20.兵器班
Side: 府谷恭平
この配送センター新館には留置所というべきものがある。
何故なら商品が保管してある倉庫内は低酸素状態にしてあり、基本人が入れずセキュリティロボットが徘徊している。
侵入者とおぼしき人物が酸素不足でダウンしているのを捕らえて、この留置所に放り込むシステムになっているからだ。
先程の捕虜をこの部屋へ放り込む。
命があるといっても結構重症だったので、気を失っている間に最低限の治療をしてだが。
「所長、捕虜が目を覚ましたようです。」
「そうですか、それでは尋問を始めましょう。」
舟酒さんに尋問を始めてもらう、留置所とは回線で通話出来る為、安全に尋問が可能だ。
色々質問するが「此処から出せ。」しか言わないので話にならない。
なので、この留置所の能力を使う事にした。
と言っても真っ暗になるだけなんだけどね。
人は真っ暗な中、何の反応も無い空間に1日放置されるとかなり参るらしい。
次に彼とおしゃべりするのは24時間後だ、正気を保ってたらいいな。
連射弓が鎧にどれくらい通用したか検証を行う。
鎧武者2人分のサンプルが手に入ったので、連射弓作成者の唐西さんと一緒に検証した。
「やっぱり胴丸なんかは刺さっているけど貫通はしてないです。」
「脛当てとか小手の様に丸みを帯びている防具は相性が悪いみたいですね。」
「もっと強力な武器が必要ですね、それこそ銃のような。」
「作れますか?唐西さん。」
「作り方は分かりますが、実際作ったことはありません。技術的な問題もあります。」
「それでは正式に兵器班を立ち上げましょう、目的は銃の作成です。メンバーについては唐西さんにお任せしますので、お願いできますか?」
「分かりました、銃を作るのは一つの夢でした。是非やらして下さい。」
「必要な物をリストアップして下さい。何かネックになりそうな物がありますか?」
「一番のネックは火薬でしょうか。」
「火薬ですか、それは確かに厄介ですね。センターにある物で代用出来たりしませんか?」
「確か硫化アンモニウムを使った肥料があったはずです。最初の内はこれで凌ごうかと思います。しかし、本当に欲しいのは無煙火薬です。こちらは硫酸と硝酸が要ります。量も半端なく使うことになると思うのでセンターにある分だけでは恐らく足りなくなるでしょう。」
「そうですか、そちらは何とかしてみましょう。但し、時間を少々頂くことになりますが。」
「え、出来るんですか?」
「分かりません、でも当てはあります。」
「そうですか、よろしくお願いします。」
唐西さんと別れた後、スマホを見ると舟酒さんからメッセージが入っていた、襲撃者の遺体についてのことだった。
門の所まで行くと舟酒さんが居たので声をかける。
「すいません、舟酒さん、気付くのが遅くなって。」
「いえ、それでどうしましょう?仏さんを。」
「埋葬してやりたいのは山々ですが、センター付近は遠慮したいですね。」
「隣の村の共同墓地とかあればそこにとも考えますが、ちょっと無理っぽいですな。」
「仕方ないので川に流しましょう。」
「ま、そうしますか。それはそれとして、馬2頭が置き去りになってたので保護してますがどうしましょう?」
「何か使い道ありますか?」
「さぁ、でも置いとくなら誰かが世話しないと不味くないですか?」
「とりあえず、今日のところは保留で、有刺鉄線の柵の内側にでも放飼いにしておきますか。」
「了解です、所長。」
ま、最悪、武辺さんあたりに引き取って貰えば済むだろう。