26.圧勝
Side: 筑紫正門
大内軍の敗報を知り、少弐様への手土産に大将の杉豊後守を捕らえようと計略を用いたが上手く逃げられてしまった。
元々、我ら筑紫は少弐様の家臣、大内の勢いに抗し切れずに味方しただけだ。
大内の報復に備えて兵を集めに行かせた者から、見知らぬ砦があり刃向かって来たとの知らせで兵を出したが、何なのだあいつらは。
見た事も無い鉄の糸が張られた柵は、槍や刀では切れぬらしい。
弓もかなりの兵が詰めておるらしく、矢が雨霰と降り注いでくる。
そして先程の轟音よ、あれは一体?
「殿!このままでは。」
「一度兵を戻せ。どのくらい兵が残っておるか?」
「はっ!半数程かと。」
「なんと!まだ一刻も経っておらぬというのにか、先ずは体制を立て直すぞ!」
「ははっ!」
Side: 府谷恭平
「どうですか?豊令さん、敵の大将の目星は付きました?」
「ええ、おそらく着ているものも違うし、他の兵士がこの人を中心に動いているみたいなので、まず間違いないかと。」
偵察班のドローンで敵の大将を探して貰っていた。
こういう戦いは大将を討ち取ってしまえば直ぐに終わるだろうと予想しての事だ。
これからドローン隊による敵大将爆撃作戦を行う。
6機のドローンに炭火瓶×2、灯油瓶と爆弾セット×4をそれぞれに搭載して貰い、敵大将目がけて投下して貰う作戦だ。
豊令さん以外の人には精密爆撃なんて出来ないと思うので、豊令さんのドローンに付いて行って貰って、豊令さんの合図で一斉に投下する事にした。
上手く行けば儲けものぐらいに考えている。
一応駄目押しとして、もう一つ策を用意している。
それは、爆撃直後にドローンに付けたスピーカーで「敵大将討ち取ったりーッ!」というのを流すというものだ。
要は敵の士気が崩壊すればいいので上手くいくのでは、と思っているがやってみないと分からない。
「それでは豊令さん、始めて下さい。」
「分かりました。」
6機のドローンが飛びたって行く、まぁ目標は400m程先なので直ぐだ。
豊令さんが合図を出す、皆が一斉に投下する、轟音が次々に鳴り響く、成功だ。
センターの皆んなも注目していたのだろう、ワッと歓声が上がった。
遠くから「敵大将討ち取ったりーッ!」と声が聞こえる、後は敵が逃げて行けばと思って見てると。
「静まれーッ!静まらんかーッ!惑わされるな!わしは生きておるぞっ!」
とここ迄声が聞こえて来た。
どうやら討ち漏らしたらしい、全くついてないと思っていたら。
「おや?」
その遠くの声の主がバタッと倒れた、ように見えた。
よく分からなかったので、豊令さんに確認する。
「矢が、喉に矢が刺さったようです。」
「え?誰が撃ったの?てかあそこ迄矢が届くの?」
と疑問に思っていたら舟酒さんから連絡があった。
「下平さんが討ち取ったみたいですね。いやはや凄い人だ。」
猟師優秀すぎるだろう、今日一番の驚きだ。
その後、大将を失って筑紫軍の士気は崩壊し、我れ先にと敵兵は逃げ出した。
「所長、ちょいと追撃して来ます。」
舟酒さんは暴れ足りなかったらしい、そうだよね、何もしてないもんね。
有刺鉄線をニッパーでパチパチしながら武装ゲリラ仕様ハイラックスで出撃して行った。
暴れ足りなかった人が何人かそれに続いて行く。
「結局、色々要塞化したのにそこまで必要ありませんでしたね。」
いつのまにか隣に居た呑家くんにボソッと言われる。
確かに自分でも色々やり過ぎたと思っている、反省しよう。




