外にも売れそうなものもあるしね。
そんな中、あゆは配下の子供数人を率いて遺体の袋詰めを行っていた。
以外と頭がいいらしい、チームワークで次々と袋詰めして、トラックに乗せて貰っている。
一体乗せるごとにお握り引き換え券を貰っている。
あゆチームは全員が非力な女の子なので始めからチームプレイに徹してるらしい。
他の男の子も袋詰めを始めているが、個人でやっているので遅々として進んでいないみたいだ。
ちょっと、あゆという子に興味が出てきた。