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18.卵

Side: 府谷恭平

「なんこい、がばいうまか!」

武辺さんはビックリすると方言が出るみたいだ。


今彼が美味そうに食べているのは親子丼だ。

元々今日の献立に親子丼があったのも理由の一つだが、切実な理由がもう一つある。

卵が欲しい。

卵が欲しいのに、卵を使った料理を出してどうすんだというツッコミは置いとくとしてだ。


今ある卵は約2週間ほどで賞味期限を迎える、となるとどうなるか。

そう、卵の無い世界がやって来る。

卵が無い世界は恐ろしい。


卵掛けご飯から始まって、卵焼き、目玉焼き、ゆで卵、煮卵、オムレツ、だし巻き卵が食べられなくなる。

作れなくなる料理も多い、親子丼、カツ丼、すき焼き、茶碗蒸し、焼飯、ゴーヤチャンプル、たまごサンド、カルボナーラじゃ利かない。

スイーツ類も全滅だ、プリン、ケーキ、アイスクリームなどなど。

その他、マヨネーズが無いのは致命的だ、タルタルソースも作れやしない。


ということで親子丼を切っ掛けに、この世界の卵情報を収集しようという目論見なのだ。

「武辺さん、お気に召した様で何よりです。じゃんじゃん食べて下さい。」

「このトロトロの卵がとても美味しい、おかわり!」

お、今卵って言った?卵って。

良かった、普通に卵を知っているようだ、ならば話が早い、武辺さんがおかわりを待っている間に質問する。


「この卵が欲しいのですが、何処に行けば調達できますか?」

「これは鳥の卵であろう、なら鳥栖村あたりに行けば良い。確かあの辺りは鳥を飼っている者達が多いのできっと手に入るであろうよ。」

情報ゲット!小さくガッツポーズをする。


「鳥栖村とはどの辺にありますか?」

「此処から南に少し行った所であろう。一里も離れとらんとは思うが。」

武辺さんはおかわりが来たので、また親子丼を掻き込み始めた。

とそこで舟酒さんが突っ込んで来る。


「所長、卵よりも先に聞く話があるんじゃないですかい?彼等血塗れで来たんですぜ、厄介事ならそれ相応の準備が必要になるんじゃないですかね。」

む、言われてみれば、武辺さんも怪我人さんも結構血だらけだった、確かに気になる。


「武辺さん、その格好の理由をお聞きしてもよろしいですか?」

彼は親子丼を全て口の中に掻き込むと、もぐもぐしながら話し始めた。

なんでも戦の帰り(敗走したのだろう)に味方だと思った筑紫氏の居城に寄った際、寝返った筑紫氏の攻撃を受けて散り散りになったらしい。

一緒に来た怪我人さんはその司令官で太宰府まで送り届けないといけないらしい。


「あの怪我をしている人は結局誰なんですか?」

「筑前守護代の杉豊後守様であられるな。」

知らない、皆んなも頭にハテナマークを出している、そんな中、1人の勇者が立ち上がった。


「大内家重臣の杉興運じゃないですか?」

彼は、縛尾太郎くん、ネット小説にも投稿している歴史マニアだ。

確か今は、"佐賀の飢えた熊"というのを投稿しているとか言ってたなぁ。


「大内家重臣というのは確かにそうだが、諱までは知りもうさん。」

「突然すみませんでした、縛尾と申します。今の年号と何年かを教えて頂けませんか?」

「今年は享禄3年だが。」

「やっぱり、田手畷の戦いですよ。龍造寺に敗れたんですね。」

縛尾くんは『謎は全て解けた。』みたいなドヤ顔をしているが、武辺さんは苦虫を噛み潰したような顔をしている、自重しろ縛尾くん。


「いやはや、ここまであの戦の結果が伝わっておりましたか。それでどうしますか?我等を捕らえますか?」

武辺さんが神妙な顔付きでこちらを見据える。


「いえ、あなた方は当センターの賓客です。そのような真似は致しません。」

先ずは大事な情報源だ、友好関係を築きたい、身柄は責任を持って保護しよう。

と考えているところに舟酒さんから伝言が入る。


「所長、警備室からですが、門の所にまたお客さんが来たそうです。今度は数騎の騎馬武者だそうですぜ。」

もうやだ。

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