22.監視気球
Side: 府谷恭平
武辺さんを探していると、偵察班の豊令さんから連絡が来た。
逃げた騎馬武者の行き先が分かったそうだ。
先に豊令さんと警備室で合流して話を聞く。
「ここから直線距離で5kmほど西にある山の中の館になります。」
武辺さんの証言ともだいたい一致する、筑紫氏の館で間違いなさそうだ。
「豊令さん、その館の見張りを続けて欲しいのですが可能ですか?」
「かなり難しいですね、使っているドローンがだいたい40分くらいしか持たないので、現在も交代で追跡していたところなんですよ。」
「そうですかぁ。」
と困っていたら、何故かその場に居合わせた死村くんからナイスアイデアが提供された。
「空からの定点観測を行いたいなら、気球に監視カメラを付けて打ち上げたらどうですか?高さ500mもあれば、半径5kmの範囲なら監視できると思いますよ。」
「丁度スカイツリーの展望台から監視するイメージか、それはいい。」
元々、死村くんは【天尊小売】という画像解析による無人小売システムの開発に携わった経験があり、画像解析のプロでもある。
それで、警備室で管理している防犯カメラの警報レベルのチューニングに来ていたそうだ。
今までに無い鎧武者のような人影も不審者として警報が上がるみたいな修正のようだ。
「死村くん、その定点観測の映像で敵が出撃してきたらアラートを上げるプログラムを作ることは可能かい?」
「可能ですね、というか既にそういうアプリはあるので、あとはアラートを上げる条件設定だけの問題ですね。」
「具体的には?」
「今回の場合だと、出撃ポイントが決まっているのでそこの設定と、何人以上の集団を出撃と見做すかの設定ですか。あとはセンターの半径何km以内に何人以上の集団が近づいたらアラートを上げるかとかですかね。」
「了解した、それじゃ後で画像解析を頼むと思うから準備の方をよろしくね。」
「了解っす。」
この後、豊令さん達偵察班には定期的にドローンを飛ばしての警戒をお願いした。
気球に関しては、飯論増久くんに手伝って貰うことにする。
飯論くんはセンターのハード系周りのエンジニアだ。将来の夢はロケットを打ち上げる事らしい。
「気球に監視カメラですか?付けるのは簡単ですがバッテリーはどれくらい持たせますか?気球もずっと浮かんでる訳ではないので、それに見合ったバッテリー容量が必要になると思いますよ。」
「だいたいセンターの半径10kmを常時監視できるようにカメラを付けたい、気球は2日間上げるのを2つ用意して、1日の時間差で気球のヘリウムの補充とバッテリーの交換を考えている。」
「それならバッテリーは想定の倍で4日間持つようにしときましょう。」
それから気球を新館の屋上から上げた、ロープ付きでウィンチでいつでも降ろせる感じだ。
映像を受信後、死村くんへお願いし動画に対して監視アプリをセットして貰った。
「これで何か動きがあればアラートが上がります。受信先は警備室とビジネスチャットにしときましたので、ウザかったらスマホの方でOFFにして下さい。」
飯論くんと死村くんに礼を言ってから、偵察班の豊令さんのところに行く。
今後、気球の管理は偵察班に任せる為だ。
先ずは明日、2号機となる気球を上げて貰うことになり、その後は1号機、2号機を1日交代でメンテナンスして貰うことになるだろう。
「これで、ずっと張り付いての警戒は解除して貰って構いません。」
豊令さん達もホッとしたようだ、結構ハードな作業だったらしい。




